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あのベストセラー作家も実践! 忙しい人にオススメ『弾丸メシ』3つの掟

集英社オンライン / 2022年6月29日 18時1分

出版業界一忙しいといわれる作家・堂場瞬一氏は、どんなに時間がなくてもメシはちゃんと食べることが信条! 時間がないゆえに、⓵必ず日帰り ②食事は1時間以内に済ませる ③絶対に残さない、という3つの掟を自分に課している。弾丸旅と地元メシの面白さが詰まった食&旅エッセイ『弾丸メシ』(堂場瞬一)の魅力を紹介する。

「美味しい」の最大の調味料は?

私は自分の味覚にまったく自信がない。酒好きのフリーライターとして飲食店を取材することもあるのだが、どこで何を食べても飲んで美味しくて、「うまいなぁ!」と思い、「この美味しさをどう表現すればいいのだろうか……」と最後にいつも悩む。そもそも味に対する語彙に乏しいから、何を食べても「美味しい!」「うまい!」とばかり言ったり書いたりしてしまう。



そんな私だが、食べ物や飲み物の味わい自体ではなく、それを味わう場所やシチュエーションには多少のこだわりがある。

たとえば、これは私の実体験なのだが、20代の頃に富士山に登ってみようと思い立ち、普段ほとんど運動しないくせに無謀にも挑戦した夏があった。途中、へとへとになってたどり着いた山小屋の売店でカップラーメンが売られていたので、お湯を注いでもらって食べたのだが、それが鳥肌が立つほどに美味しかった。いつも家で食べているのとまったく同じ製品なのに、十倍、いや百倍ぐらいに美味しく感じた。

山小屋で食べたカップヌードル

もちろん、そこまで山を登ってきて体が疲れていたことやとても空腹だったことが原因なのだろうけど、自分の体や心のありようで味というのはこんなにも変わるのかと衝撃を受けた。

その経験以来、私は食べ物の美味しさは絶対的なものではなく、状況によって変化する相対的なものだと考えるようになった。

堂場瞬一さんの『弾丸メシ』に出てくる食べ物はどれも美味しそうだ。いや、それは言い過ぎで、フィンランドの郷土料理で、黒パンに小魚がぎっしり詰まった「カラクッコ」などは、ちょっと私には腰が引けてしまったりもするのだが、とにかく、単純な味の評価うんぬんと関係なく、堂場さんが食べること自体をすごく楽しんでいるように見えて、だからこそ美味しそうに感じる。

3つのルールで企画が成立

ある日、人気作家として忙しくお仕事をされている堂場さんが編集者に半ば強引に仕事を依頼される。断ろうとしたところ「料理なら得意ジャンルでしょう?」「いくら忙しくても、一日ぐらいなら何とかなるでしょ」とグイグイ押され、妥協案として「必ず日帰り」「食事は一時間以内に済ませる」「絶対に残さないこと」をルールとした企画が生まれる。

そうして書かれたコラムを集めたものが本書『弾丸メシ』である。

と、こう書けば、堂場さんは嫌々この仕事を引き受けたように思われるかもしれないが、読み進めてみると、堂場さんのノリノリ具合にいい意味で裏切られることになる。

福島県福島市のご当地グルメである「円盤餃子」を食べに行く第1回からしてそうで、円形にずらりと並べられた焼き餃子を一皿30個×2の60個も(同行の編集者も一緒とはいえ)たいらげ、その合間に口直しにと水餃子も食べている。

福島名物の円盤餃子

残さず食べて満腹になり、もうそれで取材としては十分なはずなのに、帰り道には、円盤餃子と同じく福島市の名物だという「プリンパン(パンの真ん中にプリンが入ったものらしい)」を、これも名物の「酪王カフェオレ」で流し込んでいる。さらに帰宅後、おにぎりまで食べる(餃子は米と一緒に食べたい派である堂場さんは、円盤餃子を食べた店のメニューに白飯がないことに物足りなさを感じていたのだ)。なんとも勢いのある食べっぷりである。

“だし汁やタレを一切使わず、日本酒だけで炒りつけるように作るという”東広島の「美酒鍋」。

“焼きそばにトマトソースをかけたものである”という新潟のご当地料理「イタリアン」。

“鯛を炊き込んだもの”と“鯛の刺身にだし汁を絡ませ、白米にぶっかけて食べる”ものとの2種類があるという愛媛の「鯛めし」。

“何とも癖になる味で、地元で人気になるのも納得”だという京都・カフェコレクションの「いわしコンビーフライス」(この「京都 学生メシ編」は文庫版のみの書き下ろし)……今すぐ食べてみたくなって困るようなこれらの料理を、堂場さんはなんとも素晴らしい勢いで味わう。

一緒に食卓に混ぜてもらっているような読後感

もちろん、取材の中では先述の「カラクッコ」のように「うーん」と思うような味にも出会うのだが、読む側にとってはその経験すらも楽しそうに映る。堂場さんは、編集者や家族と食事をしながら語り合い、時に愚痴を言ったりしながらも、食べるという行為の幸せを噛みしめているように感じられるのだ。

そしてそれぞれの味が、過去の記憶や様々な知識とつながりながら語られるから、読んでいると一緒に食卓に混ぜてもらって横で話を聞いているような気分になる。きっと堂場さんは、どんな料理でも、単なる味覚うんぬんを超えた部分で楽しめる方なのだろうと思う。

堂場さんが味の描写にどれだけ注意を払っているかは巻末に収録された平松洋子さんとの対談でも語られているが、味覚に自信のない私にでも、食の楽しみを感じさせてくれる、懐が深い一冊だった。

ちなみに、平松洋子さんが対談で語っておられる福岡の「今屋」のホットドッグ、私も大好きなので『弾丸メシ』の続編がスタートした際にはぜひ堂場さんに味わっていただきたい!

「今屋」のホットドッグ

文/スズキナオ

『弾丸メシ』(集英社文庫)

堂場 瞬一

2022年6月17日発売

638円(税込)

文庫判/240ページ

ISBN:

978-4-08-744400-1

出版業界一忙しいと言われる著者は、どんなに時間がなくてもメシは食べるが信条! 弾丸旅と地元メシの面白さが詰まった食&旅エッセイ。
弾丸メシ3つの掟 必ず日帰り/食事は1時間以内に済ませる/絶対に残さない

執筆や取材で多忙を極める著者。だが、どんなに時間がなくてもメシは食べるを信条としている。そこで、必ず日帰り、食事は一時間以内に済ませる、絶対に残さないの三つの掟のもと、弾丸旅で美味いものを食べに行く挑戦を。日本や海外の取材先で出合った発見系謎料理から、身近な餃子まで、グルメとはひと味違う美味いを追求する。食の記憶を呼び覚まし食べる幸せを堪能する、こだわりの食&旅エッセイ集。

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