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【私のウェルネスを探して】幼稚園教諭からデザインの世界へ。鳥羽由梨子さんが「RELIEFWEAR」を立ち上げ心身ともに解放されるまで

集英社オンライン / 2022年7月3日 14時1分

自分のことを労わる時間、自分のことを大切にする時間は、きっと誰かを大切にする時間につながるはず。いつも忙しいあなたには、カラダとココロのウェルネス情報が必要です。いち早く気づいたキーパーソンのインタビュー集。

引き続き、「RELIEFWEAR」の鳥羽由梨子さんのインタビューをお届けします。鳥羽さんは、養生のための衣服のブランド「RELIEFWEAR」(リリーフウェア)を2020年にスタートしました。「まさか服作りをするとは思わなかった。昔の自分が知ったら、驚くと思います」と、自身も予想もしていなかった現在までを辿ります。幼稚園教諭だったという過去や、別の世界が知りたいと飛び込んだデザインの世界。体調を崩した30代を経て、自分自身を健やかにすることから始めた「RELIEFWEAR」をきっかけに知った、新たな気づきとは。(この記事は全2回の2回目です。前編を読む


「違う世界も知りたい」と桑沢デザイン研究所の夜間部へ

鳥羽さんは1980年、東京に生まれます。父親の仕事の都合で名古屋や山口、鹿児島などを転々としますが、中学2年生からは埼玉の川越へ。高校は、自由な校風に憧れて県内の私服高校へ進学します。高校卒業後は、社会学を学ぼうと受験しますが、希望した大学には不合格。受かったのが、幼児教育を学ぶ短大でした。

「将来何かになりたいとか何歳で何をしたいとか、具体的な夢があったわけでなくて。一浪してまで大学に入りたいという思いもなかったので、短大に進学しました。思いのほか楽しくて、さらに1年専攻科まで進んで、幼稚園教諭と保育士の資格を取得しました。卒業後は埼玉の東松山で幼稚園教諭になりました。1クラス25人ほどの子どもたちの担任を任されてやりがいがあって。子どもたちからは『先生、大好き!』なんて言われ、保護者の方からも感謝されて、先生だった3年間で仕事というものの面白さや楽しさを教えてもらいました」

鳥羽さんの幼稚園時代の写真と、教え子からもらった絵(写真提供/鳥羽由梨子さん)

一方で、体力的な厳しさを感じていたことや「違う世界も知りたい」「デザインを学んでみたい」という思いから、桑沢デザイン研究所の夜間部へ入学します。25歳になった時でした。

「雑貨が好きだったので、迷わずプロダクトデザイン科を選びましたが、実際は、リモコンや受話器をデザインしたり、模型を作ることになって。そっか、プロダクトって工業デザインだったんだ(笑)と想像していた内容とは違いました。でも、周りには同じようにデザインに興味がある仲間がいて、デザイン関連の仕事を目指している。夜間部だったのでダブルスクールや年齢が上の人もいて、それだけでも楽しい学びの時間でした。3歳上の夫もクラスメイトとして出会いました。桑沢に行っていなかったら人生が変わっていたかもしれないと思いますね」

セキユリヲさんのインタビューを読み、運命を感じる

卒業後の進路を考えていた時、書店で「子どもとデザイン」という特集記事でデザイナーのセキユリヲさんが掲載されている雑誌を見かけます。セキさんが幼稚園の体操服をデザインした時のインタビューでした。記事ではセキさんも短大で幼児教育を学んだ後、一般企業に就職。その後多摩美術大学の夜間部で学んだ後、デザイナーになったという経歴を読み、「自分とそっくり!」と運命を感じた鳥羽さん。意を決してセキさんの主宰するサルビアに電話をし、求人がないかを聞きました。

その時はスタッフの方から「ない」との返事でしたが、諦めきれず会社のホームページに公開されているアドレスに連絡をします。自分の簡単な経歴とサルビアの活動をとても素敵だと思っていることをメールで送りました。すると何日かして、セキさんからメールの返事が来ます。

「『作品集を持って、事務所に遊びに来てくださいね』と、気軽な感じで呼んでくださって、セキさんと会ってお話することができました。その後、1カ月ほどして『本を作るから作品作りの手伝いをしてくれませんか』と声をかけてもらって。サルビアの手仕事の本でしたね。それからも時々セキさんの本づくりや作品づくりに声をかけてもらえるようになり、自然な形でサルビアの活動に携わることになりました。たまたま産休の人がいてデスクも空いて、運も良かったのかもしれません」

苦手だと思うことも、やってみたら発見がある

2年ほどアルバイトした後、セキさんがテキスタイルを学ぶためのスウェーデンへの留学やスタッフの退職が重なり、29歳の時に正社員として採用。退職する2020年まで、アルバイト時代を含めた13年間、サルビアで経験したことは今でも鳥羽さんの糧になり、「RELIEFWEAR」に活かされています。「RELIEFWEAR」が運営するWEBメディア『養生通信』も、サルビアで学んだ伝えることの面白さ、発信することや共鳴することの楽しさがきっかけになっています。サルビアでの活動で、自分の意外な一面を知った出来事もありました。

「事務所兼アトリエが蔵前に移って、月いちショップという名で、月1回マーケットを開催することになりました。私は接客するのが苦手だと思っていたので、不安だな、ちょっと嫌だなと思いながら、取り組み始めたんです(笑)。でもやってみるとすごく楽しくて。作家さんを招いたり、フードやドリンクを作ってくださる方を招いたり。出店者やお客さんと交流して、常連さんも増えてきて、楽しみがどんどん増えていきました」

「苦手だと思うことも、やってみたら発見がある」という考え方は、ここから学びました。幼稚園2回、小学校3回、中学校2回の転校を重ねたことで、「置かれた環境に馴染む力」「どんな場所でも心地いいことを探す力」が自然と備わったのかもしれないという鳥羽さん。さらには予定調和でない“直感力”、自分がいいと思える“ひらめき”を研ぎ澄ましたことで、人生を切り拓いてきました。

日々の養生の積み重ねが健やかさを作る

「RELIEFWEAR」は鳥羽さんの夫とふたり、二人三脚で進めています。夫は、平日は会社員でリモートワークしつつ、週末にRELIEFWEARのブランディングやビジュアルコミュニケーションを手伝っているそう。直感的でアイデア力はあるものの計画や整理が苦手な鳥羽さんに対して、「夫は対照的なタイプ。道筋立てたり、整理して考えたり、俯瞰して考えるのが得意な人。たまにぶつかることもありますが(笑)、仕事や生活をする上では補い合える良いバランスです」。

鳥羽さんが大切にしていること。それは日々無理をせずに、溜め込まずに過ごすこと。ものづくりにはこだわるものの、生活の中では手放すことも恐れません。

「無理をしない、完璧を求めすぎない。家事もほどほどに、最近は料理も夫がすることがほとんど。負担を感じながら私がやるより、料理が好きで得意な夫に委ねた方が、うまく回ることが多いと気づきました。40代になった今は、自分に多くを求めすぎないことも大切だと思っています。不調になって色々調べていた頃、『バランスの取れた食事』、『しっかり睡眠を取る』、『適度な運動』、『ストレスを溜めない』ことくらいしか解決法が出てこなかったんです。結局、そういった日々の養生の積み重ねが健やかさを作るものだと思い、大事にするようになりました」

自分にぴったりな靴をやっと見つけ、後は前に進むだけ

一番の癒しの時間は、美しい自然の景色や造形物を見ること。雨上がりの空、茜色の夜明け、初夏の深い新緑、まどろむような淡い光。自然の美しい1シーンを写真に収め、それが「RELIEFWEAR」のものづくりにも還元されていきます。「RELIEFWEAR」の活動にまつわること全てが、鳥羽さん自身を解放し、心を楽にしてくれるといいます。

「元々は自分のために始めたことが、気づいたら他の人の健やかにつながっている。それによってさらに自分も癒されているんですよね。自分がやるべきことが見つかって、すごく楽になりました。自分にぴったりな靴をやっと見つけたと言うか。後は前に進むだけ。もちろん自分たちの力だけでは進めなくて。工場やパタンナーさんやお店の方など、自分たちの思い描くことに手を貸して下さる方々が周りにいるのも嬉しいことです。

コロナ禍にブランドがスタートしたこともあり、ままならないこともありました。でも最近は少しずつ、ポップアップショップや取扱って下さるお店が増えてきました。自転車屋やパン屋、靴屋に寝具店など、とても幅広いんです。どのお店も養生や心地よさに繋がる、素敵な考えを持ったところばかり。実は養生って暮らし全体に関わっているんだと改めて思います。『RELIEFWEAR』をきっかけに、養生の輪が広がって、さまざまな場で体やこころの健やかさの提案をしていきたいなと思っています」

鳥羽由梨子さんに聞きました

身体のウェルネスのためにしていること
“『日本身体文化研究所』矢田部英正先生の身体講座に通う“
「元体操選手で日本の伝統的な文化や身体技法を研究している、『日本身体文化研究所』の矢田部英正先生の身体講座に通っています。先生のお話を聞き、自分の身体の調整を行うワークショップに参加することで、季節ごとの体の変化や不調を整えています。何気無く暮らしていると、呼吸が浅く、上半身がガチガチになってしまいがち。丹田呼吸をして、上半身はリラックスさせ、下半身は満ちている“上虚下実”を意識するようにしています」

心のウェルネスのためにしていること
“ため込まない、抱え込まない“

「ため込まない、抱え込まないようにしています。心持ちの部分ですね。無理をすると、どこかに歪みが出てしまい、苦しくなってしまう。だから、できる範囲で手放してみる。疲れているなと思ったら少し休んだり、自然の中を散歩して気分転換したり。『嫌だな』ということから距離をおくことで、毎日が気持ちよく過ごせるように心がけています」

「RELIEFWEAR」公式サイト

撮影/高村瑞穂 取材・文/武田由紀子

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