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ネオテニー(幼形成熟)の典型ともいえる日本男児は、世界一短パンが似合う国民なのだ!

集英社オンライン / 2022年8月7日 10時1分

一歩間違えば中学生の夏休みになってしまいがちな、ニッポン男児のショートパンツスタイル。だが、毎日、暑い。大人だって短パンをデイリーにカッコよく取り入れたいのだ。元smart編集長の佐藤誠二朗氏の考える斬新な“短パン”考とは?

オフではいつも短パンなのに、オンでは必ずロングパンツのアラフィフ世代

丈の短いパンツにもいろいろな種類と呼び名があり、0〜1分丈の「ホットパンツ」から、1〜3分丈の「ショートパンツ」、2〜3分丈の「クオーターパンツ」、4〜6分丈の「ハーフパンツ」、7〜8分丈の「クロップドパンツ」などなど、なかなかややこしい。
このうち、「ホットパンツ」は基本的に女性ものだし、「クロップドパンツ」はどちらかといえばロングパンツの部類なので外し、ショートパンツからハーフパンツについて考えたいのだが、いちいち呼び名で悩むのもわずらわしいので、より広義で使われる「短パン」でいこう。



どこからどう見ても立派な大人の僕(53歳)は、今この原稿を書いている瞬間も短パンを穿いている。
職業はフリーランスの編集者兼ライターなので、仕事の9割がたは自宅の自室にこもって、ひとりパソコンに向かう。
だから蒸し暑い季節は、涼しく快適に過ごせる短パンスタイル一択。毎年、夏はほぼ毎日のように短パンで暮らしているのだ。

こんな格好ですみません。今日は20年以上前にOKURAで買ったハリウッドランチマーケットの短パン

とはいえ、平均して週1〜2回は打ち合わせや取材、撮影などの仕事のため外出し、人と会わなければならない。
僕は長く若者向けストリートファッション誌の編集長をやっていたので、フリーになった今もファッションやカルチャーがらみの仕事が多い。
だから会う相手もスーツやネクタイ姿など皆無で、仕事の場といっても、皆、思い思いにカジュアルなオシャレを楽しんでいる。
夏場は短パンの人も珍しくない。

だが僕自身はどうかと言えば、会う相手がどんなに親しい間柄の人であっても、必ず短パンからロングパンツに穿き替えて出かけるようにしている。
短パン大好きおじさんなのに、仕事の場ではどうしても抵抗感があるのだ。
改めてそれはなぜかと考えると、そういう世代だからとしか言いようがない。

“短パン”街穿きカルチャーが浸透したのは1990年代から

今の若い人は意外に思うかもしれないが、1969年生まれの僕がおしゃれに目覚めた頃、つまり1980年代後半の若者の間で、短パンの存在感は今よりずっと小さかった。

『ポパイ』や『メンズノンノ』、『ホットドッグ・プレス』といった当時の若者向けファッション誌では、夏になると短パンを使ったコーディネートが紹介されたりはしていたが、それはあくまでもリゾートスタイル。
“海に行くときは短パン!”というような、特別なシチュエーションでのスタイル提案であり、現在のような日常のタウンウェアとして市民権を得ていたわけではなかったように思う。

僕の好きなパンクやモッズ、スキンズ、マッドチェスターといったロック系スタイルのワードローブにも、短パンは含まれていなかった。
だから僕は学生の頃も就職してからも、夏でも必ずロングパンツを穿き、それが大人というものだと信じていた。

しかしストリートファッションの年代記的に言えば、その頃からすでにアメリカでは、ハーフパンツを街で穿くユースカルチャーが発生していた。
1980年代初めに発生したアメリカンハードコア、それに1980年代中頃から急拡大したスケーターやヒップホップ系の若者はスポーティな服を好む傾向が強く、街着として短パンを選択するようになっていたのだ。
ある種それは、“大人の男はロングパンツ”という、既存社会の決めつけに対するレジスタンスの意味もあったのだと思う。

80年代アメリカンハードコアの代表格、マイナー・スレットのボーカリスト、イアン・マッケイはいつも短パン。DVD『MONOR THREAT DC SPACE•BUFF HALL•9:30 CLUB』

そうしたサブカルチャーはリアルタイムで日本にも届いていたので、今でいうインフルエンサー系の感度高めな人の中には、短パンを日常的に穿く人もいた。
具体的に言えば、高校生の僕が愛読していた当時の『宝島』には、まだ20代だった藤原ヒロシや高木完がよく出ていたが、アディダスのハーフパンツにロングソックス&スニーカー、カンゴールのハットというような出立ちで、かなり目立っていた。

今考えると、それは当時の先端をいくおしゃれスタイルだったのだが、僕はそこまで感性が鋭くなかったので、「げ、大人が半ズボン穿いてる。ドリフか」と思い、とてもじゃないが自分で真似しようなどとは思わなかった。
当時の一般的な若者は、まだそんな感覚だったのだ。

大人の半ズボンといえば。DVD『8時だョ! 全員集合 ゴールデン・コレクション3』

そんな僕でも90年代中頃になると、夏は短パンで街を歩くようになった。
80年代にはトンガリすぎていて日本では取り入れにくかったヒップホップやスケーター、それにアメリカンハードコア(から発展したメロコア)などのカルチャーとファッションがついに大衆の心をとらえ、メジャー化していたのだ。
今ではそんなカルチャーの下地など意識することなく、広い層が普通に街着として短パンを穿いているが、その発端はこうした90年代カルチャーなのではないかと思う。

当時の僕は20代半ば。若者ではあったものの、もうすっかり大人である。
つまり僕ら世代は、大人になってから恐る恐る短パンのタウンユースに手を出した、“やや乗り遅れ”世代なのだ。
だから今も、少しでも改まった場では短パンを穿けないのではないかと思う。

ネオテニー(幼形成熟)の極みである日本人と短パンスタイル

ところで僕は、もしかしたら日本人はDNAレベルで、世界一短パンスタイルと相性がいい国民なのではないかとも思っている。

人類は、ネオテニー(幼形成熟)という生物現象の典型例だという話をご存知だろうか?
子供の状態を保ったまま性的成熟に至るネオテニーは、ウーパールーパーの俗称で知られる両生類・メキシコサンショウウオが有名だが、オオカミの子供の形のまま成熟するイヌなど、哺乳類でも数多くの例が見られる。

現代人の大人の顔つきはチンパンジーの幼児に似ていて、肌は体毛やシワが少なくスベスベしている。
本来であればヒトもチンパンジーのように、大人になればアゴが前方に突き出し、身体中に毛が生えて皮膚はシワだらけになるはずのところ、ネオテニーであるがゆえに子供っぽい姿のまま一生を終えるのだ。

チンパンジーは子供の方がヒトに似ている。PHOTO:Buffa(左), Richard Toller(右)/ともにflickrより

そして人類の中でも東アジア人は、世界の他の地域の人と比べて体が小さく、頭は大きくて童顔、手足が短く体毛が少ないなど、ネオテニーの特徴が強く現れていることで知られる。
ネオテニーは身体的特徴だけではなく精神性に対しても用いられる概念だが、東アジア人の中でも日本人は特に、成熟よりも未熟を好む性向が強く、それが世界から注目されるマンガやアニメなどのいわゆるオタク系文化を育んだのではないかとも言われているのだ。

つまり何を言いたいかというと、“ネオテニー人間”の極致である我々日本人は、世界中で一番、短パン、いや半ズボンが似合うし、堂々と穿いていい人たちではないかと思うのだ。

だから、みんな夏は短パン穿こうぜ!

などと、53歳なのに無責任な感じで本稿を締めようと考えるのも、ネオテニー気質のなせる技なのかもしれない。

怒られそうなので最後に少しだけ、まじめに。
いまだ抵抗がある大人の男性も、TPOとコーディネートさえ間違えなければ、短パンスタイルはとてもおすすめだ。
長さは短すぎず長すぎず、膝が少し出るくらいのいわゆる「ハーフパンツ」を選び、サイズはバミューダパンツのようなパツパツのものではなく、ややゆとりのあるものがいいだろう。
トップスは普通のTシャツでもいいのだが、長袖Tシャツや衿付きの少しドレッシーなシャツ、ポロシャツなんかを合わせるとぐっと感じが良く見えるはず。

TPOをわきまえつつ、しっかりと考えた短パンコーディネートをすれば、夏場のオシャレ指数はぐっとアップする。

文/佐藤誠二朗

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