1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. 芸能総合

「酔中花」ヒットに雑誌連載、初書籍。令和の坂本冬美が爆上がりのワケ

集英社オンライン / 2022年8月30日 17時1分

桑田佳祐の楽曲提供による『ブッダのように私は死んだ』(2020年)のリリースで世間を唸らせた坂本冬美が、さらに沸騰している。週刊誌でのコラム連載スタートを皮切りに、新曲『酔中花』がカラオケの月間演歌・歌謡ランキングでトップ10入り。『Snow Man』目黒蓮との雑誌対談、明治座座長公演、 DVD『NHK紅白歌合戦の軌跡』と自身初となる書籍の発売…と、坂本冬美銘柄が爆上がりだ。でも……なぜ、今、坂本冬美?

坂本冬美さん 酔中花 日本橋

男に甘えた経験がない?

――桑田佳祐さんが作詞作曲をした『ブッダのように私は死んだ』に続く、新曲『酔中花』が、カラオケ2社の月間演歌・歌謡ランキングでトップ10入りです。

そうなんですよ。他は全て昭和の名曲……私が憧れてやまない、石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』『天城越え』、美空ひばり大先輩の『川の流れのように』『愛燦燦』、テレサ・テンさんの『時の流れに身をまかせ』『つぐない』……他にも、みなさんが口ずさめる名曲ばかりで。いったい、どうしちゃったんでしょう!?



――いや、それは、こちらがお訊きしたいことで。

ですよね、ごめんなさい(苦笑)。
たしかに、これまでの私の曲は「カラオケで歌うには難しい」というお声が多くて。それに比べて今回の『酔中花』は「歌いたくなる曲ですよね」と言ってくださる方が、ものすごく多いんですけど……それにしても……ですよね。う〜ん、なぜ、でしょう?

――坂本冬美さんご自身にも、わからない?

これまでは、ポップス系の歌を出したら、次は路線を変えて……「おぉ、そうきたか!」と言っていただけるような方向でやってきたんですけど、今回は、桑田佳祐さんが指し示してくれた新しい道……“演じるように歌う”という流れを堰き止めるんじゃなく、繋げていきたいという強い思いが私にあって。

――周囲もその坂本さんの思いに乗っかった!?

乗っかったというより、スタッフは、みんな同じ気持ちでいてくれました。詞を書いてくださった吉田旺先生と、凛とした中にも儚く健気な女性を思わせる素敵な曲を作ってくださった徳久広司先生も、そんな私の想いを汲み取ってくださって。その結果が、カラオケランキングに結びついたんだと思います。

――トップ10入りを知ったときの素直なお気持ちは?

最初に聞いた瞬間は、「ウソッ!?」と叫びながら、5mほど後ろに飛び退きそうになりました(苦笑)。それから、じわじわと喜びが込み上げてきて、その場に誰もいなかったら、“わ〜〜〜〜〜い”と叫んでいたかもしれません(笑)。

――新曲『酔中花』は、冬美さんにとっても歌いやすい曲でしたか。

それがですねぇ、確かに、音域はそれほど広くないですし、メロディも覚えやすいし、歌いやすいのは確かなんですが……。

――主人公の女性を演じるのが難しい?

そうなんです! レコーディングのときも、徳久先生が、「ちょっと鼻にかけて、男の人に甘える感じで」とおっしゃるんですけど、これまでの私の人生で男の人に甘えたという経験が、1ミリも、微塵も、欠片もなくて(苦笑)。もう、難行苦行の連続です。
特に、最後の“す・い・ち・ゅ・う・か”の、“か”が、何度歌っても、先生がおっしゃる「どこか甘えたような“か”」というのが上手く表現できなくて。もう、何度録り直しをしたことか。

――聞くときも、カラオケで歌うときも、“す・い・ち・ゅ・う・か”の“か”に、注意ですね。

はい! 間違っても私のように、女々しい“か”じゃなく、甘えるような鼻にかかった、“か”で、歌ってみてください。

桑田佳祐が紡ぐ、運命の赤い糸

――『Snow Man』目黒蓮さんとの対談は、激アツでした。

あれは……私の我儘というか、職権濫用というか、反則スレスレといいますか(苦笑)、スタッフの方がご尽力くださいまして。おかげで本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。私のために時間を作ってくださった目黒蓮くんにも感謝です。

――さぁ、そして9月20日からは、明治座で1ヵ月近くに及ぶ座長公演が幕を開けます。

第一部の芝居は石井ふく子先生が演出をしてくださる人情劇で、私がいただいたお役は、大酒飲みで、いつもガミガミガミガミ、文句ばかり言っている長屋のおかみさんなんですが……。

――これまでは花魁をはじめ、華やかな役が多かった冬美さんにしては、珍しく地味な役です。

いままでも私なりに一生懸命にやって来たつもりでしたけど、振り返ると、「私は歌手だから」という心の甘えがどこかにあったような気もしていて。でも、石井先生ははじめてお会いしたときから、私をひとりの役者として見てくださっていて。
セリフが多く、見た目は地味という今回の役も、「すべてお勉強ですよ」という、石井先生の親心から来ているものだと思って、より一層頑張らなきゃと気合を入れ直して取り組んでいます。

――それくらい、難しい?

いっつも、文句ばっかり言っているというのは、素の私に近いんですけどね(苦笑)。セリフは多いし、衣装は地味なお着物、お化粧も控えめで……気持ち的には、『また君に恋している』がヒットしたとき、ジーンズを履いてステージに立ったときに近いような感じです。

――それは……どういう?

演歌歌手としては、ビシッと着物を来て髪を結いあげて、変身完了! さぁ、歌うぞ!! というのがフツーじゃないですか? それが、ふだん穿いているジーンズでステージに立つというのは、「ごめんなさいね、こんな格好で」という恥ずかしさが先に立って。袖からセンターに歩いて行くのにも、心臓がドキドキしっぱなしだったんです。

――そのときと、似ている?

最初に言っておきますね、これはネタじゃなくて、本当の話ですから。いいですね? 笑いを取るために話すことじゃないですからね。

――心して、承ります(笑)。

ジーンズにジャケットでステージに立った私を観て、「なんだ、坂本冬美はまだ出ないのか?」とお手洗いに立つ方がいらっしゃったんです。それも、1人、2人じゃなく、結構な数の方が(苦笑)。

――話を作っていませんか?

だから、最初にお断りしたじゃないですか。これは本当の話です、と。作っても盛ってもいない、正真正銘の実話です。もっとも自慢げに話すことじゃないんですけどね(笑)。

――どんどん脱線していきそうなので、話を明治座の公演に戻します。今回、冬美さんの相手役は、初共演となる中村雅俊さんです。

運命の糸と申しますか、神様のお導きと申しますか……。中村雅俊さんが桑田佳祐さんがお作りになった大ヒット曲『恋人も濡れる街角』をリリースしたのが、1982年。私が『ブッダのように私は死んだ』に巡り会えたのが、2020年。実に38年の時を超え、桑田佳祐さんで結ばれた2人が同じ舞台に立つなんて、夢のようなお話です。

――2部の歌の共演も楽しみです。

基本的には、私のパートと中村雅俊さんのパートに分かれているんですけど、「一緒に歌ってくださいますか?」とお願いしたら、「よろこんで」と言ってくださったので、デュエット……なんてこともあるかもしれません。みなさん、ぜひ、明治座に足をお運びください。

忌野清志郎と過ごした夢の時間

――9月21日には、『夜桜お七』に続く、アナログ盤(レコード盤)第2弾、『火の国の女』を発売。同日、これまで冬美さんが出演された『紅白歌合戦』のBD、DVD、その名もズバリ、『坂本冬美NHK紅白歌合戦の軌跡』もリリースされます。

紅白の映像は、永久封印してしまいたい、恥ずかしい映像もあるんですけど……でも、どーしても、入れたいというご要望があって。シブシブといいますか、もう、この際だから、ど〜んといっちゃえといいますか(苦笑)。ご覧いただければ幸いです。

――最後にもうひとつ、雑誌で連載していたコラム『坂本冬美のモゴモゴモゴ』を一冊にまとめた冬美さんにとっては、はじめての書籍が発売になります。

これまで出させていただいたシングル曲にまつまわるお話と、その前後にあったエピソードを綴ったものなんですが、書いているうちに、あんなこともあった、こんなこともあったと、色々と思い出して。
あぁ、こんなにたくさんの方にお世話になっていたんだと、あらためてそのことに気付かされた感じがしています。

――デビュー曲『あばれ太鼓』では、恩師・猪俣公章先生に面と向かって、「先生、この歌は、流行らないと思います」言ってしまった……というエピソードは、読んでいて思わず、ヒヤヒヤしてしまいました。

私としては、石川さゆりさんのような女歌を歌いたいという思いがあって。しかも、歌手にとってデビュー曲というのは一生ついて回るものじゃないですか。それがよりによって、『あばれ太鼓』って……うわっダサっ……と、ついつい思ってしまったんです(苦笑)。
当時、私は19歳。怖いもの知らずで世の中のことを何ひとつわかっていない、生意気でイケイケの女の子でしたから。

――猪俣先生が亡くなった後、三木たかし先生が曲を書かれた『夜桜お七』がメガヒット。その誕生秘話も、そんなことがあったのか?と前のめりで読ませていただきました。

これはだめだ、坂本冬美を潰す気か!? という声が、社長を筆頭に、東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)内に溢れて。お蔵入り寸前まで追い込まれたんです。その窮地を救ってくださったのが、三木たかし先生で。
「30万枚売れなかったら、頭を丸めて責任を取ります」とおっしゃってくださって。先生の一言がなければ、『夜桜お七』は、世の中に出ていなかったかもしれません。

――遠い空の上で、猪俣先生が地団駄を踏むこともなかった?

そうですね。きっと猪俣先生のことだから、三木先生に、「なんだよ、お前。冬美にこんないい曲を作りやがって」と言いながら地団駄を踏み、そのあとキュッと一杯、お酒をひっかけながら、「でも、俺だったら、もっといい曲を作っていたぞ」と得意げに呟いているはずですから。

忌野清志郎さん(写真右)と細野唯臣さん(左)と一緒に

――『夜空の誓い』『日本の人』『Oh,My Love〜ラジオから愛のうた〜』と、3度登場する“THE KING OF ROCK”忌野清志郎さんの回は、グッと胸が熱くなりました。

音楽と一口にいっても、いろんなジャンがありまして。そのひとつひとつを隔てる壁は、結構、分厚いものがあり、演歌歌手としてデビューした私はずっと演歌を歌っていくものとばかり思っていたんです。
その壁を、ヒョヒョイのヒョイと、いとも簡単に乗り越え、演歌もいいけどロックも楽しいよ、こっちへおいでよ、と私の手を引いてくださったのが、忌野清志郎さんでした。

――清志郎さんにとっては、坂本冬美じゃなく、FUYUMI SAKAMOだったんですね。

私のことをFUYUMI SAKAMOと呼んでくださったのは、後にも先にも清志郎さんおひとりです。なぜ、私に声をかけてくださったのか!? なぜ、FUYUMI SAKAMOだったのか? それをお聞きできなかったのが唯一の心残りですが、でも清志郎さんと過ごさせていただいた一瞬一瞬が私にとっては大事な宝物だし、すべてが夢のような時間でした。

――他にも、先輩の五木ひろしさん、阿久悠先生、横山剣さん、御大・北島三郎さん……などなど、たくさんの方との出会いや素敵なエピソードが詰まった一冊は、冬美さんの歴史そのものです。

ひとりごとのような気持ちで書いたものが一冊になるというのは、ちょっと恥ずかしいような気もしますが……かしこまらず、気楽な感じで、読んでいただけたら嬉しいです。

明治座 坂本冬美特別公演 中村雅俊特別出演
20222年9月20日〜10月18日
第1部『いくじなし』
作:平岩弓枝
演出:石井ふく子
出演:坂本冬美・中村雅俊 ほか

第2部 坂本冬美オンステージ2022 艶歌の桜道 スペシャルゲスト:中村雅俊

https://www.meijiza.co.jp/info/2022/103/

坂本冬美のモゴモゴモゴ

坂本冬美

2022年9月16日発売

1,800円(税込)

単行本(ソフトカバー)/248ページ

ISBN:

978-4-33-495333-1

光文社が発行する『FLASH』にて連載していた人気コラム『坂本冬美のモゴモゴモゴ』に、加筆修正して一冊にまとめた、坂本冬美はじめての書籍。シングル曲の誕生秘話や、NHK紅白歌合戦にまつわるエピソード、引退、復活、そして…新たな夢に向かって全力で走り出した坂本冬美の歴史が、ぎゅっと詰まった一冊です。

撮影/大藪達也 中村功 取材・文/工藤晋

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください