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「最初は家族にもいえなかった…」ー若手女性タクシードライバーのやりがいと葛藤

集英社オンライン / 2022年8月5日 14時1分

入社2年目の同期コンビ、中島秀二郎さんと岡本美雪さんによるタクシードライバー対談。後編は…ちょっと笑える体験談、心がほっこりするエピソード、タクシー業界への注文など、これからの夢について語ってもらった。(トップ画像/大和自動車交通江東㈱入社二年目の岡本さん)

大和交通入社二年目同期の中島さん(写真左)と岡本さん(右)

酔客は面白エピソードが満載

――クスッと笑えるようなエピソードがあったら教えてください。

中島 夜にご乗車されるお客様は、ほぼほぼみなさん、お酒を飲んでいらっしゃるので、エピソードもたくさんあるのですが。そうですねぇ…僕の中で一番は、“助けてくれぇ〜〜〜事件”ですね。



――なんですか、それは?

中島 お酒に酔ったまま寝てしまうお客様の中には、いつ、どこでタクシーに乗ったのか、まるで記憶がないという方が多くて。それでも「お客様、着きましたよ」というと、半分眠りながらも、料金を支払ってくださるんです。ただ中には、「払った」と言い張るお客様もいて。

岡本 いますね。私も経験があります。

中島 「まだいただいてません」「いや、払った」という押し問答を何回か繰り返すことになるんですけど、あるお客様が、ドアにしがみつくようにして、「出してくれ〜〜〜」「助けてくれ〜〜〜」と叫び出したことがあって。あれには、まいりました。

――結局、どうしたんですか?

中島 何度も押し問答を続けているうちに、次第に酔いが醒め、記憶が蘇ってくるんでしょうね、最後は冷静になって「ごめん、ごめん」と言いながら、料金を支払ってくださいました(笑)。

岡本 私のエピソードも、やっぱり深夜の出来事で。ゲイバーにお勤めされている方を新宿からご自宅までお乗せしたんですけど。その後、お店に戻るから、ちょっと待っててくれると言って、部屋に行ったきり、1時間経っても、2時間が過ぎても、戻って来なくて…。

中島 そのまま、逃げられちゃった?

岡本 いえ。お財布とケータイはシートに置きっぱなしなので、その心配はなかったんですけど。もしかして突然具合が悪くなったんじゃ? とか、お部屋で倒れていたらどうしようとか考えているうちに、どんどん不安になってきて。

――確かに、その心配もありますよね。

岡本 で、警察に連絡して来ていただいたんですけど……。

中島 まさかとは思うけど…寝ちゃってた?

岡本 そう、なんです(笑)。困ったような顔で、「ごめん、運転手さん」と、頭をかきながら車に乗って来られて。ご自宅までの料金と、待っている間の料金、それに、お店までお送りする料金、全部支払ってくださったので、結果的にはすごくいいお客様だった…という話です(笑)。

ほっこりエピソード

――ほっこりするようエピソードも、たくさん体験されているんでしょうね。

中島 お客様からかけていただく言葉で、最も嬉しいのは、“ありがとう”という一言です。乗っていただいて良かった。お乗せして良かったと思えるのが、その言葉をかけていただく瞬間です。その中でも最高に嬉しかったのは、今日、これから手術を控えているお客様をお乗せしたときのことでした。

岡本 私は…そういう経験はないです。

中島 僕もそのときが初めてで。誰だってそうだと思いますが、手術前は怖いじゃないですか。しかもそのお客様は、今にも倒れちゃうんじゃないかというほど真っ青な顔をされていて。ずっと「大丈夫ですよ」「きっとうまくいきますから」「元気になりますから」と、言い続けていたんですが、話しているうちにどんどん明るくなっていって。

――そのときのお客さんの気持ちが、わかるような気がします。

中島 病院に到着して降りられるとき、「ありがとう」と言っていただいて。「運転手さんのおかげで頑張れそうな気がする」と仰って。あの瞬間のお客様の言葉と笑顔は、いまでもはっきりと覚えています。

岡本 自分が元気をもらった話でもいいですか?

――もちろんです。ぜひ、聞かせてください。

岡本 ドライバーになって楽しいこともいっぱいあったし、お金もたくさん稼げるし、休みは多いし…といいことだらけでしたが、それでも家族にも友達にもタクシードライバーをしているということが言えなくて。引け目があったというか、なんとなく、恥ずかしいような気がしていて……。

中島 それは、よくわかる。僕も最初、ちょっとだけそういう気持ちがあったから。

岡本 で、あるとき、ナレーターのお仕事をされている方をお乗せしとき…なぜその方に、素直に自分の気持ちを話せたのか不思議なんですけど、恥ずかしくて、親にも友達にも言えなくてとお話ししたら、「そんなことはないと思う」と。すごく素敵な職業だと思うし、「女性でタクシードライバーをしているのは、むしろ、かっこいいと思う」と、仰っていただいて。

――両親や友達に伝えた?

岡本 はい。自分で選んだ職業なんだから、もっと自信を持とうと思って。悪いところじゃなくて、いいところに目を向けようと思って、次に帰省したときに伝えました。

中島 ご両親の反応は!? 反対された?

岡本 いえ。最初はビミョーな感じだったけど、これだけもらっているんだよ、と伝えたら、社会人1年目でその金額はすごい!と目を丸くして。それからは、仕事を聞かれたときに「タクシードライバーです!」と自信を持って言えるようになりました。

へずまりゅうさんはとても良い人だった

――昼と夜の運転では、どちらが大変ですか。

中島 僕の場合は、昼の方がより気を使います。ビジネスマンの方は、タクシーの中でも、パソコンを操作したり、ケータイで商談を進めたりされたりされるので、急ブレーキなどでその邪魔をしちゃいけないと思っているので。

岡本 私は、どちらかというと、夜です。酔った方が多くなりますし、…一応、女の子なので(笑)。あとは、単純に、夜の運転の方が昼にハンドルを握るより事故のリスクが高くなるので、些細なことにも気を配るようにしています。

――もしかして、著名人を乗せることも…ある?

岡本 私は一人だけで…TV局の某有名アナウンサーさんです。道も教えてくださいましたし、ものすごくいい方でした。

中島 僕は、MCとしてすごく有名なお笑い芸人の方と、もうひとり…。

――どなたですか?

中島 YouTuberのへずまりゅうさんです。それも2回! すごく紳士的な方で、とってもいい人でした(笑)。

――それもある意味すごいですね。ではタクシー業界全体に対して、ここを変えて欲しいというところがあったら教えてください。

中島 休憩場所をもっと増やして欲しいですね。今、設定されているのは、青山墓地と六本木の高架下、その2箇所しかなく、あとは自分で何とかするしかないので、それは増やして欲しいなと。

岡本 タクシー業界は、まだまだ女性の方が少ないので、もっと多くなって欲しいなと思います。ウチの会社でも、女性の管理職はゼロで。そういう方がいたら、相談事とかも気軽にできるようになりますし、よりいい環境で仕事ができるようになると思います。

――会社を辞めるまでドライバーを続ける?

中島 いや、それは考えていないです。ずっと乗務員を続けていくんじゃなくて、将来的には会社の経営であったり、本社で、会社全体を盛り上げていけるような部署で働きたいと思っています。

岡本 私は目指せ、女性の管理職!ですね。観光の部署に行ってみたいというのもありますが、最終的には、女性が働きやすい環境づくりをしたいと思っています。

――最後にひとつ、運転中に溜まったストレスをどうしているのか。その解消法があったらぜひ、教えてください。

中島 僕は運動が好きなので、休みの日に体を動かしたり、美味しいものの食べ歩きをしています。

岡本 私は休みの日に、同期と買い物に行ったりドライブに行ったりですね。

――休みの日も、運転する?

岡本 はい。運転は好きだし、同期とのドライブだったら、疲れたらすぐに交代してもらえるじゃないですか。みんな、運転のプロなので、自分でハンドルを握っていないときでも、安心して乗っていられますから(笑)。

取材・文/工藤晋 撮影/神田豊秀

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