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呂布カルマ絶賛。伝説のラッパー殺人事件を描く『L.A.コールドケース』

集英社オンライン / 2022年7月31日 13時1分

8月5日に公開されるジョニー・デップ主演作『L.A.コールドケース』(2018)は、伝説的ラッパー、2パックとノートリアス・B.I.G.が射殺された実際の未解決事件を追ったクライム・サスペンス。劇中で描かれる1990年代のアメリカHIPHOP界の背景を、ラッパーの呂布カルマが解説する。

未解決事件の犯人が、この映画でほぼ判明!?

1996年9月に25歳でこの世を去った2パックと、それからわずか半年後の1997年3月に24歳で亡くなったノートリアス・B.I.G.(以下、ビギー)。人気ラッパーふたりが立て続けに何者かに銃撃された事件は当時、世界中に衝撃を与えたが、現在に至るまで犯人は特定されていない。



対立する所属レーベル同士の報復合戦が招いた悲劇とも噂されているこの事件。呂布カルマ曰く「HIPHOP好きの間では一生語られているようなテーマ」で、実際、ドキュメンタリー映画『ビギー&トゥパック』(2002)など、この事件に主題を置いた作品は多い。

「そういった映画やインターネット上の情報を片っ端から見ましたけど、やっぱりどれも“犯人は謎”みたいな感じで終わっているんです。事件からかなり時間も経っているし、自分自身、この謎はきっと解決されないだろうくらいに思っていました。でもこの映画では、ほぼ犯人がわかっている。そのことがしっかり描かれていることにびっくりしました。未解決の裏には“こういう理由があったんだな”って。アメリカの闇の深さに驚きました」

主人公のラッセル・プールを演じたジョニー・デップ。見つめているのは実際のビギーの写真
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

主演のジョニー・デップが演じるのは、実在したロサンゼルス市警の元刑事ラッセル・プール。97年に発生したビギーの射殺事件から18年経っても、事件の真相をひとりで追い続けている孤高のキャラクターだ。そんなプールのもとを訪ねてくるのが、独自に事件を追っていたフォレスト・ウィテカー演じる記者のジャック・ジャクソン。彼らは一緒に事件究明のために奔走するものの、予想もしない新事実と、呂布も驚いたという想像を超える巨大な闇に直面することになる。

記者のジャック・ジャクソンを演じたのはフォレスト・ウィテカー。モデルになっているのはローリングストーン誌の社内ライターだった作家のランドール・サリヴァン
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

最悪の結末を迎えた東西レーベル同士の抗争

この映画を理解するには、ふたつの出来事を知る必要がある。そのひとつが、1990年代のアメリカHIPHOP界で起きた東西抗争だ。

「HIPHOPには“ビーフ”っていう文化があるんです。対立する相手をディスする楽曲を発表し合って挑発することなんですけど、自分がやっているMCバトルもこれが起源。“俺が地元や街の代表だ”みたいなことを歌うことも多いので、そうすると、どうしても他の地域の悪口を言ったり、他のグループをこき下ろすことになるんですね。邦楽のHIPHOPにもレペゼンっていう用語がありますが(代表する、象徴するという意味の“represent”が由来)、金と女と見栄が絡んでくれば、なおさらその表現は過激になる。結構、やっていることは幼稚なんです(笑)」

こうしたビーフの加熱とともに、1990年代のアメリカでは、2パックが所属する西海岸のデス・ロウ・レコードと、ビギーが所属する東海岸のバッド・ボーイ・レコードが対立した。そもそもふたりは共にNY出身で、元は友人同士。ところが1994年に2パックが何者かに襲われる銃撃事件が起き、バッド・ボーイ・レコードの陰謀ではないかと疑ったことで関係が悪化。さらにデス・ロウ・レコードに2パックが所属したことから、東西レーベル同士の抗争にエスカレートし、最悪の結末を迎えることとなった。

ドキュメンタリー映画『ビギー&トゥパック』より。左からビギー、2パック
Shutterstock/アフロ

「商業的に成功したラッパーふたりが亡くなってしまった出来事によって、ビーフの仕方を見直さなきゃいけないねっていう契機になった事件です。ふたりの曲はいまだにクラブでかかりまくるくらい名曲が多くて、2パックだったら『Me Against the World』のアルバムの中の『Dear Mama』という曲がいいし、ビギーのアルバム『レディ・トゥ・ダイ』の曲はどれもめっちゃ好きっす。それに『ノートリアス・B.I.G.』(2009)とか『オール・アイズ・オン・ミー』(2017)とか、ふたりの伝記映画も作られているので、関連作品を掘るのも面白いかもしれないです。ビギーを演じた俳優がかっこよすぎたり、2パックを演じた俳優が妙に野暮ったかったりするのも含めて、ツッコミどころもあるんですけど(笑)」

ロサンゼルス市警史上最悪の汚職事件が関連

映画を理解する上で需要なもうひとつの出来事が、ロサンゼルス市警史上最悪の汚職事件と呼ばれている「ランパート・スキャンダル」。1998年、ロサンゼルス市警ランパート署のラファエル・ペレズ巡査が、証拠品として保管されているコカインを盗み出したことが発覚。後に行われた裁判で、70人以上の警官が麻薬取引や窃盗、暴力行為、証拠隠滅などの不正行為に関与していたことが発覚した。今もなおその全容はわかっておらず、多くの事件は未解決のまま。ビギーの事件も、実はこれらに深く関わりがあることが『L.A.コールドケース』で描かれている。

作中に登場する汚職警官
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

「映画の中に出てくる汚職警官が“警察も結局、人の集まりだ”みたいな、低いレベルの真理をついていて、怖いなって感じましたね。アメリカって見た目がギャングみたいな人たちも普通に医者とか警察官とかの職業についていたりするけど、この映画に登場する警官は、実際にやっていることがゴリゴリのギャング。家に捜査が入っても全然うろたえないし、ふてぶてしい態度だから、その肝の据わり方はなんなんだ?って思いました」

そんな腐敗した組織に身を置きながらも(後に退職)、命をかけて真実を解明しようとしたラッセル・プールという実在の人物がいたこと。その人物を、ジョニー・デップが演じていることも見どころだ。

© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

「ジョニー・デップが出ているだけで“ガチの映画だ”って感じましたね。ただ、プールはもちろん、記者のジャックもすごくヒーローのように見えるけど、本当にそうだったのかなって。純粋な正義感とは違うと思いました。国中が注目する未解決事件を俺が解決してやるんだっていう、ある意味ハイになっている部分があった気がします。自分がもしも彼らの立場だったら、あそこまではやらないと思う。だって自分ごとじゃないですから」

HIPHOPをテーマにした映画としても、クライム・サスペンスとしても見応えのある本作。未解決事件の真相に鋭く切り込んだ衝撃の内容は、ぜひ映画館で目撃してほしい。

「たくさんの悪者が登場する中で、自分が一番ワクワクしたのはシュグ・ナイト(デス・ロウ・レコードの創設者)の存在。実際の彼はまだ生きていて、殺人容疑で服役中なんですけど、『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)とか、当時のアメリカのHIPHOP界隈を描いた映画には必ず出てくるめちゃくちゃ悪い人なんです。登場するだけでワクワクするし、圧倒的巨悪って、やっぱ物語には重要。『L.A.コールドケース』でもしっかり描かれているので、HIPHOP好きの仲間には見てほしいです」

呂布カルマ
りょふかるま

名古屋JET CITY PEOPLE代表。プロラッパーでグラビアディガー。
「若い頃はギャスパー・ノエ監督の映画とかが好きでしたけど、30歳をすぎてからは『マッドマックス 怒りのデスロード』(2015)みたいなド派手な映画が好きになりました。一番好きな映画は『バーフバリ 伝説誕生』(2015)。昔から好きな俳優はニコラス・ケイジ。憂を帯びた目が好き」

Twitter:https://twitter.com/Yakamashiwa
YouTube:https://www.youtube.com/user/AZZHOUSE

『L.A.コールドケース』(2018)City of Lies 上映時間:1時間52分/アメリカ・イギリス


元ロサンゼルス市警のラッセル・プール(ジョニー・デップ)は、1997年に発生した“ノトーリアス・B.I.G.”の射殺事件から18年経った今も、未解決事件の真相をひとりで追い続けていた。独自に事件を探っていた記者のジャック・ジャクソン(フォレスト・ウィテカー)は、プールのもとを訪ねて過去の手掛かりを一緒に究明することになる。やがてふたりの前に浮かび上がってきたのは、予想もしない新事実だった……。

8月5日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン 池袋
他全国順次公開
配給:キノフィルムズ
公式HP:https://la-coldcase.jp/
© 2018 Good Films Enterprises, LLC.

取材・文/松山梢

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