子どもとの日々の会話も、お互いに声をかけるわけですから、広義の声かけだと言えます。「9歳までに子どもとの信頼関係を築くことが大切」だとお話ししましたが、毎日できるだけたくさんの会話を積み重ねることによって、親子の信頼関係を築くことができます。
日常会話は、子どもが話しかけてくるのを待つのではなく、お母さんから子どもに積極的に働きかけましょう。子どもは経験値が少なく、話すための言葉も少ないため、うまく話しかけることは難しいです。子どもからの話を待っていると、親子の会話が減ってしまいます。だから、お母さんからどんどん話しかけて、子どもの耳にたくさんの言葉を入れるのです。そのことによって、子どもの語彙力がぐんと増えます。子どもは話せば話すほど、脳が発達します。
■話す内容や言葉はよく選ぶ
話す内容は同じようなものばかりではなく、子どもの視野を広げるためにも、いろいろな内容の話を振ってあげることが大切です。テレビ番組を観たり、新聞、雑誌、書籍などを読んだりして感じたことを、子どもに伝えるといいですね。
自分がどう思ったかを伝えると、子どもは「お母さんは、こんなときにこう思うんだ」と、お母さんの考え方がわかります。
また、子どもに話しかけるときに、話した内容についての感想を聞くのもいいでしょう。このとき、「はい」「いいえ」で答えられるような質問ではなく、「どう思った?」「何が一番楽しかった?」など、子どもが自分の頭で考えて、自分の言葉で答えられる質問にしましょう。このような会話が思考力、表現力の基礎を鍛えることになるのです。
一方で、悪口や愚痴は子どもに聞かせないようにしましょう。子どもは大人になってもお母さんから聞いた言葉をいつまでも、覚えているものです。それに、子どもは無意識のうちに、お母さんが使う言葉や話し方などを真似します。私が高校の教員をしていたときに、生徒とその子のお母さんの口癖がまったく同じだったことに驚いたことがあります。
だから、子どもに声をかけるときには、正しい日本語を常に意識して、子どもにかける言葉をよく考えてほしいですね。
東大理Ⅲに三男一女を合格させた佐藤ママが教える「声かけ」の4原則
集英社オンライン / 2022年7月1日 10時1分
何気ないお母さんの声かけは、毎日の生活の中で何百回、何千回と繰り返されるので子どもにとっては絶大な影響を与える。東大理Ⅲに三男一女を合格させた佐藤ママが子育てで一番大切にしてきたことを伝える『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)から「声かけ」の原則について一部抜粋・再構成してお届けする。
「声かけ」原則① お母さんから積極的に働きかける
「声かけ」原則② 叱らず、褒める
子育ては大きく分けると、「褒めて育てる」方法と「叱って育てる」方法がありますが、私は前者で子どもを育てる方法を選びました。
読者のみなさんは、褒められるのと叱られるのとでは、どちらがうれしいですか?もちろん、褒められるほうですよね。子どもも同じです。子どもは経験値がまだ少なくて、失敗することが多いです。その失敗のたびに怒られていると、行動を起こすのが怖くなって萎縮してしまいます。
ですから、子どものいいところを探して、たくさん褒めてあげましょう。褒めて育てると、子どもは明るく、のびのびと育ちますよ。
■叱るときにも、言い方に気をつける
失敗を注意するときも、いきなりきつい口調で「ダメでしょ!」と注意するのではなく、「よく頑張ったね。でもね……」といった感じで、まず優しく褒めてから注意 しましょう。「誰でも失敗はあるから、次は気をつけてね」と声かけするのもいいと思います。私は子どもたちが何をしても、危険なことでなければ、「いいよ、いいよ」みたいな感じで、何でもやりたいようにやらせて温かく見守ることにしていました。
もちろん、危険なこと、絶対にやってはいけないことなどをしたときには、叱りますが、きつい口調ではなく、やってはいけない理由を子どもが理解できるように話していました。
いま、26年間の子育てを振り返ったとき、「褒めて育てる」方法を選んでよかったと思っています。子どもたちはいろいろなことに笑顔でチャレンジしていて、まさに「褒めて伸ばす」感じでしたね。
褒められると、自己肯定感が高くなります。9歳ぐらいまでは「叱る」ことより「褒める」ことに重点を置いて、子どもの笑顔を見ながら、子どものやる気を引き出してあげましょう。
「声かけ」原則③ 強い立場から高圧的に話さない
他人には絶対に言わないような命令口調の強い言い方を、わが子に対しては平気でしてしまう親もいます。自分の子どもだからといって、何を言っても許される、ということは絶対にありません。子どもが生まれたときからずっと面倒をみているからといって命令口調で高圧的に話すと、子どもは自分の意見を言えなくなってしまい、いつも親の顔色をうかがい、忖度するようになります。
これでは、子どもの自由な発想を制限してしまいます。子どもは体が小さいだけで、大人と同じように感情を持っていることを忘れずに、1人の人間として向き合って話すことが大切です。
■親がいつも正しいとは限らない
親子で意見が食い違うこともあります。一般論としては、知識や経験をより積んでいる親が正しいことのほうが多いでしょう。でも、常にそうとは限りません。親が間違っている、あるいは、子どもの言うことにも一理あることは、よくあります。
そんなとき、「親の言うことを聞きなさい」と強い立場から話すと、子どもは反論できません。「違う」と思っても力で屈服させられることになります。こういう「悪い声かけ」をしていると自分の意見を言える子どもに育つことが難しくなるでしょう。
大人が、常に自分が正しいと思って話すのは謙虚さが足りないということです。常に間違えていないか謙虚に検証し、穏やかに声かけをしましょう。
「声かけ」原則④ 他人と比較しない
よその子どもやきょうだいと比較してしまったとき、子どもの心を傷つけるNGワードが出やすいので気をつけてください。何かができるようになる時期は子どもによって違います。でも、つい比較してしまい、「○○ちゃんはすぐにできたのに、うちの子はまだできない」などと悩むお母さんは少なくないようです。私は「そのうちできるようになる」と思い、あまり気にしませんでした。
私が子育てをしていた頃、「トイレトレーニングは早く。1歳頃にはおむつを外しましょう」と言われていました。でも、小学校に入学するときにおむつをしている子どもはいませんから、「いつかおむつはとれるだろう」と思い、あまり気にしませんでした。長男が3歳になったときに紙おむつをはかせようとしたら、「暑いから嫌だぁ」と言って紙おむつを投げて、パンツを自らはきました。このように、トイレトレーニングをしなくても、本人がおむつは嫌だと思ったら、自分からパンツをはきたがるのですね。
その様子を見ていた年子の次男も、兄の真似をして同時にパンツをはくようになり ました。三男、長女も兄たちのことを見ていたからか、自然におむつがとれましたね。
ところが、最近のお母さんは、「おむつがとれるのが遅い」と悩む人が多いですよね。悩む理由の1つとして、早めにとれた子のお母さんから「まだとれないの?」と言われることもあるようです。子どもの成長はそれぞれですから、ほかのお母さんの言葉は気にしないことです。「まだとれないの?」と言われたとしても、気にせず、「まだしているけれど、そのうちとれるから気にしていないよ」と言って笑いとばしましょう。
子どもに「○○ちゃんはおむつがとれたのに、あなたはどうしてまだとれないの!」とは、決して言ってはいけません。子どもの心を傷つけるだけです。いつかは必ずとれますから、焦らずに待ちましょう。
習い事は「楽しく」が最優先では?
習い事も比較しがちです。スポーツや楽器などは上達のスピードがわかりやすいし、級などがある習い事も上達度がすぐにわかるからです。
自分の子どもが、一緒に入った友だちよりも進度が遅いと焦るかもしれませんが、すぐに上達する子どももいれば、続けているうちに徐々に伸びる子ども、ある程度続けているとぐんと伸びる大器晩成型の子どももいます。だから、すぐに結果を求めないことが大切です。
子どもを比較してしまうと、進度が遅れているときには親も子どもも両方がつらい気持ちになってしまいます。そんなときに、「○○ちゃんは次に進んだのに、まだ進めないの?」というような言葉は、絶対にN G です。子どもが遅れていることを気にしている場合には、子どもの心にさらなるダメージを与えてしまいます。習い事でそんなに親子で悩まないでほしいと思います。
子どもが楽しく習い事をできていれば、それでいいのではないでしょうか。小学校に入ったら、テストや通知表で評価がつきますから、親も周りの同級生と比較してしまいがちですが、他人と比べるのはやめてほしいですね。
比べるとつい、「○○ちゃんは100点だったのに、たくない言葉を口にしてしまいます。30点しかとれなかったの?」と、子どもが聞き比較したときに出てくる言葉は、やはり子どもを傷つけることが多いのです。前述しましたが、やはり「褒めて伸ばす」子育てをしましょう。たとえ100点満点のテストで30点だったとしてもそのとれた30点の内容をまずほめましょう。
自分の子どもだけを見て、子どもの気持ちに寄り添い、決して比較しないことが子 どもを明るくおおらかに育てます。
#2 「今日は何時間勉強したの?」はNG! 子どものやる気を引き出す声かけは?
#3 テスト、受験、発表会、試合など本番前の子どもへの声かけの正解は?(7月2日10時公開予定)
『子育ては声かけが9割』(東洋経済新報社)
佐藤亮子
2022年2月25日
1540円(税込)
単行本 296ページ
978-4-492-22401-4
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