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前田敦子の「妖艶な人妻」ぶりに成田凌は「普通ならドキドキするけど…」

集英社オンライン / 2022年8月4日 16時1分

ドラマ『時効警察』シリーズ、映画『大怪獣のあとしまつ』で知られる三木聡監督の新たな映画『コンビニエンス・ストーリー』(8月5日公開)は、コンビニが別世界に繋がる“異世界ファンタジー”。主演の成田凌と前田敦子は「三木聡ワールド」にどのように向き合ったのか。また、成田が感じたという前田の異能ぶりとは?

映画『コンビニエンス・ストーリー』
成田凌・前田敦子インタビュー前編

ある日、売れない脚本家・加藤が富士山麓でたどり着いたのは、深い霧の中にたたずむコンビニ「リソーマート」。妖艶な人妻店員・惠子に助けられ、その夫のコンビニオーナー・南雲の家に泊めてもらった加藤は、惠子の誘惑に負けて、奇妙な三角関係に。さらに不思議な温泉街に迷い込んだ加藤と惠子の行く末は……?



映画『コンビニエンス・ストーリー』で加藤を演じたのは、『カツベン!』(2019年/周防正行監督)で映画初主演を飾り、『まともじゃないのは君も一緒』(2021年/前田弘二監督)、『くれなずめ』(2021年/松居大悟監督)など気鋭の監督作品での主演が相次ぐ成田凌。惠子にふんしたのは、AKB48卒業後、山下敦弘、黒沢清ら人気監督の薫陶を受け、近年は舞台での活躍も目覚ましい前田敦子。ドラマ『逃亡医F』(2022年)、舞台『パンドラの鐘』(2022年)などで共演が続く2人は、三木聡監督からのオファーをどのように受け止めたのか。

「デビュー前からの念願が叶った」

——『コンビニエンス・ストーリー』のオファーを聞かれたときの感想は?

成田凌(以下、成田) 純粋に嬉しかったですね。『時効警察』(2006年)に衝撃を受けてレンタルビデオ店に走り、『転々』(2007年)、『俺俺』(2013年)など全作品を見てきたくらい、好きな監督。2013年に今の事務所に入るとき、マネージャーさんと話していて、「三木聡さんとお仕事がしたいです」と言ったのが、この仕事の始まりでもあったので、念願叶った感じでした。

前田敦子(以下、前田) いい話ですね(笑)。私もすごく嬉しかったです。三木さんといえば、私がこの世界に入る前から、映画の中の映画の人、「ザ・映画」という方なので。

成田 「ジ・映画」だね(笑)。

前田 そうだね(笑)。そしてタイトルを聞いただけで、「あぁ、三木組だ」って、すごく思いました。

成田 最初のタイトルは『コンビニ物語』だったんですよ。その後が……。

前田 『あやふやな結末』だった。

成田 そうそう(笑)。

前田 私は「コンビニ」が入ってるほうが嬉しかったな。

成田 そういう紆余曲折を経て、結果、『コンビニエンス・ストーリー』になって良かったと思います。

三木聡監督の「ぶっ飛んだ世界」

——脚本は、映画評論家のマーク・シリング氏の短編を原案に三木監督が書かれたオリジナル。脚本を読まれての感想は?

成田 「どんな作品なんだろう?」と思いながら脚本を開くと、もう、文字から伝わる三木聡ワールド。「あ、ああ」とか「ナントカカントカ……かな?」とか、三木さんの世界らしい言葉とイズムが流れていて、興奮しましたね。

前田 独特だよね、言葉が。

成田 うん。ぶっ飛んだ世界なので全体がどうなるのかは想像できなかったんですけど、それはもう、現場で感じればいいかなと。文字だけ頭に入れて、現場に行った感じでした。

——実際に三木監督の演出を受けてみて、いかがでしたか?

成田 三木さんの頭の中には、全部の正解があるんですよ。絵コンテを描かれているので、たぶん役者の動きやカメラワークまで全部決まってる。でも、セリフの言い方や間(ま)で面白さがだいぶ変わってくるので、「ここはポンポンいったほうがいいですか?」とか「ひと間置いたほうがいいですか?」とか聞きながらやっていくと、どんどん面白くなる。さすがだなって思いました。

前田 そうだ! それで私、間の数え方が人と違うことに気付いたんだ(笑)。

成田 はは(笑)。

前田 監督が「そこの間は、3数えて」とか「6数えて」と言うことが多くて、その通りにやると、「早い!」って言われる(笑)。

成田 例えば、「3間」と言われたら、僕なら「1……2……3…」と数える。前田さんは?

前田 1、2、3。

成田 倍のスピードなんですよ。人の倍のスピードで生きてます、前田さんは(笑)。

成田凌、前田敦子とのスタッフの対応の差に愕然

——撮影現場はいかがでしたか?

成田 僕が演じた加藤は、異世界に迷い込んでいろんな経験をしていく、一番お客さんの目線に近い人。だから現場ではなるべく自然体でいて、ただただ楽しい日々を過ごしてました。

前田 惠子は、異世界のコンビニの店員さんで、六角精児さん演じるオーナーの妻。ただ、惠子が何を考えているのかは、私にもいまいちわからない部分があって……。だから何か深く考えるというより、監督の世界観についていこうと。正直に、真っ直ぐな気持ちで現場にいた感じです。

——作中の主な舞台となるコンビニ「リソーマート」は、富士山の麓に本当にあったんですか?

成田 富士山の麓にポツンとある廃墟の草分けみたいな建物を、美術さんがコンビニに仕立てていて。朝は辺り一面霧で真っ白で、いるだけでビショビショになるし、セットした髪の毛が全部ストンって下りちゃうくらいなんですよ。その深い霧の向こうにコンビニがじわじわと現れていく。本当に異世界みたいなところで撮影してましたね。

——撮影は、寒い時期だったとか。

成田 過酷でした。これまでの作品の中でもトップクラスで過酷な現場だったと思います。そんな寒さの中、前田さんは、シャツ1枚でガソリン(※実際は水)を浴びて、びしょ濡れになるシーンがあって。監督が、「はい、オッケー!」とカットをかけると、メイクさんや衣装さんが前田さんに駆け寄って拭いてあげるんですよ。それを横で見ながら、「自分も同じくらい濡れてるんだけどな……」と思ってました(笑)。

前田 男の子が、タオル持ってきてくれてたよね?

成田 そう。小さいタオルを受け取って自分で拭いて、前田さんについていこうとしたら、「成田さんはお待ちください」と(笑)。

前田 誰かに「ロケバスにいて!」とか言われてて、「すごい扱いだ〜」と思ってた(笑)。フォローしたかったけど、本当に寒すぎて、しゃべれなかったんですよ。

妖艶な人妻役に「何やってんだよって感じでした(笑)」

——今回の作品を通して得たもの、新境地はありますか?

成田 難しいですね。すごくリラックスしてやっていたので。でも、三木さんらしい、話し言葉じゃないセリフを、いかに面白く伝えてしていくかは、すごく考えました。それで三木さんに「どうやって言ったらいいですか?」と聞いて、実際に言ってもらうと、三木さんにとっては、それが話し言葉だったりするんですよ(笑)。脚本家が監督をすると、そういう面白さがあるんだなと思いました。そういうふうに、言葉や役を自分に引き込むんじゃなくて、逆に寄り添うということでは、今回すごく得るものがありました。

——前田さんは、妖艶な人妻役は新境地かなと思いました。AKB48時代から前田さんを知っている人は、「あっちゃんが大人になった……」と思いそうです。

前田 本当ですよね(笑)。そういう役を自分がやるようになるとは、思ってなかったです。加藤を誘惑するシーンなんかは、客観的に見て、何やってんだよって感じでしたけど(笑)。

——成田さんは、やはり前田さんの色気にドキドキしましたか?

成田 しましたね。ただ、やってる側としては、いろんな心配事があるんです。「寒くないかな?」とかもそうだし、行為としてどこまでするのか、しないのかっていうようなことも決めておかなきゃいけない。普通ならドキドキしたり相手の行動に反応したりしそうですけど、案外、そこに頭がいかなくて、必死でしたね(笑)。

取材・文/泊 貴洋
撮影/柳岡創平
場面写真/©2022「コンビニエンス・ストーリー」製作委員会

『コンビニエンス・ストーリー』(2022年)
監督・脚本/三木聡
企画/マーク・シリング
出演/成田凌、前田敦子、六角精児、片山友希、岩松了、ふせえり、渋川清彦ほか
配給/東映ビデオ

スランプ中の売れない脚本家、加藤(成田凌)は、ある日、恋人のジグザグ(片山友希)が飼っている愛犬・ケルベロスに腹を立て、山奥に捨ててきてしまう。その後、探しに戻るが、レンタカーが故障。霧の中のコンビニ「リソーマート」で店員の妖艶な人妻・惠子(前田敦子)に助けられ、彼女の夫のコンビニオーナー・南雲(六角精児)の家に泊めてもらうことに。加藤は、すでに異世界にはまり込んだことに気づいていなかった——。

8月5日(金)テアトル新宿ほか全国公開
公式HPはこちら https://conveniencestory-movie.jp

成田 凌 なりた りょう
俳優
1993年、埼玉県生まれ。2013年、『MEN'S NON-NO』専属モデルとなり、2014年に俳優デビュー。2018年の映画『スマホを落としただけなのに』、『ビブリア古書堂の事件手帖』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2019年の主演映画『カツベン!』で毎日映画コンクール男優主演賞を受賞。2022年は、映画『ニワトリ☆フェニックス』、ドラマ『逃亡医F』、舞台『パンドラの鐘』などに出演。2023年1月上演の舞台『宝飾時計』に出演予定。

前田 敦子 まえだ あつこ
俳優
1991年、千葉県生まれ。2005年のAKB48結成時からメンバーとして活動。2007年、『あしたの私の作り方』で映画デビュー。2012年にAKB48を卒業し、映画、ドラマ、舞台などで活躍。近年の主な出演映画に『町田くんの世界』、『旅のおわり世界のはじまり』、ドラマに『伝説のお母さん』『逃亡医F』、舞台にNODA・MAP『フェイクスピア』など。映画『もっと超越した所へ。』が2022年10月14日より公開。

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