7月16日(金)東京ガーデンシアターにて、ある男の遺志を受け継ぐ者たちが集い、開催された一夜限りのロックフェスティバル「イノマーロックフェスティバル」。
この日の「主役」であるイノマーは、2019年12月に口腔底がんのため53歳で亡くなった。
大学卒業後、オリコンに入社したイノマー、本名猪股昌也は、29歳で『オリコン・ウィーク The Ichiban』編集長に就任。編集者として活動する傍ら、1999年にパンクバンド「オナニーマシーン」を結成。思春期男子の性欲をストレートに歌詞に盛り込んだ「性春パンク」を標榜し、その過激なライブパフォーマンスは熱狂的なファンを生んだ。
また、音楽雑誌の編集者として、峯田和伸(GOING STEADY、銀杏BOYZ)や氣志團、サンボマスターなど数多くのミュージシャンをいち早くフックアップしたことでも知られている。ブレイク前の江頭2:50を評価し、連載コラムを任せるなどもした。
そんな中、2018年7月に口腔底がんにより余命3年であることを公表。舌を切除する手術を受けるも、翌19年にがんが再発。その年の10月に豊洲PITで開催された「ティッシュタイム・フェスティバル~大感謝祭~」では、オナニーマシーンのボーカルとしてステージに立ったが、12月19日に帰らぬ人となってしまった。
没後、『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)の取材チームが、イノマーと事実婚関係にあった女性に偶然取材したことから、イノマーの生前の様子などがゴールデンタイムで放送され、これまでイノマーを知らなかった人たちにも大きな反響を呼んだ。さらに、一周忌法要の模様や、イノマーと親交のあった『ハイパーハードボイルドグルメリポート』(朝日新聞出版)で知られる上出遼平プロデューサーが撮り続けたイノマーが亡くなるまでの映像を加えた『家、ついて行ってイイですか?特別編 ステージで命を燃やし尽くした男の物語』が放送されると、2021年1月度のギャラクシー賞月間賞を受賞した。
そんなイノマーの新たな歴史としてカウントされるであろう、『イノマーロックフェスティバル』は昼12時の銀杏BOYZからスタートした。ピーズ、氣志團、Hump Back、ガガガSP、四星球、サンボマスター、空気階段のステージを受け、トリを務めたのはもちろんオナニーマシーンだ。