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9歳までが勝負! 家庭格差が出やすい子供の国語力を伸ばす5つの方法

集英社オンライン / 2022年8月24日 10時1分

心理学に「9歳の壁」という概念があるように、子供は9歳くらいまでに国語力をある程度身につける必要がある。そして、その習得レベルには「家庭格差」という大きな要因がある。具体的に家庭でできる子供の国語力を伸ばす5つの例を紹介しよう。

「外国語」や「プログラミング」教育よりも大切なもの

現代は、グローバリゼーションの中で国際競争が激しくなる一方で、多文化共生を目指さなければならなくなっています。

その中では、非常に高い国語力が求められます。昔は「明るく元気な子」を育てれば良かったのが、現在は保育園の時代から「AIに負けないグローバル人材」の育成が目指されているのが良い例でしょう。

しかし、今の子供の国語力はそれに追いついているでしょうか。



子供というのは自由な遊びの中で感性や想像力を育み、語彙を増やし、抽象的な概念を把握できるようになったり、物事の因果関係を適切に考えらえるようになったりします。心理学用語で「心的辞書(メンタル・レキシコン)」と呼ばれるものを身につけるのです。これが国語力に大きな影響を及ぼします。

しかし現代の社会には、むしろ子供たちの国語力の成長を阻害する要素が地雷のように散らばっています。家庭では親が多忙になって「スマホ育児」が進んだり、自由な遊びや他者との交流が限られたりすることで、なかなか情緒力や想像力を育めません。親が心を病んで子供と会話さえままならないという家庭も少なくない。

学校も同じです。今の学校では外国語にプログラミングにキャリア教育と新しい教育を次々と教え、管理主義を徹底することに追われています。目に見える成果が出るものばかりを追い求め、感性や思いやりを育む教育を行う余裕はありません。

ネットの影響も甚大です。国語力が養われていない状態で、子供たちはSNSの短文テキストコミュニケーションや、言語がほとんど存在しないゲームに没頭する。しかも、そこで飛び交う言葉の多くは、生きていく力としての国語力に求められる言葉とはかけ離れたものです。

私は外国語やプログラミングを全否定しているわけではありません。それらが意味のあるものになるには、国語力というベースが必要だということを指摘したいのです。

家庭で誰でもできる国語力養成5例

こうした現状を受け止め、子供たちの国語力を取り戻すにはどうすればいいのでしょうか。子供がある程度小さな年齢だと仮定して5つほど例を出してみましょう。

① リアルでの対話や読み聞かせ
子供は2次元のものを理解する能力が弱いので、テレビやスマホを介した育児より、絵本の読み聞かせなど親とのリアルの関係性の中で安心して一緒に未知の世界を疑似体験していくことの方が大きな成果が得られるとされています。

② 言葉の多様性を知る
たとえば「切る」という言葉には、紙を切る、縁を切る、水を切るなど多様な意味があります。言葉とは一つの意味を覚えて終わりではなく、いろんな意味を覚えて育てて大きくしていくものです。そのため、親が多様な表現をするとか、そうした言語空間に身を置くということが重要になります。

③ 思考を癖づける
何か問題が起きた時、言葉で思考する習慣のない子供は「クソ」とか「もう嫌」と言い放って何も考えなくなります。しかし、親からいつも「今日あったことを考えてみよう」「どうしてだと思う?」と思考を促されている子は、同じ状況にあっても「なぜ彼はああしたんだろう」「つらいけど、仲直りしたいな。どうするべきか」と自然に考えられるようになります。これが、考える子と考えない子の違いを生むことになります。

④ 異なる価値観に触れさせる
一つの価値観に凝り固まれば、それ以外のことを考えられなくなります。しかし、幼い頃から美術館、動物園、博物館、体験型イベントなどへ連れていき、色々な価値観に触れさせると、視点が多様化し、関心が広がります。それが思考の幅の広さや、異なる価値観を認めることにつながります。

⑤ 感情のグラデーション化
哀しみの感情を何でも「死にたい」と極端な言葉で表現する子がいます。しかし、哀しみの中には「切ない」「がっかりだ」「胸が苦しい」など様々な程度があります。それを的確に言葉で把握できれば、自分の感情に合った行動をすることができます。

語彙を豊かにすることで、自分の感情を適切に把握すれば、感情に適した行動をとることができます。逆に言えば、「悲しい」をすべて「絶望」で考えれば、大したことでもないのに「死にたい」と考えるようなことが起こります。

子供の国語力には家庭格差が出やすい

ここではすべてを説明しきれませんので、フリースクールから名門校までもが取り組んでいる国語力をつけるための方法については、ぜひ『ルポ 誰が国語力を殺すのか』を読んでいただければと思います。

ここで一つ本質的なことを言えば、子供は9歳くらいまでに国語力をある程度身につける必要があります。心理学に「9歳の壁」という概念があるように、それ以降は培った国語力を応用して勉強なり人間関係を築いていく時期に入るためです。

それくらいまでにしっかりとした国語力をつけさせるにはどうするべきなのか。

私は国語力には「家庭格差」が非常に大きいと思っています。親が意識的に国語力を身につけさせようとしている家庭とそうでない家庭とでは、雲泥の差がでます。だからこそ、それくらいの年齢までは、外国語だのプログラミングだのと次々と新しいことをさせるより、じっくりと国語力を育ませることに注力することが重要なのです。

本書にも書きましたが、高い国語力を持っている子供は自然と学力も上がりますし、何より人間として生きる力を身につけることができます。それこそが、今の親や子供が目指すべきことではないでしょうか。

#3へつづく

文/石井光太

#1 教員の8割が感じている子供の「国語力低下」が引き起こす深刻な問題
#3 開智日本橋学園中学が取り組む「国語力」を上げるための先進的な授業(9月2日10時公開予定)

『ルポ 誰が国語力を殺すのか』(文藝春秋)

石井光太

2022年7月27日

1760円(税込)

単行本 336ページ

ISBN:

978-416391575-3

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