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何もしないをする贅沢 小型ストーブで始める焚き火入門

集英社オンライン / 2022年8月3日 11時1分

生き物のように形を変え、見る人の心を捉えて離さない焚き火の炎。眺めても楽しい焚き火は、暑い夏でもアウトドアで人気がある。しかし火を扱うだけに、キャンプ初心者には少々ハードルが高いのも事実。「何を用意すればいい?」「キャンプ場で気をつけることは?」という人のため、焚き火の基礎を紹介しよう。

自分に合う焚き火台の選び方

焚き火はキャンプサイトの灯りになるだけでなく、揺れる炎を見ているだけで、安らぎをもたらしてくれる不思議な存在。そんな焚き火を楽しむために最初に手に入れたいのは、薪を載せる「焚き火台」です。

東京都江東区にある若洲公園キャンプ場に併設されている、「若洲アウトドアセンター」の店長・金丸隼士さんに話を聞きました。



「地面の上で直接焚き火をするいわゆる『直火』は、植物にダメージを与え、炭の黒い燃え跡がいつまでも残ってしまうため、多くのキャンプ場で禁止されています。そこで必要になるのが焚き火台なのですが、昨今の焚き火ブームを受けて種類が激増しています」

焚き火台を大きく分類すると、大きな薪をそのまま使えるスタンダードな『平型』と、ソロキャンプなどに向く小型の『ボックス(箱)型ストーブ』の2種があります。なかには炎の美しさを楽しむことに特化したモデルなどもあり、焚き火台選びからもう楽しそうです。

若洲アウトドアセンターの金丸隼士さん。「焚き火道具のレンタルと、BBQ食材のセットプランも用意しているので、デートや女子会で焚き火を楽しむ人も多いです」

大人数で使える平型のUNIFLAME(右・ファイアグリル 7500円)と、ソロに向くボックス型ストーブのFirebox(左・G2 ファイヤーボックスストーブ 1万890円)

若洲公園キャンプ場は本格的なアウトドアが楽しめる人気のフィールドですが、約20種類の焚き火台のレンタルが可能。薪1束がついて6時間2200円でレンタルできるので、自分に合ったモデル探しにも便利です。

焚き火台のほかに必要な道具は、火口ノズルが長いライターや熱に強い革手袋、そして薪を挟むトング。薪のサイズを調整するためにナイフとノコギリも用意しますが、使う機会は稀で、無くても十分焚き火は楽しめます。

筆者が焚き火に持参するギア。焚き火シート、ライター、革手袋、トングなどは必須。ナイフやノコギリは大きな薪しか手に入らないときに使用します

また、薪の状態によっては、内部の水分が急激に膨張して火の粉がはぜることも。服装はナイロン素材だと穴が空いてしまうので、難燃素材やコットンが安心です。

質の高い薪があれば焚き火は成功したも同然

焚き火の主役とも言えるのが薪。「そのへんに落ちている枯れ木を燃やせばいい」と思っている人がいるかもしれませんが、落ちている木は湿気が残っていることが多いので、薪には向いていません。

筆者が薪を購入しているのが、千葉県柏市にある薪の専門店「薪のPEN(ペン)」。焚き火を愛するキャンパーたちが興したお店の代表、園ペータルさんによると「しっかり乾燥した薪を使えば焚き火は誰でも簡単に楽しめます」とのこと。

薪は園ペータルさん(写真左)が持つ標準サイズのほか、スタッフの斉藤絢香さん(写真右)が持つハーフ薪とコロ薪などサイズも様々。自分のスタイルに合う薪を選べます

焚き火は着火しやすい針葉樹を最初に使い、ゆっくりと燃える広葉樹を足していくのがセオリー。ですが、薪のPENでは焚き火に最適な含水量に仕上げているので、初心者でも広葉樹だけで焚き火が楽しめるほど。

右が針葉樹で左が広葉樹。脂分が多い針葉樹は火力が強く、木目が詰まっている広葉樹は穏やかに燃えるのが特徴

スタッフの斉藤さんは「樹木の種類でも楽しさが違うんです」と教えてくれました。

「ナラやクヌギ、サクラなど、燃やしたときの炎や香りの違いも楽しんでほしいです。個人的に大好きなのは、『グネ薪』と呼んでいる節の部分。木の密度が不揃いで曲がっているなど形はいびつですが、炎が不規則に揺らぐので見ていて飽きません」(斉藤さん)

一本一本異なる薪の個性を楽しめるのも、焚き火の奥深い面白さのようです。

どうやって火をつけるか

それでは具体的にどうやって点火するのか、解説します。

ステップ1:焚き火台とシートをセットする

今回はコンパクトで防風性にすぐれ、料理もしやすいボックス型ストーブを使った焚き火の仕方を紹介します。手順はどのタイプの焚き火台でも基本は同じです。

落ち葉など周りに燃えやすいものがないかチェック。熱の影響を抑える焚き火シートは、灰などの後片づけも簡単なのでぜひご用意を。背の低いボックス型ストーブを芝生などの上で使う場合、シートに加え小さな金属製テーブルに載せて地面から離すとより安心です

まずは焚き火をする場所選びから。焚き火は火を扱うだけに、一歩間違えると大事故になりかねません。周囲に燃え移りやすい落ち葉などがなく、テントから少し離れた風下を選びます。もちろん、風の強い日には中止したほうが無難です。

ステップ2:着火剤を入れる

太い薪に確実に火をつけるための火種となるのが着火剤。アウトドア用品店やホームセンターには様々な種類が用意されています。

ゼリー状のアルコールをパックごと燃やす「ONOE着火剤パック」(左上・6個入230円)、ロウが主成分の「ONOEハイチャッカー・S」(右・220円)。化粧用コットンにワセリンを挟んだ自家製着火剤(左下)

様々な種類の着火剤がありますが、どれもマッチ1本で簡単に火がつき、数分間燃焼します。最近では100円ショップでも見かけるようになりました。

着火剤は1つで数分間燃えるので確実に薪に着火できます

着火剤は焚き火台の底に置きます。火をつけるのは、薪を組み終わってから。

ステップ3:細い木→太い薪の順で組み上げる

細い薪の破片や樹皮などを着火剤の上にふんわりと置き、その上に細い木をつぶさないよう太い薪を載せます。たくさん薪を入れたくなりがちですが、火を育てるなら着火後に足せばよいので、最初は1〜2本で十分です。

着火時の薪の量は少なめが安全

薪を組む際は、炎の通り道をイメージしながら、底面から上部へ空気が流れるよう隙間を空けておくのがコツ。最初の薪は、表面の繊維がザラザラと毛羽立ったものを選ぶと燃えやすいです。

ステップ4:着火

周りに燃えやすいものがないか再度確認して、いよいよ着火剤に点火します。

ライターは先端が長いものが安全。急な炎の立ち上がりを避けるため横方向から挿し込むのがコツ。オレンジ色のライターはイワタニの「ガスマッチSTC」(オープン価格)

着火剤の炎は青白く、明るい昼間では見にくいので、遠くから手をかざし感じる熱で火がついていることを確認します。着火剤の継ぎ足しは急な燃え上がりで火傷の恐れがあるため、絶対にNGです。

着火剤に火をつけたらしばらく放置するだけ。1分足らずで太い薪に燃え移りました

点火してしばらく放置しておくと、着火剤の炎が細い木から太い薪に自然と移っていきます。焚き火台全体にフワッと火が回ったら、太い薪が燃えはじめた証拠。ゆっくりと焚き火を楽しみましょう。

ステップ5:薪を足して炎を育てる

焚き火は火の世話も楽しいもの。太い薪が完全に燃えきらず、まだ炎が上がっているうちに次の薪をトングで足して炎を育てます。

炎が完全に収まる前に薪を足します

熾火(おきび)で料理に挑戦してみよう

料理は焚き火の大きな楽しみのひとつ。ボックス型ストーブはとくに調理がしやすいので、筆者は小さな鉄のフライパンを使って野外料理を楽しんでいます。

料理をするタイミングは、大きな炎が収まって炭が赤々と燃えている状態がベスト

料理に最適なのは、炎が収まった熾火の状態。一見、火力が弱そうですが、注意深く手をかざすと、遠赤外線の熱をしっかりと感じられるはず。

ステーキ肉は常温に戻しておき、強火で片面1分半ずつ焼いて、アルミホイルで包んで休ませるのがポイント

今回はちょっと贅沢に、ステーキを焼いて丼を作りました。フライパンがあれば、ソーセージを焼いたり、アヒージョを楽しんだりもでき、片づけも簡単なのでオススメです。

夏らしくミョウガとシソを刻んで薬味にしたステーキ丼が完成

ご飯はレトルトでもいいですし、頑張って焚き火での炊飯にチャレンジするのも面白いです。手の込んだ料理でなくても、焚き火で沸かしたお湯でインスタントラーメンを作るだけで、家で食べるのとはひと味違う満足感があります。

消火は水を掛けない

焚き火を楽しむ際に、実は意外と難しいのが消火です。水を掛けると高熱の水蒸気と灰が舞い上がって大変なことになるので、非常時以外は水を掛けないように注意が必要です。

燃え尽きて灰になるタイミングで焚き火を終えるのが理想ですが、就寝したり、長時間火のそばを離れたりする際には、空気を遮断して消化する「火消しつぼ」が必要です。炭や薪を入れてフタを閉めておくと、やがて酸素がなくなり火が消えます。消火した後の灰や炭は、キャンプ場のルールに従って灰捨場などに処分すれば、無事焚き火は終了です。

後始末には、空気を遮断して火を消す「火消しつぼ」が便利。筆者は100円ショップのオイルポットを使用しています

これだけは守りたい焚き火のマナー

最後に、若洲アウトドアセンターの金丸さんから、焚き火初心者にありがちな失敗談を聞きました。

「経験が少ない方は薪を多く入れすぎて、巨大な炎を上げてしまいがち。焚き火台にもよりますが、炎の高さは20〜30cm程度が目安。1メートル以上の炎が横風にあおられ、化繊のタープ(風雨よけの天幕)が一瞬で炎上してしまったケースもあるほどです」とのこと。

環境に極力負荷をかけない「ローインパクト」が不文律のアウトドアでは、周囲の自然に気を配ることが大切。基本を守り安全に十分注意することで、焚き火がより楽しめるはずです。

文/杉山元洋 撮影/竹之下美緒

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