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大阪桐蔭の春夏連覇か智弁和歌山の夏連覇か。甲子園の覇権争いの行方は?

集英社オンライン / 2022年8月5日 10時1分

8月6日から開幕する第104回全国高校野球選手権大会。組み合わせも決まり、いよいよ戦いの火蓋が切って落とされようとしている。長年、高校野球を追い続けているスポーツライターの氏原英明氏が「連覇」をキーワードに今年の見どころをお伝えする。

第104回全国高校野球選手権大会の組み合わせが決まった。

今大会の注目は昨秋の神宮大会、今春のセンバツを制した大阪桐蔭の動向だろう。春夏連覇を果たすかが気になるところだが、昨夏の覇者・智弁和歌山の存在も忘れてはならない。春の近畿大会では大阪桐蔭に勝利。この世代では唯一、公式戦で大阪桐蔭に土をつけたチームであり、当然、優勝候補の一校だ。

大阪桐蔭の春夏連覇か、智弁和歌山の夏連覇か――。両校の強さを解剖しつつ、大会の戦いを展望したい。


「自信のあるチーム」で勝てるとは限らない

西谷浩一監督が指揮官になってから9度目の頂点を目指す大阪桐蔭だが、大本命として大会に臨みながらも全国の頂点に立ったのは、2018年の1度しかない。

「過去予選で負けたチームの中には、もし全国に出ていたら優勝候補やったやろなというチームはいくつもあります」

西谷監督曰く、自信のあるチームで優勝したケースはそれほど多くないのだ。

西谷監督のいう「自信のあるチーム」とは個の能力が高くて、チームのまとまりにも優れているチームを意味する。実際、これまで8回優勝したうち、2018年をのぞいては、優勝した年の前年の方が期待の高いチームだったりする。

例えば、西谷体制で初載冠に輝く前年の2007年は、中田翔(巨人)、岡田雅利(西武)、1学年下に浅村栄斗(楽天)を擁しており、下馬評は高かった。しかし、センバツではベスト8に入るも、夏は大阪大会決勝で敗れた。そして翌2008年、前年より下馬評は低かったにもかかわらず、浅村を中心に抜群のまとまりを見せたチームは17年ぶりに全国の頂点に立っている。

2011年のチームも、前評判は非常に高かった。しかし、大阪大会決勝戦で石川慎吾(巨人)のいた東大阪大柏原にまさかのサヨナラ負け。当時2年生でエース格だった藤浪晋太郎(阪神)は勝ちきれず、1年生の森友哉(西武)はベンチ外だった。

しかしその悔しさを糧にした2012年は、前評判が高くなかったにもかかわらず、春のセンバツ1回戦で大谷翔平(エンゼルス)のいた花巻東に打ち勝つと、勢いに乗ってセンバツ大会を初制覇。夏も勝ち上がって頂点に立ち、春夏連覇を達成した。2014年は現コーチで、当時は主将を務めた中村誠がチームを一つにまとめての優勝で、それほど個性が際立っていたわけではなかった。

先輩たちの敗戦を目の当たりにして、謙虚になる

これらのチームに共通していたのは「先輩らほど力がない」と下の世代の選手たちが謙虚に実力を受け止められたことだ。浅村は「あの先輩らで負けたんやから、自分らはもっと練習しなくてはいけないと思った」と語っている。

「個のポテンシャルの高い選手が揃っている」と感じたはずのチームが儚く負けていく姿を見て、本来はエリートである彼らのお尻に火がつくのだ。

それが顕著に出たのが、2008、2012年のチームだった。

では、今年はどうか。秋の神宮を制しているとはいえ、もともと力があるというチームではなかった。

チームには捕手でドラフト候補と騒がれる3年生・松尾汐恩がいるが、森と比べて総合的な評価は現時点では高くないし、1番の3年生・伊藤櫂人も浅村ほどのスケールはないように見える。

2年生・左腕の前田悠伍の存在感は確かにあるが、投手の厚みで言えば、大阪大会の決勝戦で3年生投手が先発を任されない現状では、力があるとは言い難い。

しかし、だからこそ、手強いのだ。

大阪桐蔭の手強さは「勝ち方」を知っていることだ。大阪大会はどれも圧倒的なスコアだが、決勝戦に象徴されるように、着実に得点を重ねていく戦い方が持ち味だ。

大阪大会決勝戦は12安打で7得点。ホームランは出ていない。3回裏の先制の場面は2イニング連続で3者凡退に抑えて流れを掴んだところから、先頭の星子天真が出塁。2死3塁からカウントが有利になって、ストライクを取りにきたところを1番の伊藤が左翼前に運んだ。4回には松尾の右翼前テキサスヒットが2ベースとなり、4番の丸山一喜の中前安打で1点。犠打で送って、星子、鈴木の連続タイムリー、前田に長打が出て着実に得点を重ねて試合の趨勢を決めたのだった。

勝負どころがどんな場面であるかを理解して、匂いを嗅ぎつけた時は貪欲に得点を奪いにいく。一方、流れが悪い時は、ディフェンス面で耐えて反撃を待つのだ。個のポテンシャルが恐ろしく高いわけではないが、この戦い方のうまさこそ、優勝候補にふさわしいチームと言える。

元プロ・中谷仁監督が持つ、卓越した「投手マネジメント力」

今年の大阪桐蔭に刺客がいるとしたら、近畿大会で対戦した智弁和歌山のように投手力が長けているチームだ。

今大会、智弁和歌山はそれほど注目を浴びていないが、2004、2005年の駒大苫小牧以来の夏連覇が掛かっている。

就任4年目の中谷仁監督は、選手の個の伸ばし方と戦術の徹底に長けている指揮官と言える。元プロ野球選手らしく、野球の知識が豊富で、それらを高校野球に活かしている。

中谷監督が、特にその手腕を発揮しているのは「投手のマネジメント」だ。

エース格をチーム内に作りつつ、その使い方が非常にうまい。1回戦はエースを先発させて投げさせ、2回戦以降は一転して、エースをリリーバー待機させておくのだ。

2019年の大会では、3回戦の星稜戦で延長14回の死闘を演じているが、その際、エースの池田は6回から8イニング3分の1のみ。14回を1人で投げ切った相手エースの奥川恭伸(ヤクルト)と渡り合えたのは、複数投手をうまく使い分けたからだった。

頂点に立った昨年は初戦となった3回戦でエースの中西聖輝が先発。9回途中までを投げた。準々決勝では中西を温存。準決勝は中西が先発完投し、決勝戦でリリーフ待機して4回からマウンドに上がって胴上げ投手となった。

エースはチームの中心だから重要な場面で登板が多くなるのは致し方ない。しかし、だからと言って、エース依存はしないのだ。

投打で充実! 打倒・大阪桐蔭で優勝を狙う

昨年、甲子園で登板機会を得たのが塩路柊季、武元一輝の両右腕。今年のチームをWエースとして牽引している2人だ。

中谷監督のマネジメント手法によって、投手全体の底上げを図りながらチーム強化に成功している。決して無理をさせず、目先にある大会は野球人生の通過点であるかのようにうまく起用しているのだ。

高校野球の舞台で、これほどの采配を振るっているチームはそう多くない。

だから、智弁和歌山は強いのだ。

今年は先にも書いたように、塩路、武元のWエースだ。昨年と違って、信頼のおける投手が二人いるぶん、マネジメントはやりやすいだろう。連覇へ向けて視界良好といったところだ。

また、智弁和歌山はバッティングも秀でている。昨年はやや巧打に徹することが多かったが、今年は看板の破壊力を持ち合わせたチームになっている。練習から木製のバットを使いこなし、高校生とは思えない打球を和歌山大会で見せた。投打ともに充実した状態で大会に挑むと言えるだろう。

春夏連覇を狙う大阪桐蔭と、夏連覇の期待がかかる智弁和歌山――。

第104回全国高校野球選手権は、「連覇」が掛かる近畿の2校を中心に展開していくことは間違いない。


文/氏原英明

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