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目が離せない米国の利上げとリセッションの行方、日本株で有望な投資先は?

集英社オンライン / 2022年7月29日 11時1分

ウクライナ問題や世界的なインフレ、株価の暴落など、あたかも現在の経済状況を予測したような内容が評判を呼んでいる書籍『エブリシング・バブルの崩壊』(2022年3月発売)。著者であるエコノミストのエミン・ユルマズ氏が、今後のアメリカの利上げと景気の状況、さらには投資すべき日本株について鋭く指摘する。

まだバブル崩壊の初期段階

――7月にもFRBの0.75%の利上げがありましたが、9月以降も利上げのペースは変わらないのでしょうか?

6月のFOMCで政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の現状の誘導目標が0.75ポイント引き上げられ、FF金利は1.5~1.75%になりました。さらに7月のFOMCでは0.75%の利上げが行われ、FF金利は2.25~2.5%に上がり、2%台になりました。



そして注目の9月のFOMCを迎えるわけですが、私は9月には利上げの幅を0.5%に戻すのではないかと予測しています。リセッションの懸念が強まっているからです。

――株の下落の動きは、政策金利が上がるたびにガクン、ガクンという感じで落ちていくのでしょうか?

先に申し上げたとおり、全体としてはまだまだバブル崩壊の初期段階なのです。このグラフが下げ相場のパターンなのですね。下がった株価が戻ったとしても、次の高値が前の高値が前の高値より低い。そして次の安値が前の安値より低い。「Lower high、Lower low」のパターンです。

資料提供/複眼経済塾・Trading Viewより作成

最悪のケースはこれから2~3年、このパターンが続くことでしょう。2000年のITバブルの崩壊のときのように、長期にわたって空気が抜けるように株価が下落していくのならば、これはきわめて厄介なことになるのです。

たとえばコロナショックのときのように、2週間で株が猛烈に下がっても、その後すぐに持ち直す。これならば何とかくいとめられるのですが、今回はそうはならないと私は捉えています。

なぜでしょうか。そもそもバブルとは、資本の配置の非効率性(税・補助金、労働市場におけるミスマッチ、金融市場の不完全性などの歪みにより、資源配分は非効率的となり、生産の損失が生じること)が要因となっているわけです。よって、非効率性が是正されるまでには、バブルが大きければ大きいほど、持ち直しには時間がかかります。

もっともハイリスクなのは暗号資産

さらにバブル崩壊時には、リスクの高いものからお金が抜けていく。「エブリシング・バブル」が崩壊するなかで、もっともハイリスクなのは仮想通貨なので、その市場からお金が抜けていき、ご存じのようにビットコインの値段は昨年11月の最高値より7割以下に暴落しています。

自著のなかで紹介したステーブルコイン(法定通貨との固定した交換レートを持つなど、安定した価格を実現するように設計された通貨)のなかで、テラとシスターコインのルナが崩壊しました。トータルで7兆円(時価総額)が消滅したと言われています。

資料提供/複眼経済塾・Trading Viewより作成

そもそも金融の世界の流動性が乏しくなってきているから、ハイリスクとされる仮想通貨からお金が逃げていく(つまり現金性=通貨の換金性がなくなっていく)のは、当然といえば当然なのです。

このような状況下においては、投機的なものからお金は逃げていくわけです。まずは仮想通貨で、その次は個人投資家を中心にSNSなどで爆発的な人気を呼んだミーム株(新興企業の株)です。

その代表は、いわゆるキラキラ銘柄を集めたアークイノベーションETF(「破壊的イノベーション」をもたらす企業へ投資するという方針で資産運用会社ARK社が作った上場投資信託)で、2021年2月の最高値156.58から下がり続け、2022年の6月21日には40.50となり、ピーク時の4分の1近くにまで下落しています。
大型株も例外ではありません。テスラにしてもピークからいったん半値まで落ちてやや反発したけれど、今後は下落トレンドに入ると見ています。アマゾンもピークから4割近く下落している。

これからはGAFA神話が崩れていき、下落のトリを務めるのが不動産関連株という予測でしょうか。まだまだ下落トレンドは序の口ですから、これからガクン、ガクンと下がっていき、気が付いたら大変なことになっているかもしれません。

FRBが突然、引き締め政策をやめでもしない限りは、そんなパターンになりますね。でも、突然引き締めをやめたら、永遠にインフレは収まらなくなるから、それはできない話でしょう。

日本株は円安の恩恵を受ける産業が狙い目

――日本株に関してはいかがでしょうか? 投資するなら、どんな銘柄に注目すべきでしょうか?

日本株は、円安効果で持ちこたえているのだと見ています。ただドル建てで見ると、下げ方がNYダウと日経平均はほぼ同じなんですね。

しかしながら、昨年よりは少し日本株は底堅くなっている印象はあります。どこまでが円安の影響なのか、どこまでが構造的に日本株が強くなったのかは、現時点では不透明です。

自著『エブリシング・バブルの崩壊』にも、これからリスクの低い投資先として防衛関連株のバリュー株などが最適だと書きました。これらの株価は少しずつ上向いています。詳しくは、是非、本書を見てください。

エミン・ユルマズ氏 撮影/堀田力丸

また鉄鋼や造船などの日本の基盤産業は、ディフェンシブ銘柄であり、インフレには負けないですし、年間3%程度の配当が取れるような株式もあるので探してみましょう。

半導体関連産業については、昨年は完全にバブルテリトリーだったので、割高になっているものには注意してください自著では警鐘を鳴らしました。いまは少し落ち着いてきようですが、まだ一部には割高のものもあります。

円安の恩恵を受ける産業も狙い目でしょう。外国人の訪日が解禁されたことで、これからはインバウンドが急増するでしょうし、日本人は円安で海外が遠ざかる反面、日本国内を旅行する人は増える。その観点から鉄道、空運などへの株式投資は狙い目でしょう。

ただ、かつてのインバウンドのメインは中国の人たちでした。それが少し変わるのではないかと、中国通ジャーナリストが話していました。中国では一般人のパスポートの発行をかなり厳しく絞る政策が取られるようなのです。彼は「これは実質的な鎖国政策だ」と物騒な言葉を使っていましたが、ゼロコロナ政策の一環とも考えられます。

これからは、インバウンドよりも、大幅な円安で海外に行けなくなった日本人の需要に期待すべきでしょう。日本人による日本国内旅行の〝深掘り〟が始まるのです。なかでも目玉は沖縄かなと、個人的には思っています。

先般、大阪出張の折、道頓堀に出かけてみてびっくりしました。いつも込み合っている場所なのですが、今回はなんだかお祭りのような様相で、アーケード街の盛り上がりは半端ではなかった。とりわけ若い世代の人たちが多かったですね。

そんな光景を眺めながら、ここ2年間抑え込まれたうっぷんを晴らすかのように、外食産業を含めて国内消費が伸びる可能性があると感じました。

人間はいったんデフレマインドからインフレマインドに変わると、お金を貯めるよりも使いたくなるものです。なぜなら、インフレになると今日買ったモノが明日同じ値段で買えないかもしれないからです。ここまで円安が進んでくると、その影響は大きいはずです。

聞き手/加藤 鉱(作家・ジャーナリスト) 写真/shutterstock

エブリシング・バブルの崩壊

エミン・ユルマズ

2022年3月25日発売

1,760円(税込)

四六判/256ページ

ISBN:

978-4-08-786135-8

コロナ禍で空前の金融緩和が行われて3年。インフレ懸念、利上げの必要性を叫ばれてきたが、いよいよ2022年は、FRB(米国の連邦準備理事会)の方針大転換で、3月から利上げが始まり、世界経済のフェーズが変わる。
米国のインフレ率は、2022年1月で前年比8.6%に達し、食料や生活用品が値上げされているばかりか、賃金も上昇している。
しかし日本では、思うように賃金が上がらず、物価の上昇だけが先行する不況下のインフレ、すなわちスタグフレーションが懸念されている。
また米国が撤兵したアフガニスタンの混乱や、ウクライナへのロシア侵攻の懸念など、地政学リスクが増大することによって、原油や天然ガス、小麦などのコモディティ価格が上昇し、ますます世界のインフレに拍車をかける状況となった。
一方、世界経済の牽引車だった中国は、恒大集団の実質的な破綻など不動産バブルの崩壊がささやかれ、景気の後退が懸念されている。
こうした様々な世界経済のほころびが明らかになった2022年、上昇しすぎた世界の株式市場や不動産市場はどうなるのか?
今後の世界経済はどのように展開していくのか?
すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。
さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。
投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。

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