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夏はサウナ前に“水通し”を。医師に聞く、安全にととのうテクニック

集英社オンライン / 2022年8月11日 14時1分

夏真っ盛り。猛暑が続くが、銭湯やスパ施設のサウナは相変わらず大盛況だ。しかし暑い季節にさらに暑い室内で汗をかくのははたして健康にいいのだろうか? かえって体に悪いのでは? 熱中症の危険は? 医師で日本サウナ学会代表の加藤容崇さんに“真夏のととのえ方”を聞いた。

サウナ発祥の地であるフィンランドの夏が涼しくて過ごしやすいのに対し、日本の夏は高温多湿。この違いを踏まえつつ、まずは基本的なサウナの入り方を知っておこう。そのうえで、夏ならではのちょっとしたととのうための工夫についても知りたい。

まず、基本となるサウナの入り方について。医師で日本サウナ学会代表の加藤容崇さんによれば、「サウナ→水風呂→外気浴」が基本の1セットで、これを3セット繰り返す。各セット間には、こまめに水分補給を行おう。最終セットは、「サウナ→10秒程度の短い水風呂→水シャワー」で、体の芯を冷やさずに皮膚の表面を引き締めるのがおすすめ。これによって特に、夏はだらだらと汗が流れるのを防ぐことができるという。



「サウナの基本的な流れはありますが、あくまで参考程度に。最近では、ととのうのに適したサウナの入り方にはかなり個人差があることがわかってきました」(加藤さん)

夏はサウナ前の“水通し”がおすすめ

夏場、サウナ室で「あちぃい……」と声を漏らし、ゆでダコのようになっている人をよく見かける。80℃以上もの室内で我慢し続けるのは、かえって体に悪いように見えるが?

「サウナに入る目的は自律神経の機能を活発にすることです。通常サウナ室に入ると、『温かい』と心地良さを感じて副交感神経が優位になる。その後、『熱い』と体が危機感を覚えて交感神経が急激に活性化して汗が出ます。

しかし、夏は暑い屋外とクーラーの効いた涼しい室内を出入りするせいで、自律神経が弱っている。そのうえ、体も最初から熱をためています。そんな状態でサウナ室に入っても副交感神経が高まらずリラックスできないために、『暑い』『きつい』など不快に感じストレスホルモンが多く出てしまいます。いつもと同じ6分間、サウナ室にいたとしても、早い段階でしんどくなってくる。サウナ室で快適に過ごせないようなら、湯あたりのような状態になったり、脱水症状になったりして危険。我慢は禁物です。

ではどうすればいいのか? 私が普段やっているのは“水通し”です。サウナ室に入る前に水風呂に浸かり、火照った体を一旦冷やす。水風呂の温度が低くて難しい場合は、水シャワーを浴びたり、クーラーの効いた脱衣所で過ごしたりするのもいいでしょう。クールダウンしてからサウナ室に入ってみると、温かくて気持ちいいと感じるはずです」

また、サウナ室を出るタイミングを6分、10分など時間で決めている人が多いが、体に負担を掛けないようにするためには別の基準を設けたほうがいいのだという。

「その日の体調や施設によって体の温まり方は違います。私は、体内の自律神経の状態を客観的に判断できる脈拍数を基準にしています。しんどくない程度の運動時の脈拍数になったらサウナ室を出る。いちいち脈を測るのは面倒だという人は、頭の中で聞きなれた曲を再生してみてください。曲のリズム(BPM=1分ごとの拍)と脈拍数がシンクロすればOK。

『ドラえもん』の『あんなこといいな、できたらいいな』という曲のリズムの速さは1分に100回。人によって脈拍数は異なるため、自分の脈拍の目安となる曲を探してみてはいかがでしょうか。他に、ゆずの『夏色』(120/分)やTUBEの『シーズン・イン・ザ・サン』(124回/分)などは季節的にもぴったり!」

長い水風呂は“ととのわない”

サウナ室の脇にあることの多い水風呂。サウナ室を出て、汗を流し、息を吐きながら体を沈めたときの心地よさは格別だ。暑い夏は長めに浸かる人も増えていようだ。

「水風呂に浸かる最適な時間は20〜30秒で、1分以内が目安。冷やされた血液が全身を一周するのにかかるのがちょうどこのくらいだからです。また、『気道がスース―する』というのも水風呂を出るタイミングの目安となります。体の表面が冷たくなるけれど、深部は熱いままの状態。この温度差が生まれることで頭がすっきり、覚醒したような感覚が得られ、ととのうのです。

では、長く浸かり過ぎるとどうなるか? 体の芯まで冷えてしまい、ととのう感覚が薄れてしまいます。しかし、夏場は水風呂で冷たくて気持ちいい、涼しいという感覚を優先したい人も多い。どちらが正しいということはなく、すっきりととのえるか、気持ち良さを味わうか、そこは個人の好みです。ただし、長く入り過ぎないこと。低体温症となるリスクがあります。一般的な16~18℃くらいの水風呂であれば、5分以上は避けたほうがいいでしょう」

外気浴より内気浴のほうがととのう場合も

水風呂を出たら、気化熱で冷めないように体を拭いて、外気浴。屋外にプラスチック製の「ととのいイス」が並んでいる施設もたくさんあるが、最近は夜でも気温が高く、じめじめしているし、昼間は、日差しが強い。

「極端に熱いサウナ室、急激に冷たい水風呂を経て外気浴をすると、生命の危機を脱したと体が感知し、副交感神経が通常よりも大きく優位になります。アドレナリンがほどよく残りつつ、リラックスして、意識はスッと研ぎ澄まされているようなととのった状態に。

サウナの真骨頂ともいうべき休憩の時間は、体に負担がかからない環境を選ぶことが大切です。一般的には外気浴が良いとされていますが、季節柄、外の気温や湿度が高過ぎる場合は、あえて内気浴というのも手。脱衣所のほうが涼しくて、扇風機の風が当たって心地良いならば、屋外にこだわる必要はありません。真正のととのいタイムは、水風呂を出てから約2分で終了します。どこで体を休めるのがベストか、サウナ室に入る前にチェックしてみてください」

サウナ中はスポーツドリンクより断然、水のワケ

浴室へのドリンクの持ち込みが許可されている銭湯やスパ施設へ行くと、サウナ室前の棚にはペットボトルがずらり。900ミリリットル、2リットルなどビッグサイズのスポーツドリンクを流し込むサウナーの姿をよく目にする。

「サウナに入ると大量の汗をかくため、各セットの小まめな水分補給は必要です。合計500ミリリットルから1リットルは飲むようにしてください。しかし、スポーツドリンクの摂り過ぎは要注意。サウナで得られるはずの効果がなくなりかねません」

サウナに入ると代謝が上がり、エネルギーを消費しやすくなり、体型のコントロールにつながる。これは、首の前方にある小さな臓器、甲状腺から出る甲状腺ホルモンによるものだという。

「甲状腺は代謝のスイッチを切り替える役割を担っています。では、サウナに入るとなぜ甲状腺ホルモンが出るのか? 高温のサウナ室は、人の体にとって非日常的な危機的状況。そこで甲状腺が働き、体内に蓄積している脂肪を使って生き延びようとするのです。

しかし、エネルギーとなる糖分がたくさん含まれるスポーツドリンクを飲むと、『外からエネルギーが入ってくるから大丈夫』だと体が認識し、甲状腺ホルモンが出なくなってしまうのです。サウナ中は水がベスト。スポーツドリンクはサウナ後に飲むのがいいでしょう。また、汗とともに塩分が失われますが、現代人はおしなべて塩分過多なので、3セット程度のサウナであれば特別に多く塩分補給する必要はないと思います」

ヒリヒリするような日焼けの後は?

夏は旅行やアウトドアで日焼けをしてしまうことも多い。日焼けをした直後は、サウナに入っていいのだろうか?

「日常生活での日焼け程度ならば問題ありません。しかし、山登りや海水浴など、強い日差しを長時間浴びた場合はやめておきましょう。ヒリヒリして痛みがあるのは、皮膚が急性の炎症を起こしている状態。サウナに入ると血流が良くなり、症状が悪化してしまいますのでご注意を。サウナの熱刺激を受けると細胞を修復するヒートショックプロテインが出るのですが、こちらは慢性の炎症にのみ効果があります」

最後に、真夏のサ活を充実させるために大切なのは、マナーを徹底することだという。

「濡れた体のままサウナ室に入らない、感染防止のためサウナ室で会話をしない、水風呂に入る前に汗をちゃんと流す、座ったイスにはかけ湯をするなど、決まりごとを確認し、きっちり守ってほしいですね。コロナの第7波に加え、記録的な猛暑と大変な時期ですが、お互いに快適にサ活ができるように思いやることで、免疫力をつけ、健康的に夏を乗り切ってほしいです」

取材・文/小林 悟
写真/Getty Images

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