「スタートが改善されましたね。リアクションタイムが予選で2番目、全体で7番目の速さでした」
第18回世界陸上競技選手権大会権オレゴン大会の3日目に行われた、男子100m決勝。歴史的な7番入賞を果たしたサニブラウン・ハキーム選手について、東京大学特任研究員・東大陸上運動部コーチの竹井尚也さんは、そう評した。
「リアクションタイム」とは、スタートの反応の速さを表すもので、スターティングブロックに埋め込まれた圧力センサーによって算出される。スプリント種目においてスタートの出来は勝敗に直結する。ではスタート技術の向上には、どのような練習法があるのだろうか。
「サニブラウン選手がどのような練習をしたかは分かりません。ただし、スタートの改善は『慣れ』によるものが大きいと言われています。スタート合図の後、選手の体内で運動指令が脊髄・抹消神経を通過するのですが、神経伝達の速度には限界があります。練習をいくら重ねても、一定の速度以上は速くならないので、それを維持することが重要になります」