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心が救われると話題のマンガ「違国日記」の名言5選

集英社オンライン / 2022年6月25日 17時1分

「心が救われる話題書」として人気を集める『違国日記』(ヤマシタトモコ)。その魅力を名言と共に紹介する。

「このマンガがすごい!2020 オンナ編」での受賞など、「心が救われる話題書」として人気を集める『フィール・ヤング』にて連載中のマンガ『違国日記』(ヤマシタトモコ)。

主人公は、少女小説家を職業とする35歳の女性・槙生(まきお)。生きることに不器用で、人とのコミュニケーションも苦手な性格だ。そんな彼女の姉夫婦が亡くなり、遺児となった15歳の姪・朝(あさ)を引き取ることになるところから物語はスタートする。

周囲に流されることなく自分の生活を送っている槙生との共同生活で、新しい視点を受け取ることになった朝。そんな朝が、親を亡くした孤独と向き合いながら高校生活を通して、大人になっていく過程で少しずつ自分という存在を見つめ直していくといった内容だ。



本作の魅力は、キャラクターの繊細な心理描写で誰もが抱える仕事や恋愛、「自分とは何者なのか」という人生への漠然とした不安を浮き彫りにしてくれること。加えて、心の中を見透かしたような名言は、人生を前向きに生きるためのコツを教えてくれることにある。

新生活がようやく落ちつき始めたものの、新しい環境に馴染めていないことへの不安を抱いていたり、思うように自分が描く将来への階段を登ることができていない人に、ぜひ読んでほしい作品だ。

大人にこそ刺さる名言①「あなたの感じ方はあなただけのもので誰にも責める権利はない」

1巻60ページより ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

朝の母であり、槙生の姉である実里(みのり)の死。あまりにも突然のことで実感がわかない朝は、実の母の死に対して悲しいかがわからないことが、普通ではないのかもしれないと感じていた。

そんな朝に槙生は「あなたの感じ方はあなただけのもので誰にも責める権利はない」と言葉をかける。

組織やチームの中で過ごしていると、「こうであるべき」「これが普通」という無意識の圧力に感化されてしまうことに、辛くなってしまう経験はないだろうか。

もちろん相手に合わせる、ということは、生きていくには必要なスキルなのも事実。

しかし、自分の感情を守ることを優先して生きることも決して悪ではないと、このセリフは教えてくれる。

人それぞれ物事への感じ方や考え方は当たり前に異なる。そして、そこには間違いも正解もない。だからこそ、せめて自分だけは自分の心の味方でいてあげることも、ときには重要なのかもしれない。

大人にこそ刺さる名言②「群は危険と安全を同時にはらむ 私同様 あなたも群に向かないかもしれない」

4巻 20ページより ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

朝との同居生活が始まったことに対する槙生のモノローグ。この後のモノローグでは「あなたはどんな群にいてもさみしいかもしれない」と言葉が続く。

集団の中にいるからこそ、ふとした瞬間に孤独を感じることもあるだろうし、そもそも確定的なゴールが「群」に用意されているわけではない。

また「この企業に入ったから絶対に安定的な生活が送れる」「この人と結婚したから絶対に幸せにしてもらえる」という他力本願な幸せの掴み方へのリスク喚起とも読み取れた。

自分に適した企業や学校に入ることが人生の目的として達成されたとしても、必ず幸せになれるとは限らないことを私たちは時々忘れてしまう。

描いていた理想の新生活やキャンパスライフとのギャップに悩む人にこそ、自分が群に対して何を求めているのかを槙生のセリフとともに振り返ってみてほしい。

大人にこそ刺さる名言③「そんなチキンレースで自分の価値を試す必要なんてなかったのに」

7巻64ページより ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

槙生の元彼氏である笠町(かさまち)は真面目でハイスペックな好青年だ。しかし、うつ病に悩まされていた過去がある。

そんな笠町は、周囲の期待に答えるべく必死に会社にしがみついていたころを自分がプレッシャーの中で“チキンレース”に参加していたと振り返る。

そんな“チキンレース”の例として、「より楽をして良い目を見たやつが勝ち」「より危ないことをしたやつが勝ち」という男社会の洗礼の例が作中に挙げられているのが、この例に限らず誰が決めたのかすらわからない漠然とした人生の指針にプレッシャーを感じたことのある人は多いだろう。

自分の価値を認識するために、他者と比較して傷つきながらも自分を肯定する。誰かを下に見ることで得られる安心感は、果たして本当の意味で自分を充足させてくれる感情なのか。

“チキンレース”に乗らなくても、自分の価値をきちんと見定めて「自分には価値があるのだ」と信じる力を持つことこそ、人生を少しだけ生きやすくする秘訣なのかもしれない。

大人にこそ刺さる名言④「『キャラだから』って言ってるうちに自分が本当はどうしたいのかわかんなくなっちゃったもん」

7巻98ページより ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

高校生の朝は、やりたいこと、自分に向いていることがまだわからない。

学校生活の中での、すなわち小さいスケールの中での、やりたいことの片鱗は見えているものの「私のキャラではない」と尻込みする朝に、槙生の友人・もつが自分の後悔を語る場面。

自分よりも適任な人が目の前に現れたり、自分の性格や求められているキャラクターに似合っているかどうかで自分の気持ちに蓋をしてしまう。そんな大人にこそ、このセリフは刺さるのではないか。

大人になればなるほど、無意識に他人の前で見られたい自分を演じてしまう。物わかりのいい自分や、他人を優先する自分。

人生を通してやりたいことは分からなくても、その瞬間「やってみたいと思うこと」くらいならあるという人は多いだろう。

キャラという言葉で自分自身を縛り、本当にやりたいことに対して見て見ぬフリをするのは、他ならぬ未来の自分を傷つける。

日々のタスクに忙殺されるときだからこそ、他人視点ではなく、自分の心に芽生えた小さなわがままを大切にしてあげることの重要さが沁みるセリフだ。

大人にこそ刺さる名言⑤「本当にやりたいと思ったならどんなにつまんないことでもやんなさい」

9巻167ページ ©ヤマシタトモコ/祥伝社フィールコミックス

自分のアイデンティティを探し求める朝に、槙生が放つ一言は、私たちも「誰かにこんな風に声をかけてほしい」と願いながら生きてきたのかもしれないと思わせてくれるセリフだ。

どんなに強く願っていても、夢が叶うとは限らない。

それでもこのセリフを読むと「無謀な夢でもバカにせず背中を押してくれる大人がいたら……」と思わず過去を振り返ってしまう。

大丈夫、まだ遅くない。夢を追いかけるのに期限はないし、やりたいことの規模も関係ない。前へ進むエネルギーに満ちた言葉は、槙生から私たちへのギフトのようにも感じた。

この先、新しく何かを始めるときに渦巻く不安を断ち切るお守りとして、胸に刻んでおきたいセリフだ。

自分を信じる強さがときには必要

人より優れた何かを持つことで社会の中で生きやすくなるだろうし、明確に数字として打ち出される実績によって自己肯定感が上がることもあるだろう。

しかし本来、世の中に同じ人は決していない。「みんな違ってみんないい」という感覚を持つことの大切さを『違国日記』は説いている。

気がついていないだけで、誰しも必ずその人だけが持つ良いところがある。

一つのコミュニティでうまくいかなかったとしても、それはたまたまその人が本当に真価を発揮できる場所ではなかったというだけであって、自分を責める必要は全くないのである。

日々の中には上手くいかないことや、絶望してしまうような出来事もあるだろう。

しかし、少し物事の見方を変えれば自分の心の声に素直に生きることができる世界が存在すること、そしてそれを認めてくれる人が世の中には必ずいることへの希望を持つことができる。

『違国日記』は現代の全ての生きづらさを感じる人へ、強いメッセージ性を持って明日を照らすヒントをくれる作品だ。

作品情報
違国日記
ヤマシタトモコ
「フィール・ヤング」(https://feelyoung.jp/)にて連載中
https://www.shodensha.co.jp/ikokunikki/

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