はい、出ました。「簡単なものでいいよ」発言です。これは料理教室の生徒さんたちから聞く「イラっとくる発言」ぶっちぎりのナンバーワンです。
ごはん作りとは、ほとんどが一人孤独な作業です。ですから、料理教室という「同士の集い」は、普段のモヤモヤを共感しあう絶好のチャンスでもあるのです。
誰かがふと口にした「簡単なものでいいと言われると頭にきちゃう」という発言が、ほかの人たちのモヤモヤスイッチを押すことになります。
そもそも、何が簡単か、何が面倒かという感覚は、本当に千差万別・十人十色です。ある人にとっての、当たり前や簡単は、別の人にとっては絶望ですらあります。
そして皆さんの「簡単なもの」談義は延々と続きます。私はお皿を洗いながら聞くともなく聞き、ときに頷き、ときに吹き出すこともあります。
「カレーは絶対に簡単な料理ではない」というのは、もはや世間の共通認識になりつつありますが、真夏にゆでる素麺だって面倒くさいし、そもそもごはんが炊いてある前提がおかしい……など、どんどんヒートアップしていきます。
そのたびに、笑い声があふれ「ホント、やってらんないわよね」とこぼす表情がだんだんと生き生きしてくるから不思議です。一人で抱えるイライラが、誰かと共有することでゲラゲラに変わる魔法の瞬間です。
ちなみに、かねてより私の「簡単」なレベルは「白飯に塩をかけたもの」です。
また、別の観点で、「簡単なものとは軽めの食事」をさすこともあります。
これもよくあるケースで、あまりお腹がすいていないのならと、漬物や余りものの煮物を出したら、「もう少しお腹に溜まるものない?」と言われたときの絶望ったらありません。そう言ってくれたら、最初からレトルトカレーを温めたのに!
このように、家族といえどもお互いの「簡単」の定義の行き違いに、「所詮は他人」という現実を突きつけられます。