これまでの人生で失敗したことなんか、数え切れないほどある。いい思い出は記憶の彼方。怒られたり、大失敗したりしたときのことばかりが、いまでも脳裡に焼きついている。私自身はどうやらそういう性格のようだ。
なかでも忘れえぬ記憶のひとつが、酒による失敗談だ。中国の天安門広場で泥酔して警察に包囲され、その次の日に関係者から、しこたま怒られた。そのときに天安門広場に横たわりながらみた夜空は本当にキレイだった。
私は中国古代史の研究者なので、帰国後にさっそく中国古代史の歴史書をひもといてみたところ、じつは2000年以上前から酒で失敗した人は結構いることがわかった。老若男女、下っ端の者から英雄にいたるまで、けっこうやらかしている。春秋時代にはすでに一気飲みの文化もあったし、泥酔して戦場に遅刻した者もいる。なんだかうれしかった。「2000年たっても、人は変わらぬものだ」と思ったし、酒の失敗ひとつで自己を全否定する必要もないのだ(反省はあってもよい)。ちょっと気が楽になった。
そうした失敗談が世界史上に溢れていることを教えてくれるのが、この本だ。