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ウェルビーイングを実践する医師に学ぶ「人生100年時代」を生きる3つの秘訣

集英社オンライン / 2022年8月1日 15時1分

「ウェルビーイングの実践家」として、世界中に愛と平和を届けるパッチ・アダムス医師。2021年にはノーベル平和賞にもノミネートされた彼が、招致イベントのために今年6月に来日した。彼がイベント中に紡いだ言葉から、「人生100年時代」と呼ばれる現代を豊かに生きるためのヒントを探してみよう。

映画にもなった伝説的な医師

みなさんは、「パッチ・アダムス」ことハンター・ドハーティ・アダムス氏(以下、パッチ)をご存知でしょうか。

パッチは、1998年に上映されたロビン・ウィリアムズ主演の映画「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」のモデルとなった世界的に有名な医師であり、クラウン(道化師)です。

そのパッチが2022年6月下旬、対面イベント「MEME of PATCH ADAMS」のために来日。体感型ワークショップなどを通して、今を⾃分らしく豊かに⽣きるためのヒントを届けてくれました。



まずは簡単に、パッチがどんな医師なのか、ご紹介しておきましょう。

パッチは、精神的な不調から回復した自らの経験を通して、「人が精神的不調に陥らないためには、社会からの孤立を回避することが重要である」と考えていました。そんな中、あの有名なキング牧師の演説を聞き、「人生は自らの選択によって作っていくことができる」と確信。そして自分を大切にしない行動を選択してしまう日、すなわち自らを不幸にしてしまう日はもう二度と作らないと決意したそうです。

その後、パッチは孤独が原因でメンタルに不調を抱えてしまう人々を癒すために、医師として「ウェルビーイング(Well-being)」の意味を伝えるクラウン活動を開始。また2001年のアメリカ同時多発テロ事件を契機に、世界中でウェルビーイングや愛を伝えるワークショップなどを実践し続けています。

映画「パッチ・アダムス」のモデルにもなったパッチ・アダムス医師

さまざまな社会的な活動を通して、多くの人々に影響を与え続けているパッチ。眼科医・社会医である筆者にとっても、彼の存在・思想は、現在の道を志す大きなきっかけとなりました。

昨今、日本でもSDGsなどの文脈で「ウェルビーイング」という言葉をよく耳にします。しかし、直接的に感情を表現しない傾向にある日本人にとって、「ウェルビーイング」や「愛」という言葉は、実感が少ない言葉と言えるかもしれません。筆者は日々さまざまな患者に会い、対話を繰り返していますが、コロナ禍においては人間関係が希薄になり孤独になる人や、「幸福のロールモデル」を見失う人が増加しているように感じます。

多くの人々が混迷する現代。我々には、パッチが伝えるウェルビーイングの意味を理解し、自分なりの言葉で解釈する時間と機会が必要です。

そこで筆者は、パッチを日本に招致するイベントを開くことを決意。今年3月と6月の2回に分けて、医療、福祉、教育などの各業界でウェルビーイングな社会の実現を目指すトップランナーとのオンライン対談や、中高生や医学生向けのワークショップ、その思想や行動指針(Meme)を体感するリアル講演会、パッチが道化の姿で児童施設や福祉施設などを訪問するクラウンツアーなどを企画・実施しました。

2022年3月20日〜26日、そして6月23日〜26日に開催された「MEME of PATCH ADAMS」。6月にはリアルイベントとして、実際にパッチが来日し、講演会などが開かれました

答えは自分で辿り着く

参加者や学生たちとのオンライン対談で印象的だったのが、パッチがそれぞれの質問に対して、明確な「解答」ではなく、彼らに気づきを与える「問い掛け」で返していたこと。これは彼の考え方の根底に「答えは他人に与えられるものではなく、本人が自分自身で気付くもの」という思想があるからです。

たとえば、「人生100年時代の医療には何が必要だと思うか?」という質問には、「医療は治療だけがゴールなのか? 薬を処方するより友達を作ることで回復する患者はいないか?」と答え、「自殺やいじめが問題になる日本の教育はどうあるべきか?」という質問には「なぜ学校で愛を教育する授業がないか? 子供たちが幸せに生きるために必要な学びとは何か?」と返していました。

このように、所属する組織や分野が「誰のため、何のために存在しているのか」と質問者に問い掛けることで、本質を見失わないことの大切さを伝えていたように感じます。

オンライン対話イベントには多くの医療系学生が参加

多くの笑顔を生み出したクラウンツアー

また中学生・高校生向けのリアル対話イベントでは、パッチ自身が学生時代に同性の恋人がいたエピソードなどを交えながら、他者よりも自分の心の声(何を大切にして、何をしているときの自分が好きか)に従って生きることの大切さを説いていました。

特に大きな悩みを告白した学生に対し、ほかの学生が駆け寄って支える場面では、教員を含む多くの来場者が感情を揺さぶられ、涙する人も。多くの来場者が、言葉よりも行動を起こすことの重要さに改めて気付かされたことと思います。

オンラインで対話をするパッチと学生たち

人生100時代に大切な3つのこと

1年前に足を怪我し、不運にも切断することになったパッチは、リアル講演中にアートを施した義足とともに、変化した足に名前をつけたことを紹介。足を失ったことについて質問した参加者には、喪失した悲しみではなく、「生まれ変わった自分への愛らしさ」を口にしました。

生きることは、「喪失の連続」であると同時に「創造の営み」でもあります。「不運であることと、不幸になることは違う」という現代を豊かに生きるためのヒントを、パッチは来場者に伝えたかったのでしょう。

足の切断面の温かさや柔らかさなどの感想を伝えるパッチ

そして講演中に特に印象的だったのが、孤独を原因とするいくつかの悩みを打ち明けた男性を壇上へ招き入れて、膝の上に乗せ、来場者との対話を促すシーン。男性は対話を通して「人は誰でも人の役に立てること」を体験することで、その俯きがちだった暗い表情が、別人かと思えるほど明るい笑顔へと変化。自分の人生に前向きに歩み出す男性の姿は、その場にいた他の参加者にとっても、非常に勇気付けられる貴重な瞬間だったように思います。

特に印象的だった、悩める質問者を膝の上に抱えて来場者と対話する一幕

筆者はイベント期間中、パッチに同行し、多くの時間を共にしました。そこから見えてきた等身大の彼は、英雄として崇められることをとことん嫌い、常に他者の役に立つことを望む親切な友人でした。そして、すべての人と自然への感謝を忘れず、今を生きることを心に決めた覚悟の人でもありました。

最後に、私が本イベント、そしてパッチの言葉を通して得た、「人生100年時代」と呼ばれる現代をウェルビーイングに生きるための行動習慣を、社会医として挙げさせていただきます。

●「好き」を心の真ん中にする:好きや楽しいという感情を、意思決定時の最優先事項にする事
●「感謝」を行動で伝える:言葉の選択を悩むより、まず行動で他者に感謝を伝え続ける事
●「問い」を続けて楽しむ:答え探しをするより、問いを続けて変化する今を常に楽しむ事

人生とは「自分の認識と選択が作る物語」だと言えます。不運を不幸と解釈しないこと、自分自身を「私をよく知る一人目の友達」として愛し、孤独に陥らせないこと、そして自分を不幸にしないと心に決めることが何より大切なのだと感じました。

本イベントのアーカイブ動画を後日YouTubeにアップしますので、ぜひ皆さんも偉大な医師の言葉と行動から、現代をウェルビーイングに生きるヒントを得てみてはいかがでしょうか。

講演後に来場者と抱擁を交わすパッチ

文/三宅琢

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