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賢い若者だけが気づいている「ぬるい日本」でさっさと億万長者になる方法

集英社オンライン / 2022年7月14日 9時1分

人生100年時代に日本人の働き方はどうシフトすべきか? 新しい働き方を提示する『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)から一部抜粋・再構成してお届けする。

「ぬるい日本」でさっさと億万長者になる

東京大学のある文京区本郷の周辺にはベンチャー企業がたくさん集まっていて、いまでは「本郷バレー」と呼ばれています。そこで起業を目指す若者に「なぜシリコンバレーに行かないのか」訊いてみたことがありますが、その答えは「コスパが悪い」でした。

グーグルやフェイスブックに匹敵する成功を手中にすれば何兆円という莫大なお金と世界的な名声が手に入るでしょうが、人生を楽しく暮らすのにそんな大金は必要ありません。シリコンバレーには世界中から「神童」「ギフテッド」と呼ばれる天才が集まっていますが、そんななかでも成功できるのは何千人に1人で、確率的には0.1%以下です。



それに対して日本なら、ゲームやアプリを開発したり、シリコンバレーのイノベーションを日本風にカスタマイズして大手企業に売却するだけで数億円になるのだといいます。

日本は「失われた20年」を経ても世界第3位の経済大国だし、日本語という「非関税障壁」で外国企業の参入を困難にしています。だったら世界中の天才が集まるシリコンバレーではなく、「ぬるい日本」で億万長者になった方がいいと、本郷バレーの若者たちは考えているのです。

彼らの成功物語はだいたい同じで、VC(ベンチャー・キャピタル)に「こんなベンチャーを始めました」という案内を送ると「話を聞かせてください」という連絡が来て、自分たちの事業プランを担当者に説明します。次にまた別のVCが来るので、すでに最初のVCと話をしているというと、担当者の顔色が変わって「出資を検討させていただきます」となります。

3社目のVCが来たとき、「2社のVCから提案をもらっています」と話すと、さらに真剣になって、最初は100万円単位だった出資額があっというまに1000万円単位になります。

日本で起業して成功する中国の若者のねらい

そうこうしているうちに、メーカーの研究開発部門が接触してきます。ここでVCから出資を受けて上場を目指すか、メーカーに会社ごと売却してさっさとお金持ちになるか悩むのですが、最近は上場のステイタスが落ちてきたので、会社を売却してとりあえず一生困らないくらいのお金を手に入れ、それから別のベンチャーを立ち上げるか、VCになってベンチャーに投資する側に回るのが流行っているようです。

これは外国人も同じで、日本で起業して成功した中国の若者のインタビューを読んだら、「シリコンバレーなら自分はぜったいつぶされていた。日本を選んだからこそ成功できた」と答えていました。考えることはみんないっしょなのです。

日本にも賢い若者はたくさんいるでしょうが、それでも競争率が低いのは、そうしたライバルの大半が会社(役所)というタコツボに閉じ込められているからです。こうしてライバルが勝手に消えていくから、ベンチャーでちょっとした成功をすると大金が転がり込んできます。

銀座の高級レストランや六本木のクラブに行けば、若くして成功したそんな若者たちを見ることができるでしょう。

研究開発部門の仕事はベンチャーを買収すること

東証一部に上場している某大手健康食品メーカーの話で驚いたことがあります。新製品のプロモーションを請け負った業者が、製品についての詳細なデータを問い合わせたところ、回答が来るまで1週間以上待たされたそうです。この会社は社内に研究開発部門を持っていますから、本来であればすぐに回答できるはずなのですが。

不思議に思ってよくよく聞いてみると、じつはこのメーカーの研究開発部門は、もはや開発を行なっていないというのです。だったらなにをやっているのかというと、創薬ベンチャーの買収です。

実はその大手メーカーは、ベンチャー企業が開発する新製品をひたすらウォッチして、有望そうなものを見つけたら買収するか専属契約を結んで、ドラッグストアやコンビニなどこれまで開拓してきた販路に乗せて販売するというビジネスをやっていました。「メーカー」と名乗りつつも研究開発部門は空洞化しており、これではたんなる営業代行です。そのためデータを問い合わせると、いちいち開発元に照会しなければならないのでものすごく時間がかかるのです。

なぜこんなバカバカしいことになるかというと、終身雇用の日本の会社はタコツボ化していて、いったん悪い評判が立つとそれが定年までついてまわるからです。こうした環境で生き延びるための最適戦略は、いっさいリスクをとらずにひたすら失敗を避けることです。

ノーベル賞級の発明をしても評価されない

こんなことではイノベーションなど起こせるはずはありませんが、経営陣がいくら𠮟咤しても社員を踊らせることはできません。その話を真に受けてリスクをとった先輩社員が、失敗の全責任を負わされて左遷され、飼い殺し同然に扱われている姿をみんな見ているからです。

とはいえ、新商品や新サービスがなければ会社は壊死(えし)してしまいます。だとしたら、残された方法はひとつしかありません。それが「イノベーションの外注」です。

じつはこれは、日本的雇用の会社にとってきわめて合理的な戦略です。

年功序列の会社では、ノーベル賞級の発明をしてもボーナスが数百万円増えるだけです。その代わり失敗は定年まで「終身」でついてまわるのですから、まともな知能の持ち主であればリスキーな研究開発なんてやろうとは思いません。かといって成果報酬で一部の社員に何千万円も給料を払うと、日本の会社(イエ)がなによりも大事にしている「社員の和」が壊れてしまいます。

しかしサラリーマンは、自分たちの小さなムラ社会のことしか気にしませんから、外部のベンチャー企業を買収して、20代の若者に何億円、何十億円払ったとしても「和」は壊れません。日本の大企業は構造上、リスクはすべて外部の人間にとってもらって、そのおこぼれを拾って生きていくしかないようにできているのです。

そしてじつは、日本の賢い若者たちはすでにこのことに気づいています。

『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』(PHP研究所)

橘玲

2022年3月18日

968円(税込)

文庫 336ページ

ISBN:

978- 4-569-90208-1

人生100年時代に、日本人の働き方はどうシフトすべきか?

本書では、世界の潮流を例に、旧来の日本的なライフスタイルではいずれ立ち行かなることを示しつつ、どのように働き方を変えれば、日本のビジネスパーソンが生き残ることができるか、その解決策を具体的に提示する。

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