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「連続30時間プレイ」「同一ソフト800本保有」達人に聞くRTAの魅力

集英社オンライン / 2022年7月3日 12時1分

ただクリアをめざすだけでなく、100分の1秒の世界でクリアタイムを競い合うRTA(リアルタイムアタック)というゲームの世界がある。eスポーツが注目される中、着実に人気を高めているRTAの魅力とは? 「SDヒーロー総決戦 倒せ!悪の軍団」や「メタルマックス」シリーズなどのRTAプレイヤー・げきから氏にRTAに込める思いを聞いた。

RTAプレイヤーにしてゲームコレクター

ゲームスタートからクリアまでの実時間を競い合うRTA(リアルタイムアタック)。過去のイベントでは最高同時接続者数18万人を記録するほどに注目を集めている。



げきからさんもその魅力に魅入られたRTAプレイヤーの一人。『SDヒーロー総決戦 倒せ!悪の軍団』のRTAの一つで国内トップクラスの記録を持ち、RTAへの熱意と作品への愛情から、同じソフトを800本以上も集めてしまったそうだ。注目を集める裏で、RTAプレイヤーはどのような努力を重ねているのだろうか。

レベル上げ嫌いが転じてRTAプレイヤーへ

――RTAをはじめたきっかけは?

RTAに取り組み始めたのは就職後、26歳くらいのことです。とあるゲームのプレイ動画を見かけ、自分もゲームの配信をやってみたいと思ったことがきっかけでした。

RTA歴は10年だという、げきから氏。きっかけになった動画は30時間不眠で『ファイナルファンタジー5』をクリアするという内容だったとのこと

昔から、とにかくサクサクとゲームを進めるのが好きだったんです。RPG(ロールプレイングゲーム)は敵をたくさん倒すことで自分のキャラも育っていくのですが、その作業に時間をかけたくなかったので、本来推奨されているレベルよりもずっと低い状態でゲームを進めることが何度もありました。

「レベルを上げない」「アイテムを取らない」「操作キャラクターを固定する」など、あえて行動を”制限する”遊び方がゲームにはあるのですが、取れる行動が限られてくるので突破が難しい局面も訪れるわけです。

その難所を試行錯誤を繰り返してなんとか攻略するのが、作品を違う側面から味わえるようで楽しいんですね。そういう自分に厳しい遊び方をしている延長として、RTAがありました。

――とくにSDヒーロー総決戦を選んだ理由は?

このゲームが好きだったというのが一番です。子どもの頃に友達とよく遊んでいて、非常に愛着があるゲームなんです。この作品はアニメや特撮の登場キャラクターを操作できるのですが、憧れのキャラクター達を実際に動かせるというのは、当時にしては斬新でした。

プレイ動画の配信を思い立った頃はRTA動画が豊富にアップロードされていて、自分もRTAに取り組んで動画にしようと思いました。そこで、せっかくなら一番好きなゲームでやろうと考えたんです。自分が配信することで、この作品の知名度がもっと上がって欲しいという思いもありました。なかなかマイナーな作品ですからね。

『SDヒーロー総決戦 倒せ!悪の軍団』は1990年7月発売のファミコン向け横スクロールアクションゲーム。機動戦士ガンダムシリーズや仮面ライダーシリーズのキャラクターを操作し、敵に攫われた仲間を助けに行くという内容

研究をきっかけに、同じソフトを800本収集

――SDヒーロー総決戦だけでも800本以上のソフトを持っているとのことですが……

最初はRTAの研究用として集め始めたんです。ファミコン用のソフトなどには初期ロム、後期ロムといった違いがあります。今でこそ、ゲームは発売後にもネットワークを通じてバグを修正したり、機能を追加したり、アップデートが可能ですよね?

しかし、売り切りが一般的だった昔は、致命的なバグを見つけても対応が難しかった。仕方なく、後から発売する分だけを修正することが多かったんです。

――発売後、しばらく経ってから製造された分は不具合が直っているということですか?

そうです。それが初期ロムと後期ロムの違いです。RTA業界では初期ロムと後期ロムの違いで差が生まれることも珍しくないんですね。修正される前の、初期ロムにしかないバグを使ったほうが速い。あるいは、バグが修正された後期ロムのほうが進行で有利という風に。ちなみに、バグを直した影響で、後期ロムにだけ違うバグが発生するというケースもあります。

――なるほど。それなら、初期ロムと後期ロムを1本ずつ用意するだけでも十分な気がしますが……

そうかもしれません。ですが、ソフトによってプレイしたときの感触が違って思えるんです。数値やデータのうえでは厳密には存在しない差なのかもしれませんが、自分がRTAをしやすいソフト、しづらいソフトというのが確かにあって。それを突き詰めているうちに、いつの間にか800本に増えていました。後半はほとんどコレクターとしての血が騒いだだけなんですけど。

―――ここまで集めるのは大変だったのではないでしょうか?

集め始めてから、だいたい6年くらい経ちますね。そこまで単価は高くないゲームなのですが、自分がたくさん注文するせいで、一時期中古相場を押し上げてしまったこともあります。

800本の「SDヒーロー総決戦 倒せ!悪の軍団」でつくられたタワー。建造には3人がかりで1時間かかった

10分の壁より分厚い1秒の壁

――げきからさんの記録は”15分22秒13”とのことですが、普通にプレイしたら何時間かかるのでしょうか?

だいたい3時間程度ですかね。アクションゲームに慣れている人であれば2時間でクリアできると思います。最速でクリアするには運の要素も相当絡んでくる作品で、自己ベストである”15分22秒13”は5年間、自分でも塗り替えることができていません。

作中で最も性能の高いキャラクターを使っている方の記録は”14分44秒”なのですが、自分はそのキャラクターを使用しないルールでの15分切りを目指しています。

この作品のRTAを走り始めた頃は、練習すればするほどタイムを縮めることができました。1時間30分を20分に、20分を18分にするまでの試行回数はそれぞれ数回程度だったと思います。

ただ、そこからが本当に大変で。18分台から15分台に到達するまでに1年以上かかりました。15分切りにはもう何年も挑戦しています。ある程度突き詰めると、1分1秒の壁が非常に厚くなる。それがRTAの面白さでもありますね。

攻略サイトを傍らに日々練習を重ねるげきから氏

――ほかに苦労されたことはありますか?

30時間かかるRTAを3日間連続で取り組んだことがあるんです。ようやく記録が出たと喜んだのもつかの間、その直後にタイムを大幅短縮できる方法が見つかってしまって、すべてがパーになった経験があります。

また、長時間のRTAでは肉体への負担も無視できません。8時間以上のRTAを走るなら椅子や机などにも気を遣う必要があると思います。かれこれ10年くらいRTAを行っているのですが、歳を重ねるにつれて体力の衰えを感じますね。

―――プレイ以外での取り組みも重要なんですね

例えば8時間以上かかるRTAであれば、食べ物や飲み物の準備はもちろん、プレイの数時間前から口にする水分量を調節し、RTA中にトイレに行かなくていいようにするといった調整を行っています。トイレに行きたくなったら、そこで記録を諦めるしかありませんから。

日常にない達成感こそRTAの魅力

―――RTAの魅力とはなんでしょうか?

普通に生活しているだけではなかなか体験することのない達成感を味わえることです。目標タイムを上回ったときの喜びは格別ですよ。ほかにも、記録の更新につながるような新要素を自分で発見できたときは脳汁が出ます。

また、自分の配信を通じて作品に興味を持ってくれた方がいると、自分の好きな作品に貢献できているようで、本当にうれしく思います。『メタルマックス』シリーズはRTA動画を通じて開発者の方とお会いできる機会にも恵まれて、とても光栄でした。

――最後に、今の目標について教えてください。

やはりSDヒーロー総決戦の15分切りですね。あとは、いろいろなRTAイベントへ参加していくつもりです。自分がRTAを行っていることは家族も知っていて、応援してくれているんです。彼らに応えるためにも頑張っていこうと思います。

RTAは自分にとって、楽しみながら己を高める場であり、家族に元気でやっていることを伝える場なんです。

取材・文・撮影/笠木渉太

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