この4月に出版した『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)が、おかげさまで大きな反響を得ている。Z世代と呼ばれる若年層に比較的多いとされる映像コンテンツの倍速視聴、スキップ視聴、ネタバレ視聴、連続ドラマの話を飛ばす、といった実態を調査・分析した内容だが、彼らが「けしからん」という話をしたかったわけではない。
定額制動画配信サービスによってあふれかえる映像コンテンツの数々、「流行りについていかなければ、同世代から遅れをとってしまう」というSNSが加速させた焦燥感、やたら時短やコスパを求める社会。そういった環境、いうなれば「現代という時代が倍速視聴を生み出した」ことを、本を通じて問題提起したかったのだ。
2021年の民間調査によれば、20〜69歳の約3割、20代の半数近くに倍速視聴の習慣がある。そればかりか、筆者がある大学で行った調査によれば、大学2〜4年生の3人に2人が倍速視聴を、4人に3人がスキップ視聴を日常的に行っていた。彼らは言う。「倍速で観れば1時間でドラマが2本観られる。コスパがいい」と。