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「自分の内なる海を大切にする」水族表現家・二木あいさんに聞く、自然と共に生きることとは?

集英社オンライン / 2022年8月3日 12時1分

素潜りギネス世界新記録を2種目樹立し、水族表現家という日本国内外問わず唯一無二の存在として活動している二木あいさんが東京・代々木で写真展を開催している。海の中の世界のこと、今後我々が自然とどう向き合うべきなのかインタビューした。

素潜りすることで海洋動物の一員として居られる

―素潜りされるきっかけはどんなことだったのですか?

もともとスキューバーダイビングをしていたんです。
スキューバーダイビングはタンクを背負っているので、息を吸うと「スースー」と音がしますし、息を吐く時は「ブクブクブク」と大きな音が出ます。
海の生き物たちを長く観察にするためにはスキューバーダイビングはいいのですが、これだと彼らの中には入っていくことはできません。彼ら普段の生活には「ブクブクブク」音はないので、みんな遠くに行ってしまいます。


いつまでたっても異星人として水の中にいるという違和感がありました。

そんな時に友人に誘われて、素潜りを体験することに。
自分の肺が全てなので、クジラや海洋哺乳類と同じように息が続かなくなったら海面に上がり呼吸する。
彼らと同じ状態になることで、彼らと一員になれる……これだ!と実感しました。

―ギネス記録に挑戦することにした理由はどんなことですか?

素潜りしていく中で、私たちはこの地球の一員であって、所有者ではないということ。共に生きる一員として何ができるのか、水の中から伝えていきたいと思いました。
その時は、名も無きただの素潜り者で、何をしても何か伝えたいと思っても私のただの自己満足に過ぎません。
こうやって皆さんにお伝えするためにもギネス記録に挑戦しました。

記録は更新されていくものですが、世界初は誰かが取ってしまえばその人のものになります。
だからこそ世界初・女性初にこだわり、2011年に「洞窟で一番長い距離を一息で行く」でフィン有り 100mは世界女性初の記録、フィンなし 90mは世界初の記録を取りました。

考えない、感覚を大切にする

―水族表現家とは?

当たり前のことですが、私たちは陸上で生活しているので、海と言っても水面しか見えず、海の中はすごく遠い世界のように思われるでしょう。しかし私たちが生きるために必要な酸素も、水も、食べ物も、全て海があるからこそ存在しています。
海の中は決して遠い世界ではなく私たちは繋がっています。
私が「水族表現家」と名乗っているのは、水生生物たちと同じ水の部族、家族の一員として動植物はもちろん水の中で見える景色や、海そのものが持つ表情、彼らが伝えたいことをさまざまな方法で表現しているからです。
ある時は自分が被写体となり、ある時は自分で水の中を撮影する、またある時は講演会でお話しするなどさまざまな表現方法を用いています。

陸と海の橋渡し、架け橋として活動しています。


―潜っているときはどんな感じになるのでしょうか?

素潜りで水の中にいる時は、一番人間らしい「考える」ということは陸に置いていきます。
脳が体で一番酸素を消費することも理由の一つで、一息で水中にいる時にわざわざ、メールしないと!とか、今晩何食べよう?など考える必要ないと思いませんか?

自然世界は、考えてから行動では遅い世界です。どうしても考えの声の方が大きいので、それを横に置いておくことで、より微細な感覚が研ぎ澄まされます。
海中では海洋動物たちのほうが当然、泳ぎのスピードも速く、深く長く潜れますので、私を異物だと感じると、瞬時に逃げてしまいます。
しかし、相手が自分の仲間の一員、一緒に居ても嫌じゃない、と感じれば泳ぎもゆっくりになりますし、こちらが水面で呼吸しているのを水中から待っていることもあります。

自分が被写体の場合は、中に溶け込んでいく感じですね。そして、自分が撮影者の場合は、できる限り自分のフィルターを通さないスケルトンの状態で、相手が伝えたいこと、見せたいことを彼らの代わりにシャッターを押している感じです。

作品は、タイトルや説明は意図的につけていません。言葉があると、それを理解しようと頭で作品を見てしまいがちで、私はそれよりも、心で感じていただきたいので、見てくださるみなさんにゆだねます。誰一人として同じ人がいないように、感じ方も人それぞれですものね。

写真がモノクロ仕上げであるのも、私は自然派カメラマンではなく、生態系を伝えたいわけでもないので、カラーだとやはり一水中写真になってしまう。
私は、そこにある物語、質感、風景、など思いを馳せていただきたい理由から、そうしています。

答えは全て自分の中にある

―今後、私たちは自然とどう向き合っていけばいいでしょうか?

自然とは毎日の生活から遠いあまり関係ない話に思われるかもしれませんが、とても私たちと深く深く繋がっています。

全然違うように聞こえるかもしれませんが、やはり私は「まず自分自身を大事してください」とお伝えしたいです。何よりも一番近い存在、そして離れることなく一生付き合うのは、自分自身ですよね。ですので、まずは、自分から!だと思います。それは、自分本位のわがままになっていいですよ、ということではありません。また怠慢になってもいいですよ、ということでもありません。

自分を大事にすることで、内側が満たされ調和に満ちてきます。そうすると、自分自身に余裕ができることで、周りの人たちを、モノを、動物を、自然を大切にするようになり、そしてそれは波紋のように広がっていきます。

そのためにもまず、自分自身が心も体もマインドも健康な状態であることが大事だと思います。

こうしないといけない、こうあるべきだと頭で理解していても、本当に心から「そうだ!」と、突き動かされないと何も変わりません。

外に求めがちですが、答えは全て自分の中にあります。他と比べず、自分自身と向き合うことです。誰一人として同じ人はいません。

目には見えないかもしれないけど、目に見えないから存在しないのではなく、目に見えないからこそ、とても大事なことはたくさんありますよね。
全て繋がっています。遠い存在と思いがちの海とも。

―今後の活動についてお聞かせください

根本的な活動は変わらないです。
まだまだコロナ禍で、活動をどんどんできる状況ではないですが、私は水の中に入らないと何も伝えられないので、まずは水に入って海の状況や海洋哺乳類の動物たちと出会わないと……ですね。それがあって、初めてみなさんにシェアできるので……。


―具体的にはどちらか候補はありますか?

北極圏の海にいるベルーガというシロイルカや、世界最大の動物と言われているシロナガスクジラに出会い、交流し、写真・映像に収め、皆さんにお伝えることができたらと。
今後も水族表現家として水と陸の架け橋になれるように活動していきます。

【 二木あい写真展 中今 Naka-Ima “Here and Now” 2022 】
会期:8月31日 (水)まで
場所:umi to mori (https://www.instagram.com/umitomori.official/
東京都渋谷区代々木 5-67-1 ピア代々木 5 1F
時間:10:00‐18:00、金曜のみ21:00まで
定休日:月曜
在廊予定:毎週金曜・土曜・日曜

プロフィール写真:Yuriko Takagi
衣装協力:HaaT (ISSEY MIYAKE)

取材/百田なつき 撮影/花田梢

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