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生産台数は1日10台。新興メーカーaidea社が描くEVバイクの未来

集英社オンライン / 2022年7月28日 13時1分

4大オートバイメーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)がしのぎを削る中、「第5のメーカー誕生!!」と話題になっているのが、国内唯一のEVバイク専門メーカーのaidea(アイディア)社。その大望に迫った。

日本第5のメーカーになることが目的ではない

エンジンバイクではなくEVバイクで、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキに続き、日本の4大オートバイメーカーの一角に加わろうとしているのがaidea社だ。普段はマーケティングディレクターを務める成田裕一郎さんに、社を代表して、臆することなく新規参入した理由を語っていただいた。

──会社の創業はいつですか?

aidea社は2019年東京モーターショーで誕生しました。



──「第5のメーカー誕生!!」と話題になっていますが、そもそもバイク製造の経験がなく、イタリアのバイクメーカー(アディバ社)を買収したとか……

はい、その通りです。新規参入組なので、会社を買収することで、バイク作りのノウハウを引き継ぎ、いずれ商用EVバイクに転用したいと計画していました。

現在は、本社を日本に置き、イタリアでデザインしたものを、相模原の工場で生産しています。2015年買収交渉から計算すると、思い立って、わずか5年で自社製EVバイク発売までこぎつけました。

──わずか5年ということは、EVバイクを作るのって、意外と簡単だったりするんですか?

確かに、EVバイクを構成する部品点数はガソリン車の半分で、液体類はブレーキオイルのみ、排気ガスを出すマフラーもありません。パーツが少ないことで技術者の負担が軽めなのは事実です。

しかし、ガソリンとEVバイクでは構造が異なり、モーターをコントロールする制御コンピューターの調整に苦労させられました。

──やはり、世界に冠たる4大バイクメーカーに食い込みたかったのでしょうか?

それはありませんね(笑)。EVバイクメーカーですが、私たちの目的は、エネルギー問題を解決することなんです。

世界で起こる揉めごとの原因の多くはエネルギーであり、エネルギー問題を解決すれば世界平和になる。そのためには電気を使うのが理にかなっていると考えています。

今回、社を代表してお話をしてくれた成田裕一郎さん。aidea社でマーケティングディレクターを務める

EVバイクが街のいたる所で電池になる社会

──エネルギーとして電気を使っていこうというのは分かりましたが、なぜ、EVバイクを選ばれたんですか?

それは、自動車と比べ小型であることから走行時も駐車時も場所を取らず、軽量であるためエネルギー消費も少ないというメリットがあるからです。

その上、EVバイクならば、二酸化炭素を排出しないし、電力の供給源になり得る可能性も秘めているからです。

──電力の供給源になるとは、どういうことですか?

スマートフォンを充電する際の、ケーブルを使わない、置くだけの最新の充電器を想像してください。それと同じことが、近い将来、車やオートバイでも可能になります。

これをワイヤレス充電(非接触充電)と呼んでいます。これができるようになれば、信号待ちで道路に埋められた充電器からバイクに送電したり、バイクのバッテリーから余った電気を放出して、必要な人に供給する側にもなれます。

つまり、EVバイクが“走る電池”となり、“街のあらゆる場所に置かれる電池”にもなれるのです。再生可能エネルギーを今よりもさらに活用することで、移動にかかるエネルギーコストをゼロに近づけることができます。

電動3輪バイク、AAカーゴ ¥899,800(125ccクラス)

安全のため、じっくり丁寧に作る!

──ところで、「第5のメーカー誕生」と言われるきっかけとなった型式認定(安全性に対する国の保証)の取得ですが、未取得であってもバイクは売ることができます。つまり、商売の際、必ずしも型式認定の取得は必要ではないのでは?

我々は新興メーカーなので信用がありません。そんな当社の製品に安心して乗ってもらうためには、国からの安全性のお墨付きである型式認定を取得する必要がありました。

──型式認定を取得するのは大変でしたか?

本当に大変でした。4大メーカーとは違い、当社は専門部署もなければ知識もありません。型式認定取得の申請方法を調べることからはじめ、取得まで約1年かかりましたね。

チェックは何百項目もあって、ブレーキ、ヘッドライトなどパーツごとの性能や安全性のほか、寸法や生産管理の正確性などクリアする必要があります。

書類は電話帳レベルの厚さでした。大変なのは、検査機関が車検のように1ヵ所でまとめられないので、その都度、いろんな場所に行きました。

──売れ行きはどうですか?

おかげさまで、EV三輪バイクのAAカーゴシリーズは、日本マクドナルド、DHLジャパン、ドミノピザ、日本郵政が導入してくれています。契約の関係で実数を出せませんが、工場では1日10台ほど生産しています。

──1日で10台とは、手作りでスーパーカーを作っているような感じですね……

じつは、よくある分業の流れ作業ではなく、ひとりの技術者が1台を最初から最後まで担当し組み上げているんですよ。

このやり方だと、1日10台の製造が限界なので効率は悪いですが、社員ひとりひとりが車体の製作工程を理解し、商品に対する責任感を持つためにやっています。日本に工場を構えたのも、目が届く範囲で自分たちの手で作ろうという考えがありました。

生産拠点である相模原市の工場

まだまだ高いが、数年後には安くなる⁉

──1回の充電でどのくらい走りますか?

型式認定を取得した原付二種のAAカーゴベータ8は、航続距離は149km。リチウムイオン電池の登場で、車両重量が軽くなり、走行距離もかなり延びました。

同じクラスのガソリン車であれば、ガソリン満タンで航続距離が300km弱なのでまだまだ追い越せる状態ではありませんが、遠出しない日常使いで考えれば充分なスペックです。例えば、新宿駅から八王子駅まで一般道路で37.3kmぐらいですから。

──EVバイクのラインナップや価格は?

現在はバッテリーの容量違いで原付一種(排気量50cc以下に相当するクラス)・原付二種(排気量125cc以下に相当するクラス)で全4車種を展開しています。

主力商品の三輪電動バイクのAAカーゴは、最低でも80万円を超えるので、なかなか手を出しづらいですが、数年後には、バッテリーの価格が下がり、もっとお手ごろな価格に落ち着くと思います。

また、今であれば、国や東京都のEVバイク導入に対する補助金が申請できます。
国の補助額の上限は、原付一種が6万円、原付二種が12万円となっています。

東京都の補助額は、ガソリン車両とのEV車両の価格差から、国の補助金を除いた額(上限18万円または48万円)です。つまり、ガソリン車両とのEV車両の価格差をなくしてくれます(詳細はHPをご確認ください)。

──最後に、今後の展望を教えてください!

小回りの利き、路地でも走れる小型モビリティーで、流通業界に寄与したいと考えています。現在、運搬専用や自動運転できるバイクや小型自動車を開発中です。少しでも小型モビリティーに興味をお持ちのみなさま、ご期待ください。

今回、お話を伺った成田裕一郎さん。相模原市の工場にて

取材・文/Naviee

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