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自身もスカウトマンに騙された。レジェンド女優と「AV新法」を真面目に考える

集英社オンライン / 2022年7月15日 17時1分

成人年齢引き下げによって、強要による18歳、19歳のAV出演を防ぐため、異例のスピードで可決・成立した「AV出演被害・救済法」(6月23日施行)。これによって、年齢を問わず、出演契約凍結時の契約書などの交付と契約内容の義務化、契約から1ヵ月間の撮影禁止、撮影終了から4ヵ月間の公表禁止、撮影時に同意していても、公表から1年間は無条件に契約を解除することができる、公表前に撮影された映像を確認することができる、意に反する性行為を拒絶できることなどが法律で定められた。この新ルールをAV現場にいる人間はどう見ているのだろうか。22歳でデビューしてから、ずっと現役を走り続ける川上ゆうに、ズバリ、本音を訊いてみた――

6倍に増えた契約書

――現場にも影響は出ていますか?

出ていますね。法案の可決・成立から施行までがあっという間だったので、統一の契約書ではなく、今はまだ各メーカーさんが、それぞれ、独自に用意した契約書にサインすることになるんですけど、先日、契約したメーカーさんの場合は、それまで1枚だった契約書が、6枚綴りのものになっていました。

――家電の取扱説明書のような感じですか?

それよりは、全然、わかりやすいです(笑)。大事なところは、文字が大きくなっていたり、ラインが引いてあるので、一目瞭然です。

――例えば、どういう箇所でしょう?

署名してから1ヵ月間は撮影をしてはいけないとか、撮影後4ヵ月間は発売できませんとかとか、発売後1年間は、無条件で契約を解除することができますという箇所ですね。この法律ができたおかげで、ルールを無視した勧誘や、私のように、結果、インチキされたという被害は…ゼロにはならないと思いますが、かなり少なくなると思います。

――えっ!? 川上さんも被害にあったんですか?

いや…あの…私の場合は、興味があって、半分以上、自ら飛び込んだようなものなんですけど…スカウトマンから、事務所を紹介するために動画を撮らなきゃいけないからと言われて…。

――OKしてしまった?

業界独自のルールづくり

…そう…なんですよ。それが業界のルールだからとか、なんとか言われて。あぁ、そういうものなのかと思って(苦笑)。結果、いい事務所を紹介していただけたので、結果オーライではあるんですけど、スカウトマンが、その映像をこっそりどこかに売ったみたいで。ファンの方から、「あの映像、川上さんですよね?」と言われて、初めて気がついたという、バカですよね(笑)。

――そういう被害は、確かに減りそうです。

はい。知らずに騙されそうになった子は、このルールで守られると思います。撮影後に取り下げた場合、受け取ったギャラに法定利息を加えて返金しないといけないとか、そういう問題はありますけど、それでもある部分では守られます。
ただ、そうなると、今、トップを走っている女の子や、ベテランと呼ばれる人たちは、みなさん、困ったことになって。6月23日以降に契約を交わした場合、年齢に関係なく、発売するまでに最低でも5ヵ月…宣伝期間を入れると、6〜7ヵ月は必要になるので、みなさん、法律の施行前に、急いで契約を交わしていたみたいです。私も含めてですが(笑)

――他にも、影響はありますか。

あるメーカーさんは、契約のトラブルを防ぐために、毎回、女優さんが契約書を声に出して読むのを映像に残すようにしているんですけど…これからは、どうするんだろう? とは思いましたね。

――新法ができる以前から、そういうルールがあったんですか?

5年くらい前、アイドルプロダクションだと思って入ったのに、無理矢理、AVに出演させられたという事件が起こったのを契機に、AV女優の人権を守り、契約問題や、肖像権、パブリシティ権、2次使用に関する権利など、あらゆることに関して相談に乗ってくれるAVAN(アバン)という任意団体が誕生して。それが出来たことで、業界独自のルールが作られるようになったんです。

――声を出して契約書を読み、それの映像を残しておくのも、そのひとつですか?

メーカーさんによって、黙読でもいいとか、多少の差異はありますが、強要されて署名しているわけではありませんという映像を、毎回、必ず撮りますね。少なくとも、私がお世話になっているメーカーさんは、100%すべて記録を残しています。私が、森野雫の名前でデビューした2004年と比べると、雲泥の差です。

デジタルタトゥー問題

――デビュー当時は、ルールがゆるかった?

ゆるゆるでした(笑)。契約書はなく、ギャラは当日、現金渡し。受け取りのサインもしていなかったような記憶があります。その頃に比べると、4年前、アバンが出来てからは、契約書にきちんと金額が記入されていて、キスの回数や、絡みの回数までしっかりと明記されていますから、天と地ほどの差があります。ただ……。

――ただ?

それでもゆるい部分は残っていて。中には、契約書に金額を入れるのを忘れていたりということもあって。「テキトーに書いておいて」「わかりました。じゃぁ、1000万円って書いておきますね」「書くのは自由だけど、後で、ちゃんと金額の入った契約書にもう一回、サインをもらうことになるけどね、はははっ」とか。そういう、ある種、ゆるいというか、牧歌的な会話が交わされていたんですけど、法律ができたことで、これからは、そういうこともなくなるんだろうなと思うと、ちょっと、寂しい感じもします。

――性病検査も義務付けられていると伺いましたが。

性病検査は、アバンが出来る前からありました。2006年くらいだったかな。最初は5項目…梅毒、HIV、淋病、クラミアジアに、B型肝炎。それから徐々に増えていって、現在は、咽頭淋菌、咽頭クラミジア、ヘルペス、コンジローマを咥えた9項目を撮影の1カ月以内に検査をして、その証明書をそれぞれ確認した上で、撮影に入るというのが、ルールになっています。

――安全性で言えば、パパ活している子たちより、よほど安全ですね。

だと思います。思いますけど……。

――他にも何か?

メーカーさんが持っている映像に関しては、引退後、ある期間を経たら…結婚を機にとか、子供ができたことを機にとか、弁護士さんに相談して、映像を取り下げてもらうこともできるようになったんですが、違法コピーに関しては、どーにもならないみたいで。一度、出た映像は、デジタルタトゥーと呼ばれているように取り消すことが難しい。個人的には、これを解決してほしいと思っています。

――AV女優になって、マイナスを感じたこと、プラスに思えたこと、これからやってみたいことを教えてください。

マイナスは、皆さんの想像通りです(笑)。実際ないこと、ないこと(笑)、いっぱい言われて、嫌な思いをしてきましたから。プラスは、こんな私でも応援してくださる方がいるということ。たかがAVですけど、それでも演技…どうしたら皆さんが喜んでくれるか!? どうしたらリアルを感じてもらえるか? 一生懸命考えての結果、賞をいただき、応援してくれた皆さんと一緒に喜べたことです。それは、それだけは胸を張って言うことができます。

――これから、やってみたいことは?

4年前、東京・新宿3丁目で、小さなラウンジバーを始めたんですけど、いつか…いつかもう、川上ゆうはいらないと皆さんに言われた時に、このラウンジバーの他にもう一軒、小料理屋さんをやってみたいという夢はあります。昔話をしたり、エロトークをしたり、いつまでも、明るく、楽しく、ですね。

ラウンジバー・ラビリンス
東京都新宿区歌舞伎町2-13-6メトロプラザ1ビル3F
HP http://www.labyrinth.tokyo/
TEL 03-6457-6180
Mail:info@labyrinth.tokyo
営業時間:17時~24時
※各キャストにより営業時間が異なる場合があります。
詳しくはHPのスケジュールにてご確認ください。


撮影/中村功 取材・文/工藤晋

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