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「積乱雲には地域によって違う名前がある」面白すぎる雲のはなし

集英社オンライン / 2022年8月10日 16時1分

雲がモクモクしているのは? 雲がどれくらい発達すると雨になるのか? 「ゲリラ豪雨」の時はどんな雲が発生するのか? 雲にまつわるさまざまな知識を、雲研究者・荒木健太郎先生がまとめた『もっとすごすぎる天気の図鑑 空のふしぎがすべてわかる!』(KADOKAWA)より一部抜粋、再構成してお届けする。

雲がモクモクしているのは空気が乱れているから

青い空のモクモクした白い雲――これは積雲(わた雲)という雲です。積雲がモクモクするのには、理由があります。
晴れた日に太陽光を受けた地面が温まると、地面に近い空で上に向う上昇気流と下に向う下降気流がとなり合うように並ぶ、熱対流という現象が発生します。これはアツアツのおみそ汁などでも見られ、細胞(英語でセル)のように見えるのでセル状対流ともいいます。熱対流の上昇気流(サーマル:熱気泡)で持ち上げられた地面付近の空気が、積雲をつくります。さらに、上昇気流が雲のなかを通って空気を乱すため、積雲はモクモクした姿になるのです。なお、上昇気流がとても弱い層雲や高層雲、巻層雲などはモクモクしません。 このように、「モクモクした雲のある空には上昇気流がある」と読み取れます。積雲は数分〜10分間程度の寿命なのですぐに消えてしまいますが、積雲のあった位置を眺めていると、次の積雲が生まれる瞬間に立ち会えるかもしれません。


©Kentaro Araki/KADOKAWA

雲のモクモク度合いで雨が降るかどうかがわかる

夏の風物詩といえば、空にモクモクと立ち昇る白い雲です。夏は天気が急変しやすいですが、雲のモクモク度合いから雨が降りそうかどうかがわかるのです。

まず空に現れるのは積雲です。積雲の上部が平らなかたち(扁平積雲)のときは、雲が成長しにくい安定した大気の状態なので、晴れが続きます。一方、雲が成長しやすい不安定な大気の状態のときは、積雲の上部が盛り上がった並積雲が現れ、それが成長すると入道雲と呼ばれる雄大積雲に。雄大積雲の下ではシャワーのような雨が降っており、さらに雲が発達すると雷を伴う積乱雲になります。雲の発達できる限界の高さまで成長した積乱雲の上部には、かなとこ雲という横に広がる雲ができます。この下では土砂降りの雷雨になっています。

雲を見て天気の変化を予想することを、観天望気といいます。とくに夏の空のすごくモクモクした雲は、天気が急変するきざし。雨が降る前に、早めに帰宅しましょう。

©Kentaro Araki/KADOKAWA

©Kentaro Araki/KADOKAWA

積乱雲の下に見える「雨の柱」に要注意!

青空に突然暗い雲が広がってきた――。これは、積乱雲が近くで発達しているサインです。積乱雲が近づいてくると、雲の下に真っ暗な雨の柱(雨柱・雨脚)が見えることもあります。
積乱雲は、不安定な大気の状態で発達し、雷雨をもたらします。十種雲形のなかでもいちばん背が高く、ときには雲の頭が高度15㎞を超えることも。積乱雲のなかには水のつぶや氷の結晶があり、とくに強い上昇気流に伴って雪や霰が成長します。この雪や霰は落下しながら融けて、雨となって降ってきます。それが太い柱のように見えるのは、積乱雲の横方向の広がりが数㎞〜十数㎞と狭く、さらにその一部で勢いよく雨が降るためです。

積乱雲による局地的な大雨は「ゲリラ豪雨」と呼ばれることもあり、積乱雲が真上にくるとあっという間に土砂降りに。雨柱が見えるのは、とても近くまで積乱雲がやってきている証拠です。建物内にすぐに入って安全を確保しましょう。

©Kentaro Araki/KADOKAWA

積乱雲が発達しやすい「曜日」がある?

驚くことに、「積乱雲は水曜日に発達しやすい」という研究結果があります。
東京など人口の多い都市はとくに、人間活動が休日に比べて平日に活発です。そのため、人工排熱などの影響で平日に気温が高くなり、休日に気温が低くなるという週末効果があります。週末効果は空に浮かぶ小さなチリ(エアロゾル)の濃度にも起こっており、大型トラックの交通などの人間活動によって火〜木曜日に濃度が高いという研究があります。エアロゾルの多さは雲のできやすさにも関係します。きれいな空では積乱雲内で雨がすぐに成長して降ってきますが、汚れた空では雲のつぶが多くできるためになかなか雨になりません。結果として、水蒸気の供給量が多くなって積乱雲が発達、水曜日を中心に雨も増えるというのです。
この説はまだ議論中ですが、人間活動は空にさまざまな影響を与えています。雲と上手に付き合うために、まずは空を知ることからはじめましょう。

©Kentaro Araki/KADOKAWA

積乱雲には地域によって違う名前がある

古くから各地で入道雲(雄大積雲)や積乱雲は夏の風物詩として親しまれており、地域ごとに呼び名があります。関東・江戸では坂東太郎と呼ばれていますが、これは本来利根川を指している言葉。利根川の上流域で発達した積乱雲が川に沿って平野部にやってきたことに由来すると考えられています。
川に由来する名前はほかに、九州・筑後川の筑紫次郎、四国・吉野川の四国三郎があります。また、京都では丹波太郎、山城次郎、比叡三郎の3兄弟が有名です。

もともと入道雲という名前も、由来は坊主頭のお坊さんや大入道(坊主頭の妖怪)といわれているように、日本では自然現象を擬人化して親しむ文化があります。積乱雲は農業や漁業など生活に深く関係するため、地域によって「となり合う旧国名+太郎」という命名法で身近にとらえられていたと考えられています。お住まいの地域の積乱雲の名前を調べてみると、おもしろいかもしれません。

©Kentaro Araki/KADOKAWA

すごすぎる天気の図鑑展
https://tokorozawa-sakuratown.com/special/tenkizukanten/
本企画展では、日々さまざまな表情を見せる「雲」をメインテーマに、本書から夏休み自由研究の手助けになりそうなオススメネタをピックアップして写真や図解、イラストをふんだんに使って紹介。さらに、AR、VR、MRのお天気キャスター体験、最新技術を駆使した体験型企画も。
開催期間:2022年9月25日(日)まで
会場:角川武蔵野ミュージアム5階 特設会場(武蔵野回廊・武蔵野ギャラリー)
時間:日~木曜 10:00~18:00/金・土曜 10:00~21:00
※最終入場 閉館30分前
休館日:毎月第1・第3・第5火曜日(祝日の場合は開館・翌日閉館)
※最新情報は角川武蔵野ミュージアムホームページをご覧くだい
https://kadcul.com/guide/info

もっとすごすぎる天気の図鑑 空のふしぎがすべてわかる!

著者:荒木健太郎

2022年04月28日

1,375円(税込)

単行本 :176ページ

ISBN:

9784046055866

おもしろくてためになる、天気にまつわる知識を、今回も図解やイラスト、写真をふんだんにつかって詳しくご紹介します。とっておきのネタを教えてくれるのは、日本でいちばん有名な気象学者・雲研究者の荒木健太郎氏。雲・空・天気・気象に加えて「季節」の章も加えて、子どもから大人まで楽しめる内容です。「雲の中に入るとどうなる?」「世界一かんたんな彩雲の探し方」「カラフルな雪がある」「-50℃で聞こえる星のささやき」など、誰かに話したくなる、71のトリビアが満載!

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