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ダルビッシュ、田中将大、野村祐輔…甲子園で最後の打者となり敗れ去ったエースたち

集英社オンライン / 2022年8月19日 9時1分

熱戦が続く104回目の夏の甲子園もベスト4が出そろった。多くの強豪を撃破して勝ち上がった4校の中で栄冠に輝くのはたった1校のみ。残りの3校は敗者として甲子園を去ることになる。圧倒的な実力を持ちながらも、甲子園で敗れ去った3人の悲運のエースを『甲子園レジェンドランキング』(集英社)から一部抜粋・再構成して紹介する。

「甲子園」とは負けて終わる物語

高校野球で最後に勝って笑えるのは、全国約4000校のなかでたった1校だけ。ほとんどの学校と球児にとって、「甲子園」とは負けて終わる物語だ。ときには、本来の実力を出し切れないケース、そして、いくつもの困難や不運に立ち向かわなければならない選手もいる。だが、そんな選手たちこそ高校野球ファンの心を捉えて離さない。



東北高校(宮城)時代のダルビッシュ有(現・パドレス)もその一人だ。高校入学時で身長191センチ、球速は140キロ超。変化球も多彩なこの男がいれば、東北勢初の全国優勝も夢ではないと、期待を集めていた。

成長痛とケガに苦しんだ3年間 ダルビッシュ有(東北)

だが、そんなダルビッシュを苦しめたのが度重なるケガ。高校入学当初から骨の成長に筋肉や関節の成長が追いつかず、ヒジやヒザの痛みをかかえる成長痛に苦しむ日々。加えて、甲子園に初登場となった2003年春、第75回センバツでは、つめかけた女性ファンに腕を引っ張られ、右脇腹に全治2週間というケガ。3回戦で敗退する原因となった。

その年の8月、第85回夏の甲子園では1回戦で腰を痛め、途中降板。なんとか決勝に辿り着いたものの、相手は春・夏あわせて優勝2回、準優勝2回を数える名将、木内幸男監督率いる茨城の常総学院。万全の状態でなければ抑えられる相手ではなく、2対4で敗れてしまう。

2004年、第76回春のセンバツでは、1回戦の熊本工(熊本)戦で大会史上12人目、10年ぶりとなるノーヒットノーランを達成。しかし、2回戦を前に今度は右肩を痛め、準々決勝では登板回避して外野の守備へ。試合は東北が6対4とリードしながら、9回裏にサヨナラ3ランを打たれて敗戦。レフトを守っていたダルビッシュは、自分の真上を飛んでいくそのホームランをただ見送ることしかできなかった。

高校最後の夏の甲子園では、1回戦、2回戦を連続完封。だが、3回戦では延長戦の激闘の末、1対3で敗退。ダルビッシュは「最後の打者」として打席に立ち、見逃し三振。のちのメジャーリーガーでも、甲子園優勝は遠い夢だった。

逆風続きだった最後の1年 田中将大(駒大苫小牧)

ダルビッシュと同じ、のちのメジャーリーガー田中将大(現・楽天)の場合、駒大苫小牧(南北海道)時代の2年夏に一度は優勝投手という栄冠を経験。だが、高校最後の1年は苦しい出来事が続いた。

2005年、第87回夏の甲子園では、2年生ながらチームの主力投手として活躍。最速150キロのストレートと130キロ台後半のスライダーを武器に、駒大苫小牧の「夏連覇」に貢献して優勝投手に。その後、秋以降の新チームでも負け知らず。翌春、第78回センバツでも優勝候補の本命とされていた。

ところが、センバツ開幕直前に卒業間近の3年生部員による不祥事が発覚し、センバツ出場辞退が決定。マウンドに立つチャンス自体を奪われてしまう。さらに、春以降も試合で投げる機会が減ったことも影響したのか投球フォームは崩れ、夏が近づいても球速は150キロに戻らず、変化球のキレも本調子には遠かった。

それでも、「夏3連覇」という大偉業をめざし、2006年夏の甲子園に勝ち上がってきた田中。ところが今度は、大会直前にウイルス性胃腸炎でダウン。体温は38度を超え、汗が止まらない日々が続く。どうにかマウンドには上がったものの、制球が定まらないなど、いつもの田中らしくない投球ばかり。

なんとか早稲田実との決勝戦にまで進んだが、決勝引き分け再試合の末、敗退。田中は「最後の打者」として打席に立ち、空振り三振。駒大苫小牧にとって悲願の夏3連覇はならなかった。

〝魔物〟と〝不運な判定〟に泣いた男 野村祐輔(広陵)

優勝まであと一歩にせまりながら「甲子園という魔物」の前に力尽きたのが、広陵(広島)のエース、野村祐輔(現・広島)だ。2007年、第89回夏の甲子園に出場した広陵は、夏の甲子園で3年連続決勝進出中だった駒大苫小牧や、その年の春のセンバツ王者、常葉学園菊川(静岡)など優勝候補を次々に破り、決勝戦に進出。相手は劇的な試合ばかりで「ミラクル佐賀北」と呼ばれ、人気を集めていた佐賀北(佐賀)だった。

いざ、決勝戦が始まれば、「広陵優勢では?」という大方の予想どおり、8回表を終わって4対0で広陵がリード。野村は佐賀北打線をヒット1本に抑えていた。

だが、8回裏。野村は連打を浴び、1死一、二塁と、この試合はじめてのピンチ。すると状況は一変。多くの観客が佐賀北の「ミラクル」を期待し、球場中が佐賀北の応援団のような雰囲気に。この異様な空気が野村にとってプレッシャーになったのか、ストライクがなかなか入らず、フォアボールで満塁。微妙な判定も続き、押し出して1点を与えてしまう。

なおも1アウト満塁という大ピンチ。打席にはこの大会でホームラン2本と好調の3番、副島浩史。失投は許されない状況で野村が投げたこの試合127球目は、真ん中付近への甘い球。副島がバットを振ると打球はレフトスタンドへ。まさにミラクルと呼ぶべき逆転満塁ホームランに甲子園は揺れた。

最終回、4対5と1点を追いかける広陵。最後は野村が打席に立ち、空振り三振でゲームセット。野村は急転直下の逆転負けで優勝投手になれなかった。

甲子園が終わっても、戦いは続く

ダルビッシュ、田中、そして野村。ケガや体調不良、出場辞退、不運な判定など、不本意な形で実力を発揮しきれなかった男たち。しかも、「最後の打者」として甲子園に別れを告げている。

その悔しさを忘れず、次のステージに進んだからこそ、プロの世界でもチームのエースとなり、最多勝などのタイトルを手にすることができたとも言える。野球という物語は高校で終わるのではなく、そこから先もずっと続くのだ。

甲子園レジェンドランキング

オグマ ナオト

2018年7月20日発売

704円(税込)

新書判/192ページ

ISBN:

ISBN:978-4-08-321453-0

夏の甲子園100回大会記念!甲子園の伝説ランキングを大発表!怪物投手、ホームラン王、激闘の延長戦、奇跡の逆転劇、因縁のライバル、涙の一球、伝説の大記録、感動のドラマ、甲子園で起きた伝説を1冊に収録!100年の歴史のなかでナンバー1にかがやくのは…!?小学中級から。

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