一般に“エンパワーメント映画”と呼ばれるジャンルの定義は、実は人によってかなり幅がある。女性(あるいは性的マイノリティ)の権利拡大に積極的に寄与している作品、といった捉え方から、単純に“女性監督による作品”、あるいは“カッコいい女性主人公が活躍することで、女性を元気にしてくれる作品”と広義に捉える人も。ここでは、男性目線での女性像ではなく、女性たち自身の立場から、“自分たちが共感できる女性キャラクターを映画で示そうと試みた作品”とする。
そもそも、監督が女性である場合にだけ“女性監督による作品”とわざわざ強調されること自体、それがまだまだ少ないからだ。米アカデミー賞は今年で94回を数えるが、その歴史の中で、2017年の第89回まで女性が監督賞にノミネートされたのは『セブン・ビューティーズ』(1975)のリナ・ウェルトミューラー、『ピアノ・レッスン』(1993)のジェーン・カンピオン、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)のソフィア・コッポラ、『ハート・ロッカー』(2008)のキャスリン・ビグローの4人のみ。受賞したのはビグローだけだった。