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家飲みやテレワーク中に熱中症? 意外な具体例に専門医の見解は

集英社オンライン / 2022年8月3日 15時1分

異常な暑さが続く中、熱中症患者も急増している。中には家飲みやテレワーク中など、意外なケースでの罹患もあるが、体験者に話を聞くと、「おそらく原因はあれだった…」と一様な答えが返ってくる。そうした事例を紹介しながら、糖尿病専門医・臨床内科専門医で『糖尿病は自分で治す!』(集英社新書)などの著書がある福田正博医師に対策を尋ねた。

「家飲み」「テレワーク」で自宅熱中症に

熱中症で救急車の要請があった場所について、東京消防庁による2019年6月~9月の集計では、「住宅等居住場所が40.2%で最も多く、次いで道路・交通施設が30.5%」とされている。まず、自宅熱中症を体験した2つの例を見ていこう。

●36歳・男性・会社員


「日中は営業で屋外を歩き回り、翌日は休みだったので夏バテ予防にと、ジムでランニングと筋トレをした日の夜でした。エアコンをつけた自宅で、プロ野球を見ながらだらだらと、缶ビールを4本以上、飲んでいました。ビールなら水分補給にもなると思ったんです。

夜が更けてきたころ、どうも悪寒がするのでエアコンを切ると、ガンガンと頭痛がし、めまいで立てず、ふくらはぎが硬直したように…。驚いた妻が救急車を呼んで搬送され、熱中症と診断されました。数時間、点滴をして回復しましたが、まさか家飲みでこんなことになるとは」

福田医師 昼間の外回りとその後の運動で体力が消耗しているところに、多量飲酒で脱水症状となり、エアコンを切ったこともあって熱中症に至ったと思われます。休日の前夜などは冷たいビールを飲みたくなるでしょう。ただし、お酒は水分補給にはまったくなりません。

ヒトの体では、「1日におよそ2.5リットルの水分の出入り」があります。吸収のほうは「食事で1リットル、飲み水で1.2リットル、体内でつくられる水が0.3リットル」で、排出されるのは「呼吸や汗で0.9リットル、尿や便で1.6リットル」です。環境省の熱中症予防情報サイトでは、「1日あたり1.2リットルを目安とした水分補給」を推奨しています。

しかし、お酒を飲むほどに利尿作用で尿の量が増え、さらにアルコール分解のためにも水分を消費します。ビールを1リットル飲むと、1~1.2リットルの水分が失われ、このとき、体内では水分が不足する「脱水」が進んでいます。

「家飲み熱中症」は意外に多く、ひとり暮らしの人はとくに注意が必要です。予防には、「エアコンを切って飲みすぎない。常に酒と同じ量の水を飲む」ことが重要になります。

●57歳・女性・会社役員
「自宅でのテレワークに慣れてきた夏のある日、パソコン作業中に急に頭がくらくらし、部屋全体が白く濁って見えました。仕事に集中し過ぎてなぜか、エアコンをつけ忘れていたのです。外の空気を吸おうと屋外に出たところ、急に吐き気と立ちくらみ、さらにおでこに赤い湿疹が大量にできていてびっくり。

皮膚科に飛び込むと、『熱中症の軽症。屋外へ出たのが間違いで、すぐにエアコンをつけて体を冷やすべきだった。湿疹は皮膚の表面温度の上昇によるあせも湿疹で、大人でもよくある』とのことでした」

福田医師 高齢者だけではなく、ここ数年、自宅でのテレワークでエアコンをつけずに過ごし、軽症や中等症の熱中症になる人は急増しています。中には「気温がそう高くないので、扇風機だけで過ごしていたからかも」という人もいます。就寝中に同様のことが起こる可能性もあるわけです。実際に、湿度が高いときは救急搬送率が高いという報告があります。終日、エアコンで気温と湿度を調節しましょう。

自宅でも、頭痛、めまい、立ちくらみ、顔のほてり、一時的に意識が遠のく、けん怠感、こむら返り、ひどい肩こり、吐き気、おう吐、腹痛、大量の発汗などがあれば、熱中症を疑ってください。

テニスやバイクなど、いつもの趣味に過信した⁉

次は、日ごろの趣味の最中にまさか…という人たちの事例です。

●37歳・女性・自営業
「テニスが好きで、夏でも例年、趣味仲間と屋外コートでプレーしています。仕事で睡眠時間が短めだった翌日、『30度を超えているから、夕方に短時間で』と用心してテニスを開始。

でも10分ほどすると、急に足がひどくもつれてしりもちをつき、目の前にはチカチカと星が飛び、コートがゆがんで見えました。すぐ近くの内科に運ばれましたが、睡眠不足と、『得意なテニスなら大丈夫だ』という過信が原因だったかも」

●55歳・男性・会社員
「趣味はバイクです。暑くても日焼けとケガ予防に長袖長ズボンは常識ですが、冷感で吸汗速乾素材のインナー着用だと、風が体にあたる走行中は涼しいです。

気温が30度前後の炎天の日、いつものように走りに出ました。ところが、信号待ちの時に灼熱感を覚え、全身が重く、ヘルメットをはずすと視界が白っぽい感じがしました。汗は出ず、風邪の発熱と違って体中に熱がこもった感覚です。

そこからは記憶があまりないのですが、朦朧(もうろう)としながらもかかりつけ医に。あとで思えば、走行中は水分や塩分補給をしていませんでした」

福田医師 皆さん、「自分は暑さには慣れている」という根拠なき思い込みや油断があったのかもしれません。しかし、慣れほど怖いものはなく、実際、元アスリートにも熱中症経験者は多いです。炎天下、高温下、高湿度下での運動、バイク走行などでは、体温が急上昇しやすくなります。さらに睡眠不足時は危険です。

汗をかく前、15~30分に1回は水分と塩分を補給してください。体調不良を感じたら、すぐに趣味や運動を中止して涼しいところに移動し、可能であれば体表面に近い大きな血管がある首、わきの下、そけい部を重点的に冷やしましょう。

手のひらを保冷剤や冷たいペットボトルで冷やすと、血流の作用で体温を速く下げる「手のひら冷却」という方法も知られてきました。日ごろから活用してください。

仕事のプロ意識がアダに!?

次は仕事で「普段から警戒はしていたのに、熱中症になってしまった」例です。

●43歳・女性・看護師
「総合病院に勤務。猛暑で熱中症患者が増えて、対応に追われていました。その日は夜勤明けで朝食を摂らず、コーヒーを1杯飲んだだけ。それで炎天下に徒歩で帰宅していたところ、急に視界がぼんやりして、大量の発汗と吐き気に襲われました。同僚に電話して車で来てもらい、自分が急患で病院に戻ることに…」

●42歳・男性・中学校教師
「糖尿病で薬を飲み始めて2年目です。糖尿病は熱中症になりやすいと注意されていましたが、授業が詰まっていると水分補給などしている余裕はありません。屋外イベントの帰宅途中に、熱っぽさと妙な発汗、激しいけん怠感を覚え、コロナかと思って救急外来に直行したところ、熱中症で入院となりました」

福田医師 プロ意識からか、仕事中に水分や塩分補給をしないという人は非常に多いようです。そして朝食抜き、コーヒーだけというのは、水分もミネラルも摂取できていない状態です。予防の観点からも朝食は必ず食べて、仕事中は計画的に水分と塩分を補給しましょう。

救急搬送された人の中には、熱中症から急性の腎不全を発症している人もいます。さらに、高血圧、糖尿病、心臓や血管に病気のある方、高齢者は熱中症になりやすく、また重症化しやすいことを知っておきましょう。

その理由として、高血圧や糖尿病では服用している薬による利尿作用、高齢者はのどの渇きを感じにくいことや、汗をかきにくくて体温が上がりやすいこと、また、体内のミネラルバランスが悪化しやすいことなどが挙げられます。

通勤時や外出時は、日傘、帽子、保冷剤、冷たいタオル、カロリーが低めのスポーツドリンク、麦茶、塩飴などを常備してください。ただし、糖尿病や肥満症の方は塩飴やスポーツドリンクは糖分も多く含まれるので注意し、麦茶、梅干し,塩昆布をつまむなどがいいでしょう。



体験談から、「まさか自分が…」の裏には実は、酒の飲み過ぎ、エアコンなし、仕事や趣味に没頭、疲労、睡眠不足、水分・塩分不足、朝食抜き、根拠なき過信などの要因があったようだ。熱中症予防の参考にしたい。

構成・文 品川 緑 / ユンブル 写真/PIXTA

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