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昭和からここまで進化! 令和の「インクルーシブ公園」がみんなに優しすぎる

集英社オンライン / 2022年7月28日 12時1分

先日、たまたま訪れた公園で我が子を遊ばせようとしたところ、昭和生まれの筆者が子どものころにはなかった、まったく新しいいくつもの遊具に遭遇。「インクルーシブ公園」と呼ばれる公園らしく、この令和の時代に増えてきていることを知った。昭和の時代から公園はどんな風に様変わりしたのか、令和と昭和の公園・遊具を比較した。

ただのカラフルな遊具と思ったら…?

筆者が行ったのは、東京都にある「府中の森公園」。府中の森芸術劇場に隣接し、園内には有料スポーツ施設やバーベキュー広場・売店などもある、17ヘクタールほどの都市公園だ。

子ども向けの遊具があるエリアは、園内にある「もり公園にじいろひろば」。

インクルーシブなエリア「もり公園にじいろひろば」


広場内は2つのエリアに分かれている。各遊具の設置間隔が広めに取られていて、実際の敷地面積よりも広々とした体感だ。第一印象は「カラフルでかわいい!」。自分が子どものときもこんな公園や遊具があったら、きっとワクワクしただろう。


さすが令和の時代、遊具もずいぶんおしゃれになったものだなと思っていたら、広場内にこのような表記を発見。どうやら、普通の公園とは何かが違うらしい。

インクルーシブ公園は2020年頃から日本各地に増えているそう

調べてみたところこの広場は、障がいを持つ子どもや外国籍の子どもなども含め、すべての子どもが等しく楽しめることを目的とした「インクルーシブ公園」として、2021年3月にリニューアルオープンしたという。

自分の子ども時代には、まず見かけることがなかった公園。一体どんな遊具があるのか、さっそく園内を回ってみることにした。

昭和時代にはなかった令和の遊具

インクルーシブ遊具「アドベンチャーキャッスル」

たとえばこの「アドベンチャーキャッスル」は、傾斜が低くスロープ状になっており、車椅子に乗ったままでも上まで登れる仕組みなのだそう。昔からアスレチックタイプの遊具などはあったが、こういったタイプははじめて見る。

幅が広く取られロープの強度もしっかりあるため、車椅子でも楽しめる

発想力が刺激されそうな「あみあみピラミッド」

この「あみあみピラミッド」は、登ったり跳びはねたりと、アイデア次第でいろんな遊び方ができる。網目が細くないため、遊んでいて指を引っかける心配が少ない。

ヨチヨチ歩きの子も楽しめる「モリのバケツパネル」

この「モリのバケツパネル」は、三色の取っ手を動かしたり、取っ手の中のバケツに砂を入れたりできる。ヨチヨチ歩きの子どもでも楽しめそうだ。

「定番遊具」もインクルーシブに!

いわゆる「定番の遊具」も、インクルーシブ公園では従来の姿とまったく異なっていた。

安全バーと背もたれがついたブランコ

公園の定番・ブランコも、ご覧の通り。「スーパーハイパーブランコ」は、安全バーと背もたれがついたブランコで、ほかに、複数人で乗ったり寝そべったりした状態でも乗れる皿型ブランコが設置されている。

少し大きくなった子にも楽しい皿型ブランコ

安全バーと背もたれがあるブランコは、たとえば自分で身体を支えることが困難な子、まだ一人ではブランコに乗れない年齢の子でも遊べる。また、遊具の遊び方の理解が難しい子でも、乗せて大人が後ろから押してあげれば問題なく楽しめて、落下の危険も少ない。

皿型ブランコは、たとえば上に立って両端のチェーンを持って漕ぐなど、多少ダイナミックに遊んでも大丈夫。もちろん、立つことが難しい子は仰向けの体勢のまま乗れる。ある程度の年齢になると、遊びにも多少のスリルやスピード感を求めるようになってくるが、これならやんちゃな子どもたちも大満足だ。

バギーや車椅子に乗ったままでも遊べる砂場

砂場だって、こんなにおしゃれに様変わりしていた!

「おはなテーブル」と呼ばれるこの砂場は、なんとテーブル状。立ったままでも、バギーや車椅子に座ったままでも遊べるようになっている。床の部分も通常の砂場になっているため、どのポジションでも好きなように砂場遊びができる。

安定感抜群の令和版シーソー

この「バネバネバランス」は、いわゆるシーソーのような遊具。しっかり握れるバーがあるほか、太いバネが設置されているため、通常のシーソーのようにいきなり高く跳ね上がったり、弾みで落ちたりしてしまうことはほとんどない。子どもひとりで乗っても安定感がある。

従来の遊具のイメージを軽々と覆すインクルーシブ公園、恐るべし。小さい頃からこういった遊具で遊んでいれば、柔軟な発想力や思考力も育まれそうだ。

令和の公園は、親にも優しかった

遊具以外に、親として嬉しかったのが「大人も過ごしやすい空間」でもあること。たとえば、広場内にはベンチやテーブルなどの数が多く、かつスペースが広めに取られている。

令和の公園は親も含めた全ての人に優しくなっていた

子どもの公園遊びは、付き添う親にとっては正直疲れることも多いのが本音。いくら我が子のためといえど、有り余る体力にずっとついていくのはなかなかに大変で、「もう帰りたい…」と思ってしまうこともある。

だが、休憩スペースが多くあれば、遊ぶ子どもを座ってゆったり見守ることも可能。長時間の滞在になることも多い公園遊びで休息できるのは、非常にありがたいと感じた。

スリリングだった昭和の公園

珍しい仕掛けやカラフルな色合いの遊具ばかりだったこともあり、大人でも終始飽きることはなかった。「この遊具はどうなっているんだろう?」と触れてみたり、思わず童心に帰って自分も遊んでみたりして楽しく過ごせた。

偶然インクルーシブ公園を体験してみて、ふと「自分が子どものときの公園ってどんな感じだったっけ…?」という疑問が。

そこで、昭和時代の公園や遊具について調べてみた。

昔の公園で一般的だったのが、椅子ブランコや回転ジャングルジム、回転塔、吊り輪など。どちらかというと「スリリングな遊具」だ。一定以上の年齢の読者ならば、子どもの頃に遊んだ記憶がある人も多いのではないだろうか。

いつの間にか見かけなくなった椅子ブランコ(一般社団法人 日本公園施設業協会 提供)

今思うと危険に見える波動回転椅子や波動回転塔(一般社団法人 日本公園施設業協会 提供)

30代の筆者が公園遊びをしていた頃はすでに平成だったが、「回転ジャングルジム」「吊り輪」などはまだ比較的公園にあった気がする。友達同士で回し合って目が回ったり、吊り輪にどれだけつかまっていられるかを競い合ったりもしていた。

楽しかった反面、公園で遊んでいてケガをすることも多かった。小学校のときには遊具の高いところから落ち、乳歯が欠けてしまった記憶もある。また、一歩間違えば大ケガにつながりかねないような遊び方もしていた気がする。

さらに調べていくと、規制がまだ厳しくなかった昭和40年〜50年ごろは、かなりユニークかつ「危ない」公園・遊具もたくさんあったようだ。

吊り橋の遊具。落下防止対策はなされていない(一般社団法人 日本公園施設業協会 提供)

立体迷路。よじ登る子ども達の姿にヒヤッとする(一般社団法人 日本公園施設業協会 提供)

ステンレス製すべり台を大幅改造した遊具も(一般社団法人 日本公園施設業協会 提供)

今回資料をご提供いただいたのは、遊具の企画開発・施工等を行う株式会社丸山製作所の代表取締役社長で、一般社団法人日本公園施設業協会の副会長・規準委員長・東京支部長を務める丸山智正さん。丸山さんは、まさしくこういった昭和の公園で遊んでいた世代だという。

「当時の遊具は、現在の観点からいうと安全規準的にNGなものもありますが、『なんでもやってみよう』という自由な発想や、子どもたちのエネルギーが強く感じられました。昭和の時代の遊具の特徴として、一品生産のものも多かった。いわゆる『工業製品』というよりも、遊具そのものがひとつの『作品』として扱われる傾向がありました」(丸山さん)

インクルーシブ公園は現代の「理想形」

残念ながら、昭和の風景には当たり前にあった公園や遊具は、現代ではほとんど見かけることはなくなっている。

国土交通省「都市公園等における遊具等の設置状況・安全点検実施状況(令和元年度末時点)」によると、都市公園における遊具の設置数は、いわゆる一般的なブランコである「踏み板式ブランコ」が54,384基、「すべりだい」が50,992基なのに対し、箱型ブランコは2,200基、回転塔は1,457基、吊り輪は139基とかなり少ない。

昔ながらの遊具が公園から姿を消した理由は主に、遊具による重大な事故発生の防止や老朽化など、安全性を重視したことによるものが大きいのだそう。

昭和の遊具が姿を消してしまったこと自体は寂しく、残念だ。しかし今回、令和の「インクルーシブ公園」を体験して感じたことは、確かに安全面への配慮がなされているが、物足りないわけでは決してなく、むしろ興味深く遊べる遊具ばかりだったということ。

昭和時代の公園と内容は大きく変化しても、「遊具の楽しさ・おもしろさ」自体は変わっていない。

すべての子どもが安心して楽しむことができ、細部にまでこだわっていて、種類も遊び方も多様。デザイン性も高くハイセンス。令和のインクルーシブ公園は、遊具の「理想形」ではないかと感じた。

画像提供/一般社団法人 日本公園施設業協会(昭和の公園、遊具)

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