1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. スポーツ
  4. スポーツ総合

女子ゴルフの熾烈なシード権争いが生む「選手の劣化」。タケ小山の提言とは?

集英社オンライン / 2022年7月21日 15時1分

7月21日開幕の「大東建託・いい部屋ネットレディス」から、ゴルフの国内女子ツアー後半戦がスタート。それに先立って行われたリランキングの結果や意味について、プロゴルファーで解説者のタケ小山氏に聞いた。

第13戦「リゾートトラストレディス」にて。左から3番目の辻梨恵はリランキングで順位を大きく上げた 写真/Getty Images

リランキング制度の意義とは?

3月の「ダイキンオーキッドレディストーナメント」から始まった2022年の国内女子ツアー全38戦。7月10日には前半戦最後の第19戦「ニッポンハムレディスクラシック」を終え、その時点の獲得ポイントでリランキングが行われた。

前半戦は、2001年度生まれの“新世紀世代”である西郷真央が昨シーズンのシルバーコレクターから見事に脱却し、11戦5勝と脅威の成績を残した。同じく新世紀世代の山下美夢有も国内メジャーを含む2勝、ミレニアム世代(2000年度生まれ)の西村優菜も2勝、黄金世代(1998年度生まれ)では高橋彩華、植竹希望が初勝利を挙げ、小祝さくらも勝った。ベテラン上田桃子も貫禄の勝利を見せるなど、相変わらずの活況を呈している。



ところでリランキング制度とは?

日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のホームページによると、「シーズンの途中に、シード選手及び当該年度優勝基づき出場資格を付与する」(一部省略)となっている。要するに、今シーズンのここまでの試合で、シード権を保持しない選手の中から成績の良い順に出場優先権を与える仕組みである。

プロゴルファーでゴルフ解説者のタケ小山氏はこの制度について次のように語る。

「リランキングはやるべきです。リランキングの意義は、シード圏外で今一番調子の良い選手を出場させることなんですね。毎年3月に始まる女子ツアーのQT(クオリファイングトーナメント、※予選会)は前年の秋から冬にかけて行われます。つまり、開幕戦の3ヶ月以上前の試合の結果で出場権が決まってるんです。これでは開幕の時点で本当に旬の選手が選ばれているとは言いがたい。調子の良い選手がたくさん出場することは、そのフィールドのレベルアップにもなりますから」

タケ小山氏

さらに、こう続ける。

「日本女子ツアーの人気は絶好調で年間の試合数が増えました。現状の38試合から来年は40試合になるかもしれません。それに伴って賞金総額も45億円を超えた。2020〜2021年の賞金シード(※年間の賞金ランキングで上位に入ると得られるシード権)の下限は3000万円を超えています。まぁ、昨シーズンは(コロナ禍で)足掛け2年と異例の長期だったので例外ですが、その前のシーズンでも2000万円くらいでした。これで試合数と賞金総額が増えると3000万円くらいになるかもしれない。そのこと自体はすごくいいことなんですが……」

リランキングを増やすメリット

小山氏は話しながら、少し困惑の表情を浮かべた。女子ツアーが隆盛を極めて試合数、賞金総額、注目度などのすべてが向上するのは、何も困ることはないように思えるのだが……。

「仮に賞金シードの下限が3000万円だったとします。それで例えば、ある年はシード選手で2900万円稼いだとします。立派な収入ですよね。でも3000万円に届かずに翌年のシードは得られなかった。しかもQTにも失敗した。そうすると翌年は試合に出られず、全く稼げない。これでは選手たちは困るわけです。税金が払えない。シード下限の賞金額が上がれば上がるほど、この傾向は強くなります」

2022年からシード権争いは獲得賞金ではなく、試合(海外メジャーも含む)ごとに設定されたメルセデス・ポイントの獲得数で競うので、厳密には「シード下限の賞金額」は存在しない。しかし、前半戦19試合の獲得賞金額のランキングとメルセデス・ポイントの獲得数ランキングは、ほぼイコールである。

2022年の日本女子ツアーは全38試合。前半戦終了後の第1回リランキングに続き、今年は9月末の第29戦「ミヤギテレビ杯 ダンロップ女子オープン」終了時点で第2回リランキングが行われる。タケ小山氏は複数回のリランキングについてはこう評価する。

「とてもいいことだと思います。出場優先順位の低い選手は少ないチャンスをモノにするために必死になって仕上げてきます。試合に出られないので、時間はありますから。調子を上げて良い結果が残せれば次の出場機会につながっていく。QTでたまたま実力を発揮できなかった有力選手にとってはリベンジの機会が増えるわけだし、発展途上の若手選手にとっては、のし上がっていくチャンス。もっと広い意味で言えば、人材発掘の取り組みとも言えると思いますよ。リランキングをもう一回、つまり、シーズンを4分割して3回やればもっといいのに」

金田久美子はQTでは87位だが、ランキングで18位に 写真/Getty Images

熾烈なシード権争いが生む「選手の劣化」

たしかにリランキングの回数を増やせば、いいことばかりのように思える。第1回のリランキングリストを見てみると、30位以内に入った選手のほとんどは、今季ここまでフル参戦している。出場権があるのだから出場するのは当然なのでは、と思うのだが必ずしもそうではないらしい。

「金田久美子選手、辻梨恵選手は、昨年のQTではそれぞれ87位、157位と奮いませんでした。なので、ここまで19戦のうち2人とも8戦しか出場していません。『出場していません』というより、出られなかったんです。でも実力者だから少ない試合数でポイントを稼げたので第2回リランキングまでの10試合は、まず間違いなく出場できます。2人ともシード権がほしいから少々無理をしても出続けるはずです。僕はここに問題があると思っているんです。

結論から言ってしまえば、シード選手をもっと増やすべきなんです。現在の50位までを60位までに変えるとか、あるいはステップアップツアー(※下部ツアー)との連携を図るとか。例えば、アメリカの女子ツアーは日本より試合数は少ないけど、シード選手は90人。なぜシード選手を増やすことが必要なのか? そうしないと選手は休めなくなってしまうんです。選手はシードが確定するまでとにかく試合に出続ける。不安だから。そうすると、選手の劣化が起きるんです。故障とかね。そして選手寿命も短くなってしまいかねない。それはよろしくない」

現在の女子ツアーの1試合あたりの出場選手は多くが108〜120人、最大級でも144人だ。その内訳はシード選手(準シード含む)55人、残りを主催者推薦、予選会通過者、過去の優勝者などで埋めていき、残りをリランキングリストの上位者から出場権を付与している。秋が深まってくると、日照時間の関係でトーナメントの出場人数は減少して100人以下になる。やはりプロである以上、試合に出なければしかたないので、シード権獲得に躍起になるのはよく理解できる。

「1試合ごとの出場選手数が増えて、シード枠も拡大して、リランキングも複数回実施する。そうなったら日本女子ツアーはもっとレベルアップして、もっともっと盛り上がると思いますよ」

確かに、タケ小山氏の指摘通りなのかもしれない。

取材・文/志沢 篤

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください