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台風がくると頭痛、めまい、憂うつに…「気象病」の原因とケア法は?【専門医に聞く】

集英社オンライン / 2022年7月6日 17時1分

台風や大雨が近づくと、「頭痛、胃もたれで仕事にならない」「持病の腰痛、関節痛が悪化する」「憂うつ感が増す」など、さまざまな不調に悩む人は多い。その原因や不調につながるメカニズムは、耳にあることがわかってきた。そこで、耳鼻咽喉科専門医で『免疫入門 最強の基礎知識』(集英社新書)の著者の遠山祐司医師に話を聞いた。

発達した低気圧の通過時に不調が生じる

――近ごろ、「気象病」という言葉をよく耳にするようになりました。天気と体調は関係があるのでしょうか。

昔から、「膝が痛いから明日は雨だ」と、痛みで天気を予報する人は多くいます。「大雨や台風が来る直前は耳の奥がツーンとして痛い」「梅雨時は、ケガのあとが痛む」という体験をしている人は後を絶ちません。



天気と体調は密接な関係がある、という研究結果は「生気象学」の分野で以前から確認されてきましたが、近年は医学界でも数多く報告されています。

ただし、気象病とは通称であり、医療で用いられる病名ではありません。国語辞書には「気象の変化と関係があると考えられる種々の病症の総称」などと記されています。

気象病とは一年中起こるわけですが、日本ではとくに梅雨時や台風時に気圧や気温、湿度が急激に変化します。また、フェーン現象では高温と強風に、暑い時期は高温多湿に見舞われます。そうした気象の変化が心身に大きなストレスとなって、体の不調をまねくのです。

気象病の具体的な症状は

――気象病は不調の総称とのことですが、具体的にどのようなものがありますか。

次のように、主に、「気象が引き金となって発症するケース」と、「気象の影響で持病が悪化するケース」が考えられます。

・気象が引き金となって発症
頭痛、めまい、鼻水、低血圧、脳貧血、耳痛、耳閉感、耳鳴り、咳、吐き気、おう吐、顎関節痛、歯痛、肩こり、動悸、狭心症、胃痛、胃もたれ、腰痛、頻尿、下痢など。全身では、ひざ・手首・あごなどの関節痛、神経痛、むくみ、けん怠感、疲労感、かぜ、また精神面では憂うつ感、イライラなどです。

これらの症状はひとつではなく複数が同時に現れます。痛みを伴うことが多いため、「天気痛」「気候痛」「気候症」「低気圧痛」などと呼ばれることもあります。

・持病の悪化
関節リウマチ、外傷、気管支ぜんそく、脳梗塞、心筋梗塞、胆石症、尿路結石、片頭痛などがあります。関節リウマチや気管支ぜんそくでは、人工的に気圧や気温が安定した環境で治療する研究も進んでいます。

「内耳」から脳に気圧の変化が伝わって自律神経失調症に

——気象の変化が心身のストレスになるとのことですが、体のどこにどう影響するのでしょうか。

いくつか考えられていますが、まず、「耳」が受けるダメージです。気圧の変化は、耳の奥のほうの「内耳」で感知していることがわかってきています。

内耳は音や体の平衡感覚に関する信号を「内耳神経」を通して脳に伝えます。気圧の低下を感知すると、自律神経のひとつの交感神経が刺激され、先に挙げたような複数の症状が現れるのです。

また、内耳はリンパ液で満たされています。気圧が低下するとそのリンパ液が膨張し、内耳がむくんだ状態となって、耳閉感や耳痛、めまいをまねきやすくなります。これは「内耳性めまい」という病気の原因にもなります。

――先ほどのお話の「気象が引き金となって発症するケース」は、自律神経失調症の症状ですね。

そうです。自律神経はよく知られているように、ヒトの心身が活動時に働く交感神経と、リラックス時に働く副交感神経の2つがあります。この2つがバランスを取り合い、心拍、血圧、胃や腸の消化吸収機能、代謝、免疫機能などを調整しています。

交感神経が優位になると、心拍数が高まって心臓がドキドキする、血管が収縮する、血圧が上昇するなどして、それらが要因となって頭痛、胃痛、関節痛などの痛みに敏感になります。興奮や緊張でイライラもします。

一方、副交感神経が優位になりすぎると、けん怠感や眠気が出てきて、憂うつ感や不安感も覚えます。

気温、湿度、気圧の変化、また、災害予報による緊張や不安を覚えたときにも自律神経への負荷が強くなり、その中枢がある脳に負担がかかって、心身ともに疲れやすくなります。

耳痛は「中耳」も原因に

――耳がツーンとして痛んだり、詰まった感じは、飛行機の離陸時や新幹線での移動時、高層階へのエレベーターに乗ったときにも起こります。それも同じ原因でしょうか。

その症状を「耳閉感」といいます。かぜ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などの病気の場合や、鼻を強くかんだときにもなりますね。この場合の主な原因は内耳ではなく、鼓膜の奥の「中耳」にあります。

中耳には少量の空気が入っていて、鼻と「耳管」という細い管でつながっています。この耳管は気圧が変化すると鼻側で開くので、通常は中耳と体外の気圧は等しくなっています。しかし、体外の気圧が低下すると中耳の空気が膨張し、鼓膜を押すために詰まった感じや耳鳴り、耳痛が現れやすくなります。

これらは気象病ではありませんが、気象病の症状には、こうした中耳の影響もあるでしょう。

気象病になりやすい人の特徴は? セルフケア法は?

――気象病になりやすい人の特徴はありますか。

日ごろから、乗り物酔いをしやすい、めまいが起こりやすい、揺れに弱い、高所で頭や耳が痛くなりやすい人は気象病になりやすいといえます。

また、かぜ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など鼻の病気、中耳炎など耳の病気、片頭痛、膝痛や顎関節症など関節痛、慢性的な肩こりや腰痛、関節リウマチ、気管支ぜんそくなどがある場合は、その症状が悪化しやすくなります。

耳のストレッチで血流促進

――気象病を自覚したら、自分の体調を見つめる必要がありますね。セルフケア法はありますか。

次の方法を試してください。

持病がある場合は治療をする
医師に「気圧の変化が大きいときは、持病が一層、つらい」ということを伝えてください。

耳閉感、耳痛がするときは、あくびをする、唾液を飲み込む、飴をなめる、「耳抜き」を試す
一時的に改善することがあります。

天気予報を活用する
1週間先までチェックし、仕事や生活の予定を調整しましょう。天気予報の「ウェザーニュース」や、スマホのアプリ「頭痛―る」では、先々まで気圧の変化を予報し、通知する機能もあります。

気象病(体調)日誌をつける
不調の状態と、天気、気温、気圧を手帳やスマホのカレンダーなどに記録してください。先ほどの天気予報サイトやアプリにも、記録機能が備わっています。天気と体調の傾向が把握できて、受診時の参考にもなります。

耳をはじめ、全身のストレッチをする
血流促進が目的です。耳は、耳たぶを指でつまんで軽く後ろへ回す、耳の中央部を持って後ろへ回す、耳の上下を持って軽く折りたたむなどをしましょう。力を入れずに、そっと行うことがコツです。

また、全身のストレッチとしては、両方の肩を後ろへ回す、肩をすくめるように上へぎゅっと持ち上げてからすとんと落とす、左右の首筋を伸ばす、ひざと脚の後ろ側を伸ばす、腰を回すなど、各5~10回を1セットとして、1日に3セットを実践してください。

気圧の急低下が見込まれる前に鎮痛剤、酔い止めの薬を飲む。
症状が出現してからではなく、前線や台風が近づく前に飲むことが予防のコツです。用法用量を守ってください。

漢方薬の「五苓散(ごれいさん)」や「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」なども体質に合えば選択肢となりますが、漢方薬を試したい場合は、漢方専門医を受診して相談しましょう。

日ごろからこまめに水分を、発汗時は塩分も補給する。
日ごろから水分を適宜補給しましょう。ただし、夏やスポーツ時など発汗が多いときは体内のナトリウムが排出されるので、塩分(ナトリウム)の補給も必要です。スポーツドリンクや梅干し、熱中症対策用の塩飴などを活用してください。

屋内ではエアコンを活用しながら、体を冷やしすぎない
冷えると代謝や血流が悪化します。エアコンによる冷えやシャワーだけの入浴で済ませることは避けてください。

充実した睡眠、栄養バランスが整った食事、軽い運動を習慣にする
自律神経のバランスの安定に働きます。

――ありがとうございました。

つらい頭痛や耳痛、憂うつ感の原因のひとつとして、天候の変化による耳への影響や自律神経のバランスの崩れが挙げられるということでした。まずは、天候次第でこうした不調が起こりうること、その原因と自分でできる予防や対処法を知っておき、改善を目指したいものです。

構成・文 藤井 空/ユンブル イラスト/PIXTA

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