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【実録】交通違反の青キップを切られたけど、反則金を支払わず刑事手続を求めていくとどうなるか

集英社オンライン / 2022年7月2日 15時1分

交通規則は守るものであるし、違反をしたらその償いをせねばならない。けれど時々その過程や根拠において理不尽さを覚えた経験は誰にでもあるのではないだろうか。これはそんな状況を究明すべく、正式な手続きを突き詰めたレポートである。

ルールに従って走っているつもりだったのに、突然、警察官に停められた

あらかじめ言っておくと、僕は決して逆上しやすいタイプではない。
当然だが真っ当な遵法精神を持っているので、犯罪歴も逮捕歴もなければ職質を受けたこともなく、警察という組織や警察官に対しては、基本的に敬意と信頼、そして友愛に近い感情を抱いている。
車をよく運転するので、スピード違反や一時停止違反などで捕まったことはあるものの、いつも紳士的かつ低姿勢の態度で接してくる現場の警察官に対し、「いえいえ、こちらの方こそホント申し訳ない……」と恐縮するばかり。


自分がやらかした違反についてただちに反省こそすれ、抵抗しようなどと思ったことは、かつて一度もなかった。

それだのに……。
今回ばかりは、どうしても納得がいかなかった。

2021年7月7日14時45分頃。僕は東京・世田谷区の自宅近くの都道を車で走っていた。
そこは左折路が二連続するポイントで、僕は2つ目の道を左に行くつもりだったが、黄線で区切られた4車線のうち、左から2番目の“直進レーン”で信号待ちをしていた。
やがて信号が青に変わったので、車の流れに従って前進。
路上の車線が黄色から白破線になったところでウインカーを出し、ミラーと目視で前方後方の安全確認をしつつ左端レーンに移動、すみやかに左折した。
するとそこで二人の警察官から声をかけられ、停車させられたのだ。

ここまでの一連の動きを、当日のドライブレコーダーの記録映像から抽出した連続画像で見ていただきたい。

左から二番目のレーンで信号待ち

信号が青になったので前進

車線が黄色から白破線に変わったのを確認

ウィンカーを出して左端レーンに入る

左折すると、警察官に停められた

なぜ停められたのか、わけが分からなかったが、窓を開けると警察官は「左折できませんよ。違反です」と告げてきた。
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになってしまった僕ちん。
だって、直進レーンから正しい手順を踏んで左折レーンへ移動し、真面目に左折したのに。

僕は警察の勘違いだと思ったので、言われるまま免許証を提示しつつ、「黄色い線はまたいでいませんよ。何か変なことしましたかね?」と聞いた。
すると、警察官は以下のような説明をした。
・僕が踏み越えた道路上の白い破線は、通常の車線とは違う“指導線”というもの。
・指導線とは、停止線より前の通行区分のまま車を進ませるための目安。
・指導線を越えて左のレーンに入り左折した走行は、直進の義務を無視して左折したのと同じ。

指導線ってなに? 同じ白の破線なのに、そんなに意味が違うなんて……

えええっー!?と思った僕は、すぐさま反論をした。
運転席から、あの白破線はレーン移動OKを示す普通の車線に見える。
だから僕は交通ルールに則って、正しくレーン変更と左折をおこなったつもりだ。
この白破線が通常の車線ではなく“指導線とやら”であるのなら、路面表記をもっと分かりやすくするべきではないか、と。

路上でのああでもないこうでもないというやり取りは、30分近くに及んだ。
警察官はとにかく書類にサインをさせようと促してきたが、僕は断固拒否。
そして、用があって急いでいる旨を伝えると、警察官は「では、後日改めて連絡します」と一旦引き下がった。
こうして取りあえず現場を離れることになったのだが、「道路標示の疑問について詳しく話をしたい場合は、どこに連絡すればいいのですか?」と尋ねると、所轄の某警察署・交通規制課に問い合わせるようにと伝えられた。

用事を済ませたあと、教えられた所轄警察署に電話をすると、対応に出たのは交通規制課の課長を名乗る方だった。
課長はまず、
「都道の道路標示については、道路管理者である東京都の管轄だから……」
と、あからさまに取り合いたくないような雰囲気を出してきた。
しかし僕が食い下がって詳しく聞くと、東京都は所轄警察署の指導のもと、道路標示の設定をおこなっているにすぎないということが分かった。

なんだよ……。
やっぱり道路標示の内容は、警察署の交通規制課が決めているんじゃないか。
面倒臭そうなやつだからと、適当に門前払いされかけたことを悟り、僕の“憤り指数”は10段階のうち「3」くらいに上がった。

僕は課長に、現場で警察官に主張したことと同じ内容を伝えた。
しかし取りつく島もなく、
「ダンナの言っていることは、違反逃れの屁理屈ですよ」
と、粗い口調で非難してくる課長。
この侮辱的な一言で、僕のハートに火がついてしまったのだ。
“憤り指数”は一気にマックスの「10」に跳ね上がる。

今回の違反はもし認めたとしても、違反点数1点、反則金6000円。
それをただ逃れたいために、こんな面倒臭いことをするものか。
もっと根源的な問題なのだ。
意地っつうか、プライドの問題なのだ。

本当に久しぶりに頭へ血がのぼった僕だったが、「その言い方はおかしいでしょ。市民からの問題提起をそんなふうにしか扱えないのは、いかがなものかと思いますよ」と冷静に伝えられたのは、我ながら上出来だったと思う。
だが話はやっぱり平行線。
納得できぬまま通話を終えた僕は、「絶対に違反を認めず、刑事手続を求めよう」と心の中で決めていた。

青キップを受け取りつつ、反則金は支払い拒否。刑事手続へ

僕が指摘を受けた違反は、いわゆる“青キップ”で処理されるものだ。
毎日、膨大な件数が発生する交通違反処理の効率化と迅速化を目的とした、いわゆる“反則金制度”で用いられるのが青キップ。
違反行為のうち比較的軽微な事案は“反則行為”と呼ばれ、刑事処分による罰則適用に代え、反則金の納付という方法で簡易的に処理される。
平たく言えば、ちょろっとした違反でいちいち裁判をやってたら世の中回らないので、サクッと“反則金”を納めればそれでチャラにしてやるよ、という制度である。

一方で、告知された違反内容についてもし納得できなければ、反則金は納めず、通常の裁判の開廷、つまり“刑事手続”を求める権利を我々国民は持っている。

翌7月8日、取締りをした警察官から「署の方に連絡をいただいたそうで。つきましては昨日の違反処理をしたい」という電話連絡があり、僕は指定された交番に出向いた。
警察官は、昨日の警察署への電話で話がついたと思い込んで待ち構えていたようだ。
ところが、僕が違反の事実はないと変わらず認識していること、今回の件で責任が問われるとしたら、瑕疵のある道路標示を設けた方だと思っていることを告げ、改めて「否認します。刑事手続をしてもらいますので」と伝えると、驚いたような表情をしていた。

きっと、こんなにしょうもない違反でここまで頑張る人は珍しいのだろう。
違反金をサクッと納めて終わりにする方が、ずっと楽ちんだからな。
はっきり言いましょう。
ネタに飢えているフリーライターを、侮ってもらっちゃあ困る。
そう、僕はすでに「この顛末、いつか原稿にしてやろう。ウッシッシ」と考えていたのだ。

交番では、違反を認めたことになる書類への署名や押印はすべて拒否し、ノーサインの「交通反則告知書」=青キップを受け取った。
警察官は「もしどこかの時点で気が変わったら、期限までに反則金を納付してくださいね」と、6000円の納付書も一緒に渡してきたが、僕は決意を新たにすべく、帰宅後すぐに破いて捨てた。

無署名のまま受け取った青キップと、破って捨てた反則金納付書

次のステップは、青キップに示されている日時に警視庁・池袋通告センターというところに出頭し、正式に“刑事手続希望”の旨を告げればいいようだ。

意外なほど好印象だった、警察のその後の対応

7月28日。
戦う気満々で池袋通告センターに出頭した僕は、やや拍子抜けしてしまった。
窓口で対応してくれた女性警察官は、なぜだかとても優しく、朗らかな態度で「否認して刑事手続をご希望ですねー。分かりました」と言いながら、今後、僕がとるべき手順を、わかりやすく教えてくれたのだ。
なんだか、「じゃあ、頑張ってくださいね!」と背中を押されているような気分にさえなった僕は、ややタジタジとなりながら、新しい書類を受け取った。

しかしよく見るとその「交通反則通告書」は、前段階の「交通反則告知書」のような青色ではなく、うっすら赤い色に変わっている。

池袋にある警視庁通告センターと、そこで受け取ったほんのり赤いキップ

“この野郎、手こずらせやがって”とでも言いたげな、無言の圧力のようなものを感じざるを得なかった。

次に指定された出頭日は、3ヶ月弱後の10月15日。
出頭場所は、東京・錦糸町にある警視庁・交通部交通執行課墨田分室というところだった。

警視庁・交通部交通執行課墨田分室のエントランスと待合室

ここは東京簡易裁判所墨田庁舎内にあるので、僕はてっきり検察官による取り調べがおこなわれると思っていたのだが、狭いブースでアクリル板越しに対面したのは、またもや警察官だった。
検察に送付する最終書類を作成すべく、警察による詳しい調書が取られるということだったのだ。

ネットで事前に調べたところ、被疑者(僕のことね)が自分の意見を述べる機会はこれが最後ということだったので、僕はA4用紙7枚綴りで、“意見書”を準備していた。
そこには、いかに今回の取り締まりが不当なものであり、自分がどのような意見を持っているかを、写真付きで詳細に記しておいた。

対応にあたった、僕と同じか少し上くらいの年齢に見えるベテラン警察官は、一見、強面風の人だった。
しかし彼は僕の話を親身になって聞き、非常に丁重かつソフトな対応をしてくれた。
そして準備した7枚綴りの“意見書”に目を通したあと、「こういうのをいただけるのはありがたいです。検察官に資料として渡しておきますからね」と言ってくれた。

事情聴取はこうして5分足らずで終了したのだが(まあ、それほどしょうもない違反ということ)、その後、僕は沈黙して20分以上も待たされることになった。
渡したA4サイズの書類が検察へ送付する書式の大きさには合わなかったらしく、ホチキスで留めた7枚は一旦バラバラにされ、一枚ずつ小さく畳まれていったのだが、その作業がバカくさいほど時間がかかるのだった。
言葉では説明できないのだが、畳み方は独特のもので、ベテラン警察官は定規を使い、時間をかけて一枚ずつ正確に慎重に、丁寧に黙々と紙を折っていく。
僕はただ、それを黙って見ていることしかできなかった。

なんだか本筋とは違うところで、大きな虚しさを感じてしまった。
役所仕事に生産性や効率を求めても仕方ないのかもしれないが、日進月歩で情報処理のスピードが上がっていく世間と、あまりにも乖離したアナログ作業だ。

それはまあいいとして、そんなこんなで手続きは終了。
ベテラン警察官によると、この件が起訴されて裁判になるか、あるいは不起訴となるかは、この後の検察に判断が委ねられる。
もし起訴となった場合は連絡がいくが、不起訴になった場合の連絡はない。
もし確かめたかったら、間違いなくこの件の処理が終了している3ヶ月後をめどに、検察に電話で尋ねればいいということだった。

最後に待っていた、最大級のストレスとは

果たして、それっきり連絡はこなかった。
不起訴になったのは確実、つまり言ってみれば僕の“勝利”なのでそのまま放っておいても良かったのだが、行きがかり上、最後までやらねばならぬ。
まあ、ネタにもなるし。

と思った僕は、最後の出頭からちょうど3ヶ月経過した2022年1月15日に、東京区検察庁道路交通部へ架電。
本件が最終的にどう処理されたのかを質問してみた。

そして本当に予想外だったのだが、僕はこの電話によって、今回の一連のいきさつの中でもっとも不快な思いをさせられることになった。

電話で対応に出たのは、“超・上から目線”の態度を隠そうともしない、本件担当検察官氏。僕は彼から、半笑いのバカにしたような口調で、長々と説教めいた話を聞かされた。
グダグダとした彼の説明を要約すると、僕の違反は言い逃れできない明白な事実で、そもそも警察官が現場で指摘した時点で違反は確定しているとのこと。

要するに「誰がなんと言おうと、あんたが悪いのよ」ということなのだ。

なんだよ、それなら起訴すりゃいいじゃん! こっちは一向に構わねえんだ! と啖呵こそ切らなかったけど、そんな気分で「じゃあ、なぜ起訴されないのですか?」と質問すると、「この件については、警察の調べにも不十分なところがあるので」と説明された。

なんじゃそりゃ! である。
「提出した“意見書”は見てくれましたか?」と重ねて聞くと、本当に絵に描いたように「フン」と鼻で笑い、「ははは、あれね。はいはい、見ましたよ。でもあんなもの、なんの意味もありませんよ」と言い放つ。
しかも「あなたね、起訴されなかったから“前科”にはならないけれど、検察に書類が送られたという“前歴”は残りましたからね。一生消えない前歴ね前歴(笑)」と笑いを浮かべながら言うではないか。

“憤り指数”はマックスの「10」をはるかに超え、30くらいになっていた。

おい!!
日本の検察ってどうなってる!?

あまりにも悔しかった僕は、ここでつい、本来は禁じ手である一言を言ってしまった。
「あの、僕はマスコミの仕事をしていて、いつかこの件を記事にするかもしれません。この会話は、録音させていただいています(嘘)。お名前をうかがってもいいですか?」
するとまあ、どうしたことでしょう。
検察官氏の口調はコロッと変わり、非常に丁寧な対応になったのだ。
そして「お電話、ありがとうございました」とまで言われて、電話は切られた。

おいおいおいおい!!
なんなんだ、その小物感は!?

結論としてはですね、もし不本意な交通取り締まりを受けてしまい、自分の主張に自信があって時間に余裕のある方は、泣き寝入りせずにしっかり対抗し、手続きを踏んだほうがいいと思います。
ただし、その過程で出会う警察官や検察官も所詮は人の子。
それぞれの方の人格により、満足したり不快な気分になったりするので、そこは覚悟のうえで。

ちなみに、実は最初から分かっていたのだが、青キップを受けるような軽微な違反で刑事手続を求めていくと、9割がたは不起訴になって終わりなのだそうだ。
でも不起訴になったとしても、「違反点数1点」という行政処分は別ルートの処理なので、青キップを受け取った時点ですでに成立してしまっている。
その行政処分も不服申立てをすることは可能なのだが、こちらの方はほぼ100%覆らないらしい。
しかも不服申立てができるのは、その行政処分によってなんらかの不利益が生じたときに限られる。
僕のケースでは、次回の免許更新で、本来ならゴールド免許になるはずだったのにブルーの免許しか受け取れなかったときがそのタイミングになる。

そして僕の次回の免許更新は2年後の2024年。
一応、行政処分不服申立てもやってみるつもりなので、またその時にはご報告をします。
すっかり忘れていなければ、の話だが。

その後も同じ場所で、“ネズミ捕り”はおこなわれている

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