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大ヒットでも『ジョーズ』はスルー!? 映画芸能誌へと舵を切る1976年の「ロードショー」

集英社オンライン / 2022年8月3日 12時1分

アラン・ドロン、ブルース・リー、ロバート・レッドフォードら麗しいスターたちをフィーチャーする一方、大ヒット作でもキャストが地味ならそこまで掘らない? そんな“映画芸能誌”としての方向性がハッキリしてきたのがこの年だ。スルーされた映画とは…

『エマニエル夫人』、ブルース・リーの陰に…

社会現象となった『エマニエル夫人』(1974)ブームは終わらない。前作からちょうど1年後の1975年12月に『続エマニエル夫人』(1975)が公開されたことを受けて、「ロードショー」は「『続エマニエル夫人』徹底特集」(1月号)、「完全保存版『続エマニエル夫人』のすべて!」(2月号)、「『続エマニエル夫人』完全フォト・ストーリー」(3月号)と立て続けに特集を掲載。主演のシルヴィア・クリステルも2度表紙を飾っている。



ブルース・リー人気も健在だ。「『燃えよドラゴン』カラー・リバイバル」(1月号)「独占掲載! リンダ・リー未亡人の手記」(2月号)、「ブルース・リー未発表写真集」(3月号)「ブルース・リー VS キックボクサーの死闘実録」(8月号)、「ブルース・リー追悼大特集」(9月号)「ブルース・リー特集その後の『死亡遊戯』」(10月号)とコンスタントに特集が組まれている。

70年代の「ロードショー」にはアラン・ドロンも欠かせない。「アラン・ドロン豪華カレンダー」(2月号)「コートダジュールのA・ドロン」(6月号)「A・ドロンの原点『太陽がいっぱい』」(8月号)「A・ドロン会見記」(9月号)と、ファンに最新情報を届けつつ、新たなファンの裾野を広げる特集も組んでいる。

ファッションは70年代らしくカラフル。1月号/シルヴィア・クリステル 2月号/ナタリー・ドロン 3月号/キャサリン・ロス 4月号/ジャクリーン・ビセット 5月号/シドニー・ローム 6月号/オリヴィア・ハッセー
©ロードショー1976年/集英社

だが、表紙や特集テーマについては、取り上げられたものより、取り上げられなかったスター、作品に注目したとき、「ロードショー」という雑誌の指向性が見えてくる。
実は、1976年の「ロードショー」がフィーチャーしていない有名映画があるのだ。スティーヴン・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』(1975)である。

スター性重視…「明星」の遺伝子

実は、同作は配給収入50億円でその年の日本公開作のトップに輝いている。これは『タワーリング・インフェルノ』(1974)や『エクソシスト』(1973)を凌ぐ大記録だ。

だが、「ロードショー」は1月号に公開秘話を掲載した以外には、大きな特集はしていない。パニック映画なので掘りさげる余地がほとんどないことに加えて、「ロードショー」の方向性に『ジョーズ』が合致しなかったからだと想像できる。なにしろ『ジョーズ』の主人公はサメ退治に出る3人の平凡なおじさんたちだ。「ロイ・シャイダーの原点」「ロバート・ショウの魅力をさぐる」「リチャード・ドレイファスの休日」といった特集は…組まれることがなかった。

7月号/シルヴィア・クリステル 8月号/オードリー・ヘプバーン 9月号/デボラ・ラフィン 10月号/トレイシー・ハイド※初登場 11月号/シドニー・ローム 12月号/オリヴィア・ハッセー
©ロードショー1976年/集英社

逆に、ハリウッドを代表する美形のロバート・レッドフォードに関しては、『華麗なるヒコーキ野郎』(1975)の公開タイミングということもあって4月号での作品特集のほか、「ドロン、レッドフォードの魅力をさぐる」(1月号)「完全独占インタビュー R・レッドフォード」(10月号)「R・レッドフォードとの3日間」(12月号)とスポットライトを当てている。思えば集英社は1952年創刊の芸能誌「明星」(現Myojo)の版元。アイドルの魅力を伝えるDNAが脈々と息づいているのだろう。

その後「ロードショー」は、『小さな恋のメロディ』(1971)に子役として出演した英女優トレイシー・ハイドを10月号の表紙に初起用。彼女にはほかに代表作がないものの、等身大の愛らしさが受けて、日本では大人気を博すことになる。映画芸能誌の面目躍如といったところだ。

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