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映画館で50回も鑑賞。戸田奈津子が字幕翻訳家を目指すきっかけになった映画

集英社オンライン / 2022年8月12日 13時0分

字幕翻訳者の第一人者・戸田奈津子さんは、学生時代から熱心に劇場通いをしてきた生粋の映画好き。彼女が愛してきたスターの見るべき1本を、長場雄さんの作品付きで紹介する。

50回くらい映画館で見た、映画芸術の全てが詰まった1本

『白夜の決闘』(1946)『ジェニーの肖像』(1947)『旅愁』(1950)など、女学生が好むようなロマンティックなラブロマンスに出演していたジョセフ・コットン。私も当時、かなりお熱を上げていました。彼の出演作を追いかける中で、「字幕翻訳家になろう!」と思うほどハマった極めつけが『第三の男』。

以来、映画館にお金を払って50回くらい見に行きましたし、頭の中にDVDがあるようなもので、今も詳細に思い出すことができます。映画には音楽、キャメラ、ストーリー、俳優、美術などいろんなエレメントがあるでしょ。そのすべてがビシッとハマっていて、1本のもの凄い芸術を作っている。私はそう思いますね。見るたびに胸が震えるの。



日本で公開されたのは、私が16歳だった1952年。撮影時のジョセフ・コットンは44歳だから、ティーンエイジャーからするとしわくちゃのおじさんに見えたんです。それでも素敵だと思えたのは、父を早くに亡くしていたからかな。ゲイリー・クーパーやジョン・ウェインのような二枚目俳優はほかにもいたし、『第三の男』でも共演したオーソン・ウェルズのような天才的なカリスマもいた。それでも私は、ジョセフ・コットンの渋くて知的な雰囲気に惹かれていたのね。

『第三の男』(1949)The Thid Man/上映時間:1時間45分/イギリス

アメリカの売れない西武劇作家ホリー・マーチンス(ジョセフ・コットン)は、親友ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)からの仕事の依頼を受け、ウィーンにやってくる。ところが到着すると、自動車事故により前日にハリーは亡くなったと告げられる。関係者を調べると、現場には謎の“第三の男”がいたことが判明。ホリーは親友の死の真相を突き止めるため、調査を開始する……。「第二次大戦後の廃墟となったウィーンが舞台になっているのですが、雨降って石畳が光っている夜のシーンは、言葉にならないほど美しい。光と影の芸術と言えます」(戸田)

ジョセフ・コットン Joseph Cotten
1905年5月15日生まれ、米ヴァージニア州ピーターズバーグ出身。1930年にブロードウェイデビューし、1936年にオーソン・ウェルズの劇団に参加。その後、映画『市民ケーン』(1941)で映画デビューを果たした。『偉大なるアンバーソン家の人々』(1942)、『恐怖への旅』(1942)、『ガス燈』(1944)など話題作に出演。ジェニファー・ジョーンズと組んだ『白夜の決闘』(1946)『ジェニーの肖像』(1947)『旅愁』(1950)では、二枚目俳優として人気を博した。多くの作品でタッグを組んだオーソン・ウェルズとは、生涯親友として交流があった。1981年、88歳で逝去。

語り/戸田奈津子 アートワーク/長場雄  文/松山梢

心の底から認める、スターの頂点。戸田奈津子のトム・クルーズ評〉へ続く

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