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東京ばな奈が、東京土産の大定番になったワケ。バナナの日に振り返る30年の歴史

集英社オンライン / 2022年8月7日 11時1分

今や東京土産の大定番とも言える東京ばな奈。しかし、なぜ「東京」で、なぜ「バナナ」なのだろう。8月7日のバナナの日を記念して、東京ばな奈の製造・販売を手がける株式会社グレープストーンの広報担当・合田周志郎さんにお話を伺った。

最大公約数的な「懐かしさ」としてのバナナ

——そもそも、なぜ「東京」で、なぜ「バナナ」なのでしょうか?

弊社が「東京ばな奈」の開発に着手したのは1989年。ちょうど元号が平成に変わるタイミングということもあり、「東京を代表する新時代のお土産をつくろう」という狙いがありました。というのも、当時は東京を代表するようなお土産が、まだほとんどなかったんです。もちろん、東京にも「雷おこし」や「人形焼」のような人気銘菓は存在しました。ただ、それはもう少しローカルなもので、地元で長年愛されてきた銘菓が「東京土産」としても使われている、といった様子だったようです。



——たしかに、雷おこしであれば、「東京のお土産」というよりも「浅草のお土産」といった方がしっくりきますね。

そうなんです。だからこそ、東京全体を代表するようなお土産を開発しようということになったんです。ただ、そういったコンセプトで商品を開発する場合、地元で採れる果物などをベースにするのが王道なのですが、当時の東京ではお菓子のベースになるような食材を見つけることができず……。そこで目を向けたのが、東京という土地の特異性です。

——と、言いますと?

東京には日本各地から人が集まってきますよね。だから「地のもの」にこだわるのではなく、むしろ出身地を問わず誰もが「親しみ」や「懐かしさ」を感じる食材をベースにしようと発想を転換したんです。その結果として辿り着いたのが、「バナナ」という食材でした。

「バナナ」というありふれた食材を選んだのは、当時の世相も関係しているようです。時代はまさにバブル真っ只中で、スイーツの世界でも高級路線が人気でしたが、いずれもっと素朴で親しみの持てるお菓子に人々が回帰するのではないか。そんな推測もあったと聞いています。

株式会社グレープストーンの広報担当・合田周志郎さん

「東京ばな奈」は女の子。だからリボンも結んでいます

——今回はじめて知ったのですが、「東京ばな奈」の正式名称は『東京ばな奈「見ぃつけたっ」』だそうですね。この特徴的なネーミングは、どのように生まれたのでしょう。

要素が多いので、順番に説明しますね(笑)。「東京」の部分については、先ほどご説明した通りです。「ばなな」を「ばな奈」としているのは、当時女の子の名前に「奈」をつけることが流行っていたことに由来していて、みなさんの家族や友だちのように、親しみを持ってもらえる商品にしたいという思いが込められています。だから、「東京ばな奈」は女の子なんです。

——東京ばな奈は女の子……! お菓子の性別については考えたことがありませんでした。

パッケージのデザインにリボンがあしらわれているのも、「東京ばな奈」が女の子だからだそうです。ちなみに画像データしかなくて恐縮なのですが、今日は発売当初に使われていた栞(お菓子の箱のなかに添えられた説明書き)を持ってきました。よろしければご覧ください。

——貴重な資料をありがとうございます!ちなみに、栞にプリントされているこの女性はどなたでしょう?

実はこの方、当時弊社で働いていた販売員さんなんです。というより、今も弊社で元気に働かれています(笑)。東京の女の子のイメージとして顔写真を使わせていただいたそうです。

——えええ、そうなんですか。その方が、今も在籍されているというのが、本当にすごいですね……! 話が少し戻ってしまいますが、「見ぃつけたっ」の由来も教えてください。

みなさんの思い出のなかにかくれんぼしているバナナの味を見つけてほしいと、そんな思いを込めて「見ぃつけたっ」までを正式名称としています。

——やっぱりキーワードは「親しみ」と「懐かしさ」なんですね。

もう一つキーワードをあげるなら「優しさ」でしょうか。バナナ香料を使わず、本物のバナナを裏ごししてクリームをつくっているのも、バナナの優しい味わいを追求したいからです。スポンジケーキもしっとりふかふかと優しい口当たりになるよう、火加減を細かく調整しながら焼き上げています。

絶妙のサイズ感と、優れた保存性も魅力に

——販売開始後は、すぐにヒット商品となったのでしょうか?

東京ばな奈の販売がはじまったのは1991年。翌92年には羽田空港と東京駅で販売する機会をいただき、これが認知度を高める契機となりました。とはいえ、それで一気にヒット商品になったかというとそうでもなく、口コミでジワジワと人気が高まっていったそうです。

——東京土産として定着した理由を、どのように分析していますか?

いくつかの要因があると分析しています。まずはサイズ感ですね。東京ばな奈のパッケージは、「アタッシュケースにすっぽり入る大きさ」を目安として設計されていて、当時のほかのお土産に比べると、サイズ感が一回り小さく、外箱も薄めにつくられています。それが「持ち運びしやすい」という評価につながり、荷物の多いビジネスマンのみなさんから支持されるようになったとのことです。

あとは当時としては珍しい、常温で保存できる生菓子だったことも大きいはずです。包装技術を工夫することで、バナナのフレッシュな美味しさをキープできるようになっています。

——販促面では、どのような工夫があったのでしょう? テレビCMなども活用したりしていたのでしょうか?

テレビCMを打ったことはありません。広告を通じて露出量を増やすよりも、「東京土産に東京ばな奈はいかがですか」という販売員の地道な呼びかけによって、少しずつみなさんに名前を覚えていただいた感じですね。今も弊社では「お客様の顔が見えますか」を合言葉に、お客さま一人ひとりと向き合う接客を心がけています。

東京という街とともに、進化を続けてきた東京ばな奈

——これまで御社が手がけた商品のなかで、商品名に「東京ばな奈」を含むものは100種類を超えるそうですね。特に大きな話題を呼んだものはありますか?

個人的に印象に残っているのは、東京スカイツリー®の開業にあわせて発売された「東京ばな奈ツリー」です。それまで社内で「ヒット間違いなしの奥の手」として、あえて温存していた「チョコバナナ味」を満を持して採用したはじめての商品です。

——ヒョウ柄の模様も印象的ですね。

東京ばな奈にとっても「柄物」はこれがはじめての試みだったのですが、お客さまから「かわいい!」との声をたくさんいただくことができました。今から振り返ると、「東京ばな奈=かわいい」という新たなパブリックイメージが定着するきっかけになった商品と言えるかもしれません。このヒットをきっかけに、現在ではさまざまな柄や模様をあしらった東京ばな奈が販売されています。

——ほかに話題になった商品はありますか?

2017年に上野動物園にパンダの赤ちゃん・シャンシャンが誕生したことをきっかけに販売した「東京ばな奈パンダ」も大変好評でした。当時は私も販売員として売り場に立っていたのですが、本当に開店から閉店までひっきりなしにお客さまがいらして。個人的にもすごく思い入れの強い商品ですね。

——スカイツリー®の開業や、パンダの誕生など、東京を象徴するような出来事にあわせてヒット商品が生まれているのが面白いですね。

たしかにそうですね。私たちとしては東京に注目が集まるタイミングで、みなさんに楽しんでもらえる商品をお届けしたいと努めてきただけなのですが、結果として「東京とともに進化してきたお菓子」と言えるのかもしれません。

コロナ禍で模索した、東京ばな奈の新たな可能性

——コロナ禍によって、東京を訪れる人が減ったこの数年間は、御社にとってもさまざまな苦労があったのではないでしょうか?

私たちとしては、あまり苦労をしたという感覚はなくて。むしろ新たな取り組みにチャレンジできた期間だったと捉えています。

たとえば、これまで「東京土産」であることにこだわり、販売店は都内に限定してきたのですが、コロナ禍の移動制限を受けて、全国各地に期間限定のショップをオープンしました。

ここ数年でコラボ商品の開発が一気に加速したのも、自粛生活を余儀なくされるみなさまに、私たちなりに少しでも楽しさをお届けしたいと考えたからです。ほかにも海老名サービスエリア(EXPASA海老名)で、東京ばな奈ブランドを冠したソフトクリームやカレーまんを販売するなど、これまでにない発想で東京ばな奈の可能性を追求できた数年間だったと感じています。

——そのほかに新たな取り組みなどがあれば教えてください。

新たな取り組みというわけではないのですが、2018年に8月7日が「東京ばな奈の日」として認定されたことを記念し、毎年8月に『東京ばな奈こども自由研究大賞』と題して、東京ばな奈に関係する作品をSNS上で募集しています。今年度からは中学生以上を対象とした「おとな部門」も新たに設けられました。興味のある方は、ぜひ公式アカウントをご確認いただけますと幸いです。自由な発想での応募をお待ちしています!

取材・文/福地敦

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