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迷子必至。増設続きでダンジョン化が止まらない東京駅地下を歩く

集英社オンライン / 2022年8月20日 13時1分

古くから首都への玄関口としての役割を担ってきた東京駅。1日におよそ30万人以上の乗客が利用するとあって、その構内はいまや迷路そのもの。今回は、企業取材系ルポを得意とする漫画家・見ル野栄司がダンジョンと見まがう東京駅の地下構内を探索する。

日本最大級の迷宮ステーション、東京駅地下窟を歩く

依然、海外旅行が難しいなか、国民の旅欲の矛先はまだまだ国内に向けられています。そこで活躍するのが新幹線などの鉄道。鉄道に乗るには駅を使わなければいけないわけですが、駅は電車を乗るためだけのものにあらず。そこには知られざるスポットがあるのでは……?

ということで、やってきたのは日本最大級のターミナルステーション、東京駅。私も旅行や出張の際によく使わせてもらいます。しかし、様々な店舗や施設が入っている東京駅に行っても、筆者が利用する目的は電車の乗り換えか、お土産の購入くらい。あまりに広く、探索することさえ億劫になるからです。



まさに地下迷宮。私もどれほど迷ったかわかりません。上京したての田舎者のように右往左往、どうにか看板を頼りに抜け出せたときは、なんとも不思議な達成感に包まれることも。

いつかこの大迷宮をしっかり探索したい! と常々思っていたので、これを機に東京駅ダンジョンを
“攻略”したいと思います。

改札前のドーム天井には干支のレリーフが

東京駅構内はとにかく広く、改札内外のエリアすべてを一日で網羅するには足腰がもたない。行き倒れて「ただのしかばねのようだ」となりかねなません。そこで今回は改札の外側を中心に攻めることにしました。初めて東京駅を訪問する方や出張などで利用して時間が余ってブラつきたい方の参考になれば幸いです。

まず今回探索したルートをご紹介しましょう。

今回の前編では、スタート地点の丸の内口から北(地下)自由通路を通って東京駅一番街までを探検します!

ということで、今回のスタート地点、東京駅の丸の内口です。

東京駅丸の内口駅舎

竣工は1914年、建築家の辰野金吾が設計したことは有名ですが、この駅舎は実は東京ステーションホテルとしても利用されていることはあまり知られていません。あの川端康成や松本清張もここに宿泊して、作品を執筆したそう。

駅舎に入る東京ステーションホテル

そして、向かって右の丸の内南口改札前。

まさに絢爛豪華な造り。3階に見えます窓は併設するステーションホテルの客室に面しており、小金持ち以上であろう宿泊客が改札前の駅利用客を見下ろせる構図となっております。このダンジョンを右往左往するプレイヤーを見物しているのかもしれません。神の視点というやつでしょうか。ちなみに、2階のドーム回廊はホテル利用客でなくとも入れるので、優越感に浸りたい人はぜひ。

ここをスタート地点にした理由は、掴みとして東京駅のちょっとしたトリビアを披露しておきたかったから。それがこちらの丸の内口、八角形のドーム天井。

重要文化財にまでなったこの駅舎を設計した辰野金吾は、ここにある仕掛けを残していたとのこと。写真真ん中寄りの左右に緑の丸枠があるのですが、これらが八角形のそれぞれの角に配置されています

そして、よ~く見てみると枠内に何か動物がいるのがおわかりでしょうか?

このアップ写真に写っているのは蛇。「干支」の蛇です。

干支はご存じのように暦や方角を12種の動物で表しており、この丸の内口のドームの八角形にも方角に合わせて動物のレリーフがちゃんと飾られているのです。しかし、十二支に対して八角形。4匹余ってしまいます。そして、ぴったり東西南北を表す4匹の動物がこの東京駅丸の内駅舎にはいない。

設計した辰野金吾はなぜこの4匹の干支(うさぎ、とり、うし、ねずみ)を抜いたのか、長らく謎とされてきました。しかし、抜けた干支は、佐賀県は武雄温泉の桜門の天井に施されていたことが最近になってわかったのです。辰野金吾は東京駅と武雄温泉の設計の仕事をほぼ同時期に行っていたようで、駅舎の八角形で漏れてしまった干支を武雄温泉に入れてあげた“遊び心説”が有力なんだとか。読者の方々も、この丸の内駅舎に来ることがあれば、ぜひ天井を見上げて干支たちの浮彫細工を眺めてみてはいかがでしょうか。

新設の「グランスタ地下北口」はロッカーだらけ

豆知識はこのくらいにしてダンジョン散策へ出発。八重洲方面へ回るため、丸の内南口から北口に移動。北口改札前にも同じ造りのドームがあり、基本的には南口改札と構造は一緒なんです。

こちら丸の内北口改札。先ほどの南口改札前との違いがおわかりでしょうか?

さっそく迷わせにきていますが、安心してください。南口と見分ける方法があります。それが八重洲口へと続く北自由通路の存在。上の写真奥の通路がそれです。誘われるようにこの通路を進みます。

ちなみに、丸の内口側から八重洲口側に改札外から渡るには、この北自由通路か、この地下を通る北地下自由通路を通るしか方法はありません。やたらと複雑な東京駅構内のくせに、そこだけはやたらシンプルなのはなぜなのでしょうか。

とにかく、北自由通路を歩いていると、その途中に地下へと降りる階段を発見。いよいよ地下ダンジョンへと潜入! ……と下っていると手すりが目に入ります。

どこにでもあるごく普通の手すりですが、職人目線で見てみると、ステンレスのパイプのつなぎめ(角度が変わっている箇所)をちゃんと溶接してバフがけ(ヤスリ)してあることがわかります。企業取材をたくさんしてきた筆者にとって、利用者の手を傷つけないような、このような細やかな配慮にも感謝したくなってしまう性分なのです。

さて、地下に降りてすぐにあるのは「グランスタ地下北口」。これまでJR東京駅の改札は、「八重洲北口・中央口・南口」「八重洲地下中央口」と「丸の内北口・中央口・南口」「丸の内地下北口・中央口・南口」の計10か所でしたが、2020年8月、エキナカ商業施設「グランスタ東京」のオープンと同時に、この「グランスタ地下北口」も新設。

運営側は良かれと思ってかもしれないですが、土地勘がない人がこんな中途半端な場所から出てしまったら、迷子必至でしょう。

そして、その「グランスタ地下北口」前から左右にズラーっと並ぶのはロッカー。

驚くのはそのロッカーの数。ざっと数えただけでも300はあったのではないでしょうか。ロッカーのメーカーは来年で創業100周年を迎える老舗のALFAさん。歴史と実績を信頼されての大量発注なのでしょう。今後、コロナが収束して増えていくだろうインバウンド客への対応という意味合いもあるはず。キャッシュレスといった現代的なシステムだけでなく、コインを使えるロッカーも用意されているのはアナログ人間にとってはありがたいところ。

しかしながら、これだけの数のロッカー。どこに入れたかわからなくなりそうです。いやそもそも、ここにロッカーを預けるのは地方から来た方が多いはずで、そんな人たちが「グランスタ地下北口」というマイナーな改札の場所を覚えていられるのか。まさに迷宮で宝探しをしているような状況になりかねないので、預ける際には場所をよく覚えておいたほうがいいでしょう。

ロッカー通りを抜けると左手に飲食店街らしきエリアが広がります。こちらは「グランスタ八重北」。先ほど紹介した「グランスタ東京」とは別モノで、今年4月に開業したばかりのグルメスポットなんだそうです。コロナ禍だというのに開発の手をゆるめない姿勢は素晴らしいことですが、こういったことの繰り返しが東京駅をより煩雑なものへとしてしまっているのではないでしょうか。

ここには飲食街、とりわけお酒を飲めるお店がたくさんあるようで、早くもこの大迷宮にめまいをもよおしている筆者は、どこかに腰を落ち着けて一杯やりたい衝動に駆られます。しかし、まだ旅は始まったばかり。ここは我慢です。

ジャンプキャラに浮かれていると方向感覚を失う可能性あり!

アルコールの誘惑を振り切って、先に進みます。道が難解なだけでなく、お酒というトラップまで用意しているとは、魔王(東京駅の運営者)もなかなか手ごわい。

北地下自由通路を突き当たると、次なるエリアは「東京駅一番街」。

ここには『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』といった漫画やアニメから、『チコちゃんに叱られる!』など、様々な人気キャラクターのグッズ等を手に入れられる「東京キャラクターストリート」、お菓子をテーマにしたアンテナショップが立ち並ぶ「東京おかしランド」、全国各地の味覚が楽しめる「にっぽんグルメ街道」、日本を代表する名店が揃う「東京ラーメンストリート」などがこのエリアに展開。地方や海外からのお客さんが実に喜びそうなエリアです。

まさに全国を旅しなくてもここを巡れば旅行した気分を味わえる、クールジャパンの縮図のようなコンセプトになっています。

しかし、テンションが上がるコンテンツの数々に色めきだっていると、すっかり自分の現在地を見失ってしまうので要注意。

ということで、今回はここまで。次回はさらなる迷宮、ヤエチカ(八重洲地下街)を攻略していきます!

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