痛い。悔しい。勝ちたい――。闘いを通して、感情を表現するのがプロレスラーだ。顔の表情や全身の細かな動きから、わたしたちは彼、彼女らの感情、そして生き様を感じ取る。
では、顔の半分以上がマスクで覆われている覆面レスラーはどうか? 感情もまた覆われてしまうのか? そうとは限らない。感情表現が豊かな覆面レスラーは確かにいる。その代表が、“闇に踊るスカイタイガー”ことスターライト・キッドだ。
2015年10月、キッズレスラーとしてスターダムでデビュー。年齢非公開だが、今年“年齢不詳の新成人”になった。テクニックとスピード、そして生来のプロレス脳を併せ持ち、海外からの評価も高い。
しかし、真面目で控えめな優等生タイプ。正規軍・STARSに所属していた頃は、「“スターダムのアイコン”岩谷麻優の隣にいる人」――そんなイメージが強かった。
それが、2021年6月、正規軍・STARSがヒールユニット・大江戸隊との「全面戦争イリミネーションマッチ」に敗れたことから、大江戸隊に強制加入させられた。闇落ち――いわゆるヒール(悪役)ターンを余儀なくされたのだ。
キッドは変わった。マスク、コスチューム、メイクといった見た目の変化と共に、より自由に、より欲深く、より感情豊かにプロレスをするようになった。相変わらず顔はマスクで覆われ、目と口しか見えない。それでも世界中のプロレスファンを魅了し続ける彼女の魅力とは――。