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カルト的人気を誇るホラー番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」はいかにして生まれたのか?

集英社オンライン / 2022年8月28日 11時1分

ホラー・オカルト嗜好者の間で話題となった全12話のYouTube番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」。その完全新作スペシャル「フィルムインフェルノ – FAKE DOCUMENTARY Q」の公開が8月27日深夜に公開された。本シリーズの制作メンバーであり、チャンネル登録者数 81万人の超人気ホラー系YouTube番組「ゾゾゾ」の発起人である映像作家・皆口大地に、「フェイクドキュメンタリー『Q』」制作のエピソードを聞いた

ジャパニーズ・ホラーの新境地

すでに拡張性を掘り尽くしたと思われていた「心霊スポット突入ドキュメンタリー」や「心霊写真紹介」といった領域に、「こんなオモシロな開拓の余地があったのか!」と驚きの旋風を巻き起こした超人気ホラー系YouTube番組「ゾゾゾ」「家賃の安い部屋」シリーズの発起人・皆口大地氏。彼は勢いをそのままに、「フェイクドキュメンタリー『Q』」(以下、Q)なる本格異界系番組を制作した。



「Q」は、かつてホラー界で一世を風靡したフジテレビ系列「放送禁止」シリーズを彷彿とさせる、テレビ局の封印VTR・素人動画を再編集するというフォーマットを採用。内容の“高濃度な闇黒感”とともに、「あ、コレは演技だよね」的なツッコミどころが一切ない絵としてのクオリティーの高さと迫真性で、一般視聴者以上に映像クリエイター業界に深い衝撃を与えた。

全12話の短編映像で構成されるYouTube番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」

視聴者の多くが気ままかつ容赦なく鑑賞作をスイッチングする傾向が極大化した昨今、固定ジャンルであっても、「濃い客」「薄い客」を同時に満足させるコンテンツを制作するのは至難の業だ。しかし、皆口氏はそれを見事にやり遂げている。

さまざまな文化業界のプロデューサーたちが試行錯誤を繰り返しつつも解法を見出せていない難題を、現場でプロの協力を得ているとはいえ、どのように解決しているのか。私自身、ドイツ公共テレビ日本支局プロデューサーとして「Q」に大きな関心を抱いており、他媒体でレビュー記事を書いたこともあるが、今回、皆口氏本人に直接インタビューする機会をいただいた。ビバ集英社オンライン! 次ページより、皆口大地という鬼才がいかにして生まれたのか、彼の知性の軌跡を辿ってみよう。

「フェイクドキュメンタリー『Q』」の完全新作「フィルムインフェルノ」

「ゾゾゾ」そして「Q」が生まれたきっかけ

––––まず、視聴者として「そもそも皆口さんが何者か?」という点が気になります。映像業界的にはまだ著名ではない一方で、発信される作品はことごとく「手練」のレベルを軽く超えている。それなりに実績があるプロが偽名で趣味的にやっているんじゃないかといった説もあるのですが…どうなんでしょう?(笑)

自分の本職は、WEBデザイン会社勤務のデザイナーです。なので、映像コンテンツ制作は仕事上、本来無縁な領域でした。映像の制作は、学生時代にハンディカムとかでお遊び的なムービーを作ったぐらい。ホラー系作品や心霊・都市伝説は大好きでしたが、そういう映像作品づくりを昔から目指していたわけではありません。

社会人になってから、とあるきっかけで「ゾゾゾ」を開始したのを機に、初めて本格的な映像編集ソフトを使って、撮った素材を編集しました。仕事柄、画像編集ソフトの扱いには慣れていたので、映像編集にもそれなりに早く馴染めた気はします。

自分の場合、常に自分の編集したものを客観的に観る習慣があって、もう一人の自分が少し引いたところから作業を眺めている感じです。完成して一旦動画をアップしたあと何度も見返しますね。電車の中とか家とか、どこでも。で、納得いかない点に気づいちゃうんです。それは歌でいうと「サビが多すぎる」みたいなことだったりするのですが、気づいたからには修正せずにはいられない。だから何度もアップし直したりしています。5~6回ぐらい消して、微修正して再アップしたり。

––––私もテレビのプロデューサーとして思い当たる節がありますが…その完璧主義加減はヤバいですね(笑)。「ゾゾゾ」では本業の機材を使い回したりするのではなく、完全に手弁当で自主的に活動を開始したのですか?

そうです。あ…でも落合さん(「ゾゾゾ」メインパーソナリティ・落合陽平氏)だけは本業の現場から調達しました(笑)。ただWEBデザインの仕事って、波があるというか、妙に「待ち時間」が発生することが多くて。そういうタイミングで内職っぽく『ゾゾゾ』を編集しています。時間の使い方を工夫することで何とか成立させていますが、のめり込みすぎて後戻りできなくなってしまい…。

皆口氏が発起人となって開始された人気YouTube番組「ゾゾゾ」。新作「夏の特別編 沖縄スペシャル」が2022年8月5日公開された

––––なるほど。一方で「Q」の制作をめぐる経緯は、「ゾゾゾ」とかなり違いそうですね。

そうなんです。「Q」は制作を開始するまでがちょっと特殊で。

まず寺内康太郎監督という、ホラー系作品で有名な映像監督とある作品で知り合ったんですが、話してみるとやはり凄い才人で。翻って現在の日本の映像系ホラーエンタメ業界を見たときに、寺内監督のような才能をちゃんと活用できてないように見える。そんな状況に対し、「もし寺内監督と本気で何か新しい作品を作ることができたら、絶対に日本中のホラーファンが喜ぶはず」と考えました。

そこに対して自分のノウハウが活かせるなら、とあれこれ動き出した結果、生まれたのが「Q」という作品なんです。そうして展開していくうち、寺内監督以外にもさまざまな才能を持つ方々が合流してくれました。本当に感謝しかありません。

「フェイクドキュメンタリー『Q』」の制作メンバーであり、「ゾゾゾ」「家賃の安い部屋」といった人気YouTube番組を手掛ける映像作家・皆口大地氏。本業はWEBデザイナーとして、「ゾゾゾ」のメインパーソナリティ・落合陽平氏が代表を務める会社に勤務している

視聴者による怒涛の考察

––––「フェイクドキュメンタリー『Q』」というタイトルは、実録モノを装うにしてはあまりに挑発的なものですよね。このタイトルを採用したのはなぜですか?

実は公開直前まで、タイトルは「Q」の一文字にする予定だったんです。たぶん「Question」の「Q」とかで納得いただけると思うのですが、実際にはもっと直観的なネーミングです。「ゾゾゾ」と同じように、非論理的であくまで感覚重視というか(笑) 。

でも、タイトルが「Q」の文字だけだと、視聴者が動画を検索するときに探しにくい。そこで、まず「プログラム『Q』」というタイトルに変えようとしたのですが、ハタと思いついて、「フェイクドキュメンタリー『Q』」という案を出したんです。タイトルと併せたときの逆説的なインパクトで、視聴する皆さんの感性を刺激したい。あともうひとつ、フェイクという前提を置けば、実はなんでもありになる。極論を言えば、敢えてホンモノを紛れ込ませるという技も可能になります。なので、これはもう採用するしかありませんでした。

––––「Q」は全12話で構成されていますが、各話の制作順と公開順は一致しているのでしょうか?

実は最初に制作したのは第9話「玄関先に置かれる献花の謎」です。当初、制作順と公開順を一致させる予定だったんですが、公開前に先ほどのタイトル変更事案が発生してしまい…。そうなると、第1話「封印されたフェイクドキュメンタリー」を初回に持ってきた方がコンセプト宣言としてもベターだね、ということで公開の順番を変えたんです。あれは、フェイクドキュメンタリーと広言されている映像が誰かの死をもたらした「かもしれない」話ですから。

でも、公開の順番として一番重要だったのは、実は第2話「深夜の不気味な留守番電話」で。映像演出的に、あの回はあまりに地味すぎるんですよ。でも、観る者の神経を確実に削っていく。ある意味「Q」のコンセプトの精髄を示す作品です。あのストロングスタイルは賭けでしたが、自分としても早期に観客層の好みを確認しておきたかった。正直、第2話が受け入れられるかどうかに全12話の成否がかかっていると覚悟していたので、反響が良くて本当に嬉しかったですね。

「Q」の第9話「玄関先に置かれる献花の謎」

「Q」の第2話「深夜の不気味な留守番電話」

––––公開後の反響などを見て、皆口さん的に事前予測が当たった点と予想外だった点、それぞれについて教えてください。

まず予測どおりというか、ハズさなくてよかった点は「コアなホラー愛好者の方々のツボを突けたのかな」という手応えを得たことです。でも、あれほどの作品を作っておきながら、寺内監督は公開前にすごく不安がっていたんですよ。その意味でも、ハズせなかった(笑) 。

逆に予想外というか見抜けなかったのは、「Q」のようなドキュメンタリー/モキュメンタリー的ホラーを愛好する方々がコンテンツを探す際の優先順位として、YouTubeは意外と下位にあるという点です。情報のプール先として、YouTubeが実はNetflixやAmazonプライム・ビデオに対してかなり劣勢であることが自分的に明確になりました。だから、届けるべきお客さんのチェック対象に「Q」がそもそも入っていなかったのは、状況として少し残念でしたね。YouTubeには心霊・実話怪談トーク番組がいっぱいあるので、傍目には「Q」も同様に、環境的に有利なコンテンツだろうと思われがちですが、実は違うのだと。これに関しては、一朝一夕にはどうしようもできない話ではあるのですが。

あと、「フェイクドキュメンタリー『Q』」というタイトルの意味も含め、視聴者による深読み考察が怒涛の勢いで展開されたことですね。あそこまでの熱量で打ち返されるとは!というのが率直な印象です。

––––深読み考察といえば、「Q」の各話それぞれに関連性はあるのか、全体を結ぶ大きなシナリオがあるのか、という点に大きな関心が寄せられていますね。

その点に関しては、絶対に明かしません。「墓場まで持っていく」とチームで決めています。というのも、関連性の有無だけでなく、すべての解釈について1%も否定したくないんです。実際、こちらの想定を凌駕する素晴らしい考察が寄せられることもあって、そういうのを見ると、「作品は見られることで完成する」という言葉の真実性を実感せずにいられません。

––––なるほど。あと「Q」を語る際に不可欠なのが、映像に登場する人物たちの圧倒的な「自然っぽさ」です。それゆえ「フェイクドキュメンタリーというタイトルこそフェイクなのでは?」という凝った憶測も生じているわけですが。あのリアルさは、役者さんの演技に任せた結果なのか、それとも細部までこだわり抜いた「鬼の演技指導」があったのでしょうか?

役者さんってすごいんですよ。正確に言えば、寺内監督のキャスティングセンスと演技指導の的確さ、そして役者さんの適応力の高さの賜物というほかないですね。もし見た印象が「演技っぽいな」と感じたら、視聴者が「現実」に引き戻されてしまう恐れがあるので。

––––第1話「封印されたフェイクドキュメンタリー」で登場したVHSビデオデッキや第7話「オレンジロビンソンの奇妙なブログ」の旧型Macなど、その時代の風味を醸し出すための小道具が各シーンでエッセンスとして効いているなと感じるのですが、ああいうブツの調達ってけっこう大変じゃないですか?

大変です。でも寺内監督が、執念でどこからか持って来るんですよね。実際、似たようなものでいくらでも誤魔化せると思うんですが、寺内監督は絶対そういう安直な方法は採りません。場面の時代設定に合致した小道具でないとダメという。しかしそのポリシーによって、作品が纏うオーラがより良質なものになっているのは確実です。

「ホラーエンターテインメント」に託す想い

––––手さぐり的に「ゾゾゾ」を開始し、「家賃の安い部屋」を経て「Q」に至る過程で、クリエイターとして内面に大きな変化はありましたか?

いや、それが…今まで色々とやってきましたが、いまだに「作る側」にいる実感があまりないんですよね。今日もこれからも「観る側」にいるような。なので、そういう意味では「変化がないこと」が大きなポイントかもしれません。

––––「ゾゾゾ」では「ホラーエンターテインメント」というモットーが提示されており、この部分に皆口さんの主張のコア要素が込められているように感じますが、その真意をお聞かせください。

自分はいわゆる「テレビっ子」なんですよ。「メディアとしてのテレビ衰退」という大きな社会的趨勢はどうしようもないにしても、全盛期のテレビ文化の良さを今の世に再構築して、皆でその愉しさを共有したい気持ちがすごく強くて。

今よりも元気だった頃のテレビって、微妙なツッコミどころ含めて愛でる・楽しむ面がありました。それが今、ネット文化の只中では、心霊番組も「ヤラセか、ガチか」というゼロサム的な二極分化が進んできて、グレーゾーンの面白みを嗜む気風が極度に薄れている。自分はそれを蘇らせたいんです。「ホラーエンターテインメント」という標語の、特に「エンターテインメント」の部分にはそんな意味を託しています。

とはいえ、制作側の“子供騙し”的ないい加減さがツッコミどころとなるのはよくないと思います。いずれにせよ、制作姿勢の誠実さが重要なのだろうなとは思いますが。

––––ある意味、プロレスの文脈にも通じる奥深さというか。

そうなんです。最近ちょっと考えさせられたのが、7月上旬、地上波テレビで珍しく心霊番組が放送されたんですよ。それも2本。あれはすごく嬉しかったですね。自分も観ていてとても面白かったですし。

でも、なぜかネットでは叩かれちゃう。「YouTubeの動画を見習え!」みたいな意見がけっこう目立っていて、正直悲しかったです。個人的には、コンプライアンスが厳しい環境下で本当によくやってくれた! ありがとう!という感じなのですが…。これはちょっと深い問題のような気がしますね。

「ホラーエンターテインメント」として多くの視聴者を獲得する「ゾゾゾ」

––––お話を伺っていると、特に「Q」については、かつて一世を風靡した後に迷走してしまった和製ホラームービーが持つ本来のポテンシャルを、「実はこうあってもよかったはずだ」という形で再構築し、世に問うことが目的という印象を受けますが、実際いかがでしょう?

それは志として確実にあります。昔、映画「リング」が世界的にヒットしたのを契機に、和製ホラー作品が「Jホラー」というブランドを纏って海外進出を図った時期がありました。でもあれって結局、和製ホラーの真髄を外国に伝えるというより、アメリカンなホラー演出が日本へ浸透するという本末転倒な結果に終わった感が強い。

これは私見ですが、和製ホラーの良さって、「恐怖の輪郭は見えているのに、自分が何に触れているのかよくわからない」という状況を湿度高く表現する点にあったと思うんです。でも何か大きな勘違いが生じて、「ゾンビ襲来」のような物理的な要素を増してしまい、今に至っている。そういう状況は一人のホラーファンとして何だか悔しいです。しかも自分だけでなく、日本のファンも世界のファンも、おそらく満足していない。(世界進出などは意識せず)日本人が怖いと思えるものに100%全振りした良質なコンテンツを作れば、それは翻って外国のホラーファンにも歓迎される作品になるだろうと思うんです。

––––ちなみにご自身では、何か超自然現象に遭遇したことありますか…?

自分の他に証言者もいる「客観的な事象」としては、現在は非公開にしている「ゾゾゾ」の「白い家」の回を編集しているときに起こりました。

スマホで撮影した映像を編集のためにエンコードしていると、何度やっても途中で毎回同じところでフリーズしちゃう。どういじくり回してもダメだったので、仕方なくその問題点のあたりをカットして抜き取って、前後を繋ぎ直したんですよ。そしてそれをYouTubeにアップして見てみると、なぜかカットして捨てた部分が復活してて…。しかも何か変なノイズが被っていて、視聴者からも指摘がありました。

しかも、この件で自分が狼狽えているそばで、落合さんがTwitterでネタにしていたという。「なんか皆口が騒いでる。滑稽だ!」みたく。こっちは笑いごとじゃなくて本気でヤバかったのに……あれは不気味な出来事でしたね。

––––最後ですが、「Q」ファンに観てほしい、知的インスピレーションの源泉となるような、皆口さんオススメの作品を教えてください。ジャンルは問いません!

インスピレーションという観点では、まず押見修造さんの漫画『惡の華』です。「刺さる」とよく表現されますが、あれだけ“鋭利な刃”を持つ作品はそうそうないなと。逆に、これだけ尖った表現でもやっていけるんだ、という面でも参考になりました。

また、最近の映画では「ミッドサマー」ですね。映像は明るくてキレイなのにおぞましい!という世界観構築のコントラストにシビれました。アリ・アスター監督は今後絶対追いかけ続けたいクリエイターです。

あと最後に映画「イット・カムズ・アット・ナイト」(トレイ・エドワード・シュルツ監督)を挙げたいです。病原体に侵食された日常を背景として展開される籠城サスペンス映画で、舞台は森林に囲まれた家を中心とした半径10mほどのエリアだけ。私が希求する和製ホラーに近しい重要なエッセンスを湛えつつ、それだけではないプラスアルファ的な要素も感じさせる、マイナーながら近年では出色の知的インパクト作品としてオススメです。

「自分が見たいモノ」=「皆が見たいモノ」

皆口氏が手がけた映像を観て、そして彼と直接対話して強く感じるのは、自分が観たいと欲するコンテンツを明確にイメージすること、そしてそれを具現化するためのリソース調達の鬼だということだ。自分自身で理想の映像を撮ることはできないが、自分の理想の映像を誰が撮れるかは何故か過剰に知っている––––といったような。しかし、自分が理想とするコンテンツを作れても、それは「自分の理想」ゆえ、むしろ単なる自己満足に終わる公算のほうが大きい。

皆口氏の真の凄さは実はこの点にあり、彼の場合、今のところ「自分が観たいモノ」=「皆が観たいモノ」という図式が完全に成立している。これぞ、彼が持つ異能の核心と言えるだろう。というか、そもそもプロデューサーという存在は、皆口氏のような知的機能を以て関係者を導くのが本来の姿だったのではないか?という気もしなくはない。そして通例、そこに生じるどうしようもない現実的欠落を埋め、「皆が観たいモノ」のアイディアコンセプトを吸収するために人はマーケティング思考や技法を使うわけで、ここでかなりの熱量が失われてしまう。

では、なぜ皆口氏はそのような(主観的にどう感じているかはわからないが、少なくとも傍目には)幸せなクリエイティング道を歩めているのか。理由は色々あるだろうが、たとえば彼自身が発した「今まで色々とやってきたが、いまだに『作る側』にいる実感があまりない」という言葉はかなり重要だ。有体に言えば、「クリエイター気取り」の対極にいる才人の、ひとつの有効な在り方を示すものだからだ。

そしてもうひとつ、その鑑識眼と審美眼の深さ・鋭さにも、彼の凄味を感じる。これは生来の資質かもしれないが、たとえば「ゾゾゾ」が大ブレイクする前の皆口氏のTwitterアカウントは、得体の知れないマイナー映画の紹介と寸評で埋め尽くされている。見ようによっては異様な情景だが、これ自体がアート的な景色ともいえるだろう。

これらのレビューには少なくとも「誰かに見せる」ためのものではない“不断の悦楽的執念”があったのは明白で、それが現在の彼の鑑識眼&審美眼豊かなオンリーワンぶりにつながっているのは言うまでもない。

ちなみに、インタビュー時に絶賛していた「ミッドサマー」のレビューが5点満点で3.9点だったのも面白い。数値だけが精神の滋養ではない、ということだろうか。一方、新海誠監督の「天気の子」は4.5点だった。

これらの作品を通して誰もが皆口氏のような知的悦楽を得られるわけではないが、さまざまな角度からそのエッセンスを参考にするのは可能と思われる。今後も引き続き彼の動向をチェックしたい。

「ゾゾゾ」のメンバーである長尾将三郎氏がメインパーソナリティを務めるサブチャンネル「家賃の安い部屋」

文・インタビュー/マライ・メントライン 撮影/黒田彰

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