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描かれる世界はまさに現代!? 今こそリアルに共感できる『トゥルーマン・ショー』

集英社オンライン / 2022年7月16日 10時1分

本業の落語のみならず、映画や音楽など幅広いカルチャーに造詣が深い21歳の落語家・桂枝之進。自身が生まれる前に公開された2001年以前の作品を“クラシック映画”と位置づけ、Z世代の視点で新たな魅力を掘り起こす。

何度もリピートした『トゥルーマン・ショー』

駅前のレンタルビデオショップでクラシック映画の魅力にハマり、「名前は聞いたことがあるけど見たことはない」作品の数々をレンタルしていた中学生時代。
その中でも複数回リピートした作品のひとつが『トゥルーマン・ショー』(1998)だ。

小さな島の保険会社で働くトゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)。生まれたときから生活のすべてをリアリティ番組「トゥルーマン・ショー」として世界中に生放送されている。


家も友達も生きる世界すべてがセットの中。
そのことに気づいたトゥルーマンが、自分の足で外の世界へ向かっていくというストーリーだ。

『トゥルーマン・ショー』でジム・キャリーはゴールデン・グローブ主演男優賞を受賞した
Chris Haston-NBC/ロイター/アフロ

撮影当時、ジム・キャリーは人気絶頂のさなかで、初のコメディ作品以外での主演だった。かつ、予算の限られた中でのオファーだったが、プロットを読んだジムが「最も優れた脚本」と称えて出演を決めたという。

シンプルな設定ながら伏線を上手く絡める脚本の面白さはもちろん、ジム・キャリーのアニメチックな顔芸やウィットに富んだキャラクターが、要所要所で緩衝材のようにはたらき、終始明るい気持ちで見ることができる。
疲れたときに見ると元気をもらえる作品ランキングがあったら、代表格になるような存在だ。

劇中のSF的設定が現実に近づいてきている

ジム・キャリー演じる主人公が住む世界は、巨大なセットという設定
Album/アフロ

この映画は、1992年にアメリカで放送開始されたリアリティ番組『リアル・ワールド』をはじめとした、90年代に世界各国を席巻したリアリティショー・ブームをシニカルにとらえて作られている。30年以上経った現在もなお、若者世代の間では恋愛リアリティ番組が人気を博しているし、一般人がSNS上に日常を切り貼りしていたりする。実は『トゥルーマン・ショー』は、今の時代にあってこそより深く共感できるテーマなのかもしれない。

トゥルーマンの暮らす島「シーヘブン」の人々はトゥルーマンを除いてみんなが俳優。生活にまつわるものがさりげなく(ときに大袈裟に)宣伝されており、番組の通販サイトから買うことができるという設定。これもまた、SNSを使った広告などを数多く目にする現代社会を、見透かしているような感覚になる。

実際に『トゥルーマン・ショー』よろしく、番組の中に広告を馴染ませるプロダクトプレイスメントや、アドフュージョンと呼ばれる広告手法は、映画やドラマの中で多く取り入れられているし、6月から配信されているドラマ『30禁 それは30歳未満お断りの恋。』(FOD)では、劇中のシーンに企業のポスターなどを合成するサービスが始動している。

作品の中で描かれているSF的な世界が、どこまで現実に近づいているのか確認作業ができるのも、クラシック映画ならではの楽しみ方。
みなさんも過去作から現代に繋がる「答え合わせ」をしてみては?

『トゥルーマン・ショー』(1998)The Truman Show 上映時間1時間43分/アメリカ

トゥルーマン(ジム・キャリー)は、保険会社の平凡なセールスマン。ある日、空からライトが落ちてきたのをきっかけに、自分を取り巻く世界の異常さに気づき始める。実はトゥルーマンが住む街は巨大なセットで、周囲の人間たちはすべて俳優。生まれたときから彼の人生はテレビ番組「トゥルーマン・ショー」として放送されていた。名匠ピーター・ウィアー監督が、現代社会へ警鐘を鳴らしながら、人間性について描き出したヒューマン・コメディ。

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