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刑事罰だけで事件は終わらせない! 出版3社が「漫画村」運営者に総額19億円を請求

集英社オンライン / 2022年7月28日 22時21分

2018年4月に閉鎖された国内最大の海賊版サイト「漫画村」。同サイトの運営者に対して、KADOKAWA、集英社、小学館の3社が共同で損害賠償請求訴訟を提起することになった。その総額は、なんと約19億円。この3社の民事訴訟は、跋扈する海賊版サイトにどのような影響を与えるのだろうか。

海賊版サイトの象徴

2022年7月28日、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の会員である株式会社KADOKAWA(以下、KADOKAWA)、株式会社集英社(以下、集英社)、株式会社小学館(以下、小学館)は、出版コンテンツの海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し、総額約19億円の損害賠償を求めて3社共同で提訴した。請求の対象となった作品は、3社合計で17タイトルとなる。



「漫画村」は、コミックスや漫画雑誌をはじめ、一般雑誌、写真集、文芸作品といった出版物を違法で掲載していた海賊版サイトだ。違法にコピーされた出版コンテンツ約8200タイトル(約7万3000巻相当)を“タダ読み”できるWEBサイトとして、検索や口コミなどを介して2017年頃5月頃から急激に広まり、最盛期の月間アクセス数は1億に迫るほど利用者数が増加。漫画家や原作者、出版社などに対する経済的損失の大きさから、社会問題にも発展した。

その後、「漫画村」は著作権に関する違法性が問われ、同サイト運営者は著作権法違反の罪で2019年9月に逮捕。懲役3年、罰金1000万円、追徴金6257万1336円の有罪判決が言い渡されている。

「漫画村」は2018年4月に閉鎖されたが、同サイトの犯罪収益モデルが与えた影響は甚大で、今日の海賊版サイトの跋扈につながる大きな流れを作ってしまった。

海賊版サイト「漫画村」に対する損害賠償提訴を発表。左から一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会・専務理事の久保田裕氏、同協会・事務局長の中川文憲氏、原告代理人・弁護士の中川達也氏、原告代理人・弁護士の前田哲男氏、一般社団法人ABJ・広報部会長兼法務部会長の伊東敦氏

過去最大の賠償金額

今回3社が「漫画村」の運営者に対して求めた賠償金額は、総額19億2960万2532円(3社・17タイトル)。これは、海賊版サイトにまつわる民事訴訟の提訴としては、過去最大となる異例の金額だ。しかしあくまでこれは、同サイトより受けたと推計される損害の一部。なお、19億を超える損額の算定方法は、以下の通りだ。

① 「漫画村」の2017年6月から2018年4月までのサイトアクセス総数は5億3781万であったと推計

② アクセスした利用者が1アクセスで漫画コミックスを閲覧したと仮定すると、当該期間で5億3781万巻分の閲覧があったと推計

③ 漫画村には最大で7万2577巻が掲載されていたことから、1巻あたりの平均閲覧数は7410と推計(5億3781万巻分の閲覧÷7万2577巻=7410)

④ 「漫画村」へ掲載されていた請求対象作品の各巻ごとに、平均閲覧数である7410と各巻ごとの販売価額を乗じて全て足し合わせ、作品ごとに損害を算定

⑤ ④で求めた作品ごとの損害額を17作品全てで計算した上で足し合わせ、総額を算出

対象となった作品および請求金額の内訳は、KADOKAWAが8作品・4億5083万9961円、集英社が2作品で4億7692万3161円、小学館が7作品で10億183万9410円。コンピュータソフトウェア著作権協会は対象タイトルに関して、「対象となった作品はいずれも人気作品。『漫画村』において少なくとも平均閲覧数以上の閲覧がされていたといえるため、今回の算定方法を採用した」としている。

今回の訴訟に係わる漫画・17タイトル

リテラシー向上の必要性

「漫画村」閉鎖後も、悪質な海賊版サイトは際限なく登場している。そうした状況の中、コンテンツを享受するユーザ側のリテラシーも十分に問われるのではないだろうか。コンピュータソフトウェア著作権協会・専務理事の久保田裕氏は、ユーザに対する著作権問題の啓発について、次のように話す。

「もっとも大事なことは『教育』です。無体なデジタル情報は、法と電子技術と教育の3つがバランスよく進まないと、管理や拡散を防ぐことが難しい。これまでも協会は徹底して著作権教育を進めてきましたが、より一層『情報の価値と意味』をしっかり伝えていかなければなりません」

現在、紙・電子を合わせた正規の漫画市場規模は6759億円(出版科学研究所調べ/2021年度)。それに対し、試算可能な海賊版サイトでタダ読みされた金額は2020年が年間約2100億円、2021年は年間1兆19億円と、正規市場を大幅に上回る。今回の共同提訴は、海賊版サイトに対してどのような影響を与えるのだろうか。一般社団法人ABJ・広報部会長兼法務部会長の伊東敦氏は、次のように語った。

「跋扈する海賊版サイトへの対策として、今回の提訴は非常に大きな前進です。本件が海賊版サイトを運営している人間に対して、強い抑止力となるはずです」

一般社団法人ABJ・広報部会長兼法務部会長の伊東敦氏

取材・文/集英社オンライン編集部

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