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役を射止めた鍵は亡き母への愛。『エルヴィス』そのものだったオースティン・バトラー

集英社オンライン / 2022年7月1日 16時1分

42歳の若さでこの世を去ったエルヴィス・プレスリー。彼の生き様を描いた映画『エルヴィス』(2022)は、数々の名曲や極上のライブシーンに胸躍る、音楽映画の傑作だ。スーパースターの波瀾万丈な人生を体現し、その演技が世界中から絶賛されているオースティン・バトラーに、役にかけた熱い思いを聞いた。

ハリウッドのトップスターの仲間入り確実!

©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

彼がいなかったら、ザ・ビートルズもクイーンも生まれなかったかもしれない。そう言わしめる“キング・オブ・ロック”ことエルヴィス・プレスリーの波乱に富んだ半生がこのたび映画化された。そのタイトルもズバリ『エルヴィス』だ。



50年代から70年代まで、アメリカのみならず世界の音楽界に君臨した不世出のアイコンを演じるのは、新鋭オースティン・バトラー。これまで『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)等に出演していた彼にとっては初のメジャー主演作だ。

本作をジャンプ台に、ハリウッドのトップスターになりそうな気配しかしないオースティン。その美貌と演技力に注目だ!


――そもそもエルヴィス・プレスリーのファンだったのでしょうか?

僕がファンというより、祖母が大ファンだったんだよ。祖母の家に行くといつもエルヴィスの曲が流れていて、一緒に彼の主演映画を見ていた。だから、とても近くにエルヴィスがいたので、いつの間にかファンになったという感じかな。でも、だからといって、まさか自分が演じることになるとは思いもしてなかったけどさ(笑)。

――確かに、素顔はまるでエルヴィスには似てないですよね?

そう。自分で似てると思ったこともないし、周囲に似てると言われたこともない。ルックスはね。ただ、歌声に関しては「似てる」と言われたことがある。それが今回の出演に関係しているんだけど。

――というと?

本作の企画について耳にしたのは2019年の2月だった。その前年のクリスマス時期に友人とドライブしていたら、ちょうどエルヴィスのクリスマスソングが流れてきたんだ。僕がそれに合わせて歌っていたら、友人がまるで閃いたかのように、僕の腕を掴んで「エルヴィスを演じるべきだよ!」って。

その後、またその友人と一緒にいるとき、ピアノを弾いて歌っていたら、「ほら、やっぱりお前はエルヴィスを演じるべきだ。自分で権利を手に入れてでもやったほうがいい」みたいに言ったんだ。それから数日後、バズ(・ラーマン監督)が『エルヴィス』を撮ろうとしているという連絡が入った。まるで星が一直線に並んだような感じってわかるかな? 運命的な気持ちになってしまい、「よし、この役に挑戦してみよう!」と誓ったんだ。

死ぬほど好きだったトム・ハンクスとの共演

エルヴィス・プレスリーの若き日から晩年までを見事に演じ分けたオースティン・バトラー
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

――多くの役者がこの役をやりたがったと聞いています。オーディションはどんな様子だったんでしょう?

今までに経験したことのないオーディションだった。まず僕は、オーディションを受ける前の段階からエルヴィスの軌跡をたどることにした。エルヴィスのリサーチに没頭し、手に入る限りのドキュメンタリーを見て、資料や本を読みふけった。本当に徹底的にやったんだ。そして、バズに『アンチェインド・メロディ』を歌っているビデオを送りつけたら、彼から連絡が来て、ロサンゼルスからニューヨークに向かったんだ。それからバズと毎日、いろんなことを話し合った。エルヴィスについてはもちろん、人生について、映画について、あらゆることを語り合った。更に、台本を読み、歌も歌い、クリエイティブなかたちでエルヴィスを掘り下げていった。驚くほど刺激的な体験だったね。それを5か月間続けた僕は、やっと公式のスクリーンテストを受け、この役を手に入れたんだ。

――それは凄いですね! 徹底的にリサーチした結果、エルヴィスはどんな人物だと思いましたか?

そうだな……ひと言でいうと「複雑」な人間、になるだろうね。人間はそもそも複雑な存在だと思うけれど、エルヴィスは本質的に二面性を持っていたと思う。礼儀正しく優しいアメリカ南部の少年のようでもあれば、ステージで転がったり、唾を吐いたり、まるで野獣のようにふるまう。また別のときには物腰が柔らかく、シャイでもある。とても極端だったように感じるんだ。人間同士の関係性においても、そういう複雑な部分を見ることができるよね。

特殊メイクを駆使してトム・パーカーを熱演したトム・ハンクス
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

――エルヴィスと、彼のマネージャーであるトム・パーカーの関係性そのものが、かなり歪んでいるというか複雑ですよね。

そう、とても複雑だよ。パーカーがエルヴィスを見つけてスターに育て上げたことは間違いない。TV出演を実現し、マーケティングに力を入れ、彼のグッズもたくさん販売した。精神面でも、若くして母親を亡くし、心の拠り所を失った彼を支えてくれたから、パーカーなくして、我々の知るエルヴィスはいなかったかもしれない。とはいえパーカーは、ある時期からエルヴィスを利用するようになり、彼から自由を奪うようになった。そのときのエルヴィスは、まるで檻に入れられたライオンのようだったと思う。そう、とても複雑な人生を送った複雑な人間だったんだ、エルヴィスは。

――そのパーカーを演じたのはトム・ハンクスです。彼との共演はいかがでしたか?

素晴らしかったよ。第一、僕はトムを死ぬほど大好きなんだ。そんなスペシャルな役者が、初めて会った僕を大きなハグで迎えてくれた上に、タイプライターをくれたんだ(ハンクスは旧式のタイプライターのコレクターで、関係者にプレゼントすることでも知られている)。それから僕たちは、そのタイプライターで手紙を書き、エルヴィス&パーカーとして“文通”しながら役柄を掘り下げていったんだ。これも稀有な体験だったよ。

母を思い歌った『アンチェインド・メロディ』

オースティンの名演は、元妻プリシラ・プレスリーに「エルヴィスそのもの」と言わしめた
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

――エルヴィスのロックな歌や歌い方は、彼の育った劣悪な環境によって生まれました。あなたのこれまでの人生で、彼のようにネガティブな要素をポジティブに変えたことはありますか?

それは、母親の死かもしれない。エルヴィスと同じで、僕は23歳のときに母を亡くしてしまったんだ。それはとても彼に共感できる部分だったし、エルヴィスと何か繋がりを感じる部分でもあったよ。

ほら、さっき、オーディションのテープとして『アンチェインド・メロディ』を送ったって言ったじゃない? 実はあれ、最初は『ラヴ・ミー・テンダー』を送るつもりだったんだ。ところがある晩、母のことで悪夢を見てしまい、その悲しい思いを込めて『アンチェインド・メロディ』を歌い録音した。この曲はラブソングなんだけど、そのときの僕は母親に向けて歌ったんだ。母への愛と、母を失った喪失感。そういう感情を込めて歌ったら、バズの心に届いたんだよ。『ラヴ・ミー・テンダー』だったら今の僕はなかったかもしれない。母を亡くすという悲劇が幸運をもたらしてくれたといえるんじゃないかな。

――あなた自身についてもお伺いしたいのですが、演技をやるきっかけになった作品や役者、監督がいれば教えてください。

影響を受けた作品はたくさんある。『エデンの東』(1955)のジェームズ・ディーン、『タクシードライバー』(1976)『レイジング・ブル』(1980)『キング・オブ・コメディ』(1982)のマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロ。僕、デ・ニーロの大ファンなんだよ(笑)。日本映画だとクロサワ(黒澤明)の『七人の侍』(1954)と『乱』(1985)。古い映画が多いのは、子供の頃から父親がいつも昔の映画を見ていたから。その影響がとても大きいんだ。

――言われてみれば、ジェームズ・ディーンに似てません?

あ、それは誉め言葉だよ(笑)。Thank you!

――というか、そう言われるのでは?

……うん、ときどきはね(とテレる)。

――次の作品は『Dune/デューン 砂の惑星』(2021)の続編ですね。

そうなんだ。今から超興奮しているよ(笑)。ドゥニ(・ヴィルヌーヴ)は大好きな監督のひとりだし、あの素晴らしいキャストたちとコラボレートできるなんて、これ以上の幸せはないよ。もっとも美しい映画体験のひとつになると確信している。



取材・文/渡辺麻紀

『エルヴィス』(2022)Elvis 上映時間:2時間39分/アメリカ
センセーショナルなパフォーマンスで若者から熱狂的に支持され、一躍トップスターとなったエルヴィス・プレスリー。ところがブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスが問題視され、警察の監視下に置かれてしまう……。エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは、ほぼ全編、吹き替えなしで歌とダンスを披露。生涯にわたりエルヴィスのマネージャーを務めた悪名高いトム・パーカーを、トム・ハンクスが演じた。

7月1日(金)より全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/elvis-movie/

オースティン・バトラー
1991年8月17日生まれ、アメリカ・カリフォルニア州出身。身長182cm。主な出演作はドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』シリーズ、『マンハッタンに恋をして〜キャリーの日記〜』(2013〜2014)、『シャナラ・クロニクルズ』(2016〜2017)、映画『コンビニ・ウォーズ バイトJK VSミニナチ軍団』(2016)、『デッド・ドント・ダイ』(2019)、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)。今後は『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)の続編『DUNE:Part Two』(2023)が控えている。

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