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あなたの一番好きな本宮ひろ志漫画は何ですか!!!!?

集英社オンライン / 2022年8月26日 17時1分

不朽の傑作マンガを数々生み出した漫画家・本宮ひろ志氏。半世紀以上にわたり描き続け、その作品数はゆうに120を超える。その中であなたの「ベスト本宮マンガ」はどれですか?

昭和、平成、令和と愛される本宮マンガ

本宮ひろ志氏が『男一匹ガキ大将』の連載を『週刊少年ジャンプ』ではじめたのは1968年。川端康成がノーベル賞を受賞した年。アポロ11号が月面に着陸するのは翌1969年だ。

それから半世紀が過ぎて、今は21世紀。本宮氏は今も「マンガ」に、とんでもなく大きなレガシーを残し、多くの人の人生に影響を与えている。

そもそもマンガとは、どんな表現か?

それは「人間の欲望を全面的に肯定する表現だ」と言った人がいる。2010年に文化庁メディア芸術祭で功労賞を受賞した『モーニング』創刊編集長・栗原良幸氏の言葉なのだが、これを筆者は、つまり本宮氏の作品のことだと思っている。



その言葉はマンガの精神そのもの。それほどマンガ界にとって大きな存在である本宮マンガだが、そうした中でも、もし「あなたの一番思い入れのある、影響を受けた本宮作品をあげなさい」といわれたら、どうだろうか? とんでもない難問ではないだろうか?

ビジネスマン必読のマンガ

サラリーマン経験者であれば、いや、もちろん経験者に限らず、1994年『週刊ヤングジャンプ』で連載がはじめられた『サラリーマン金太郎』に思い入れがある人も多いだろう。

この作品の主人公は矢島金太郎。彼はもともと一万人ものメンバーを持つ暴走族・八州連合のリーダーだった。しかし引退して漁師をやっていたところ、「会長の命を救った縁でヤマト建設に入社した」という異色の経歴を持つ。

命のやりとりに生きる政財界の世界の大物さえ認める、肝っ玉の持ち主。いくつになってもケンカも辞さないところは昔のままで、自分の道を曲げない人物だが、決してガンコなだけではなく、人の教えを受け入れる素直さがある。

金太郎の最大の魅力は、ほれぼれするほど気持ちのいい笑顔であり、そうした彼がどこか感じさせる「かわいげ」が(「かわいさ」ではない)、出会った大物たちだけではなく、敵までも味方にしていく。

『赤龍王』(1986)の劉邦も実にいい顔で笑う男だったが、「見ていて気分のいい男は、大物になる」。それは本宮氏のぶれない「人間観」だと感じさせられる。

このことは、初連載の『男一匹ガキ大将』の時代から変わっていないようだ。『男一匹ガキ大将』の主人公は戸川万吉。彼もまた中学生ながら1000人もの子分を持つ番長であり、ただ度胸が据わって腕っぷしが強いだけではなく、出会った大人社会の大物でさえも味方にできる器を持っていた。また金太郎と同じように、ビジネスセンスも豊かで、経済を見る眼も持っていた。

違うのはおそらく時代背景で、万吉のころは、「いい学校を出てサラリーマンになれば、一生安泰」というストーリーが現役バリバリで機能していた。そうした世の中で彼は日本のアウトサイダーを束ねるリーダーとなっていく。

一方、金太郎はバブル崩壊後の90年代に入社する。官僚も、政治も、日本社会そのものがストーリーを見失った「失われた時代」に彼はサラリーマンとして生き、成長し、道を切り拓いていく。

『サラリーマン金太郎』も、約50年前の作品である『男一匹ガキ大将』も、ひとたび開いてしまうとそのままグイグイひきこまれて、読むのが止まらなくなるのだからスゴイ。

少女マンガの要素も取り入れた王道作品

極私的な思い出で恐縮だが、『硬派銀次郎』(1975)も忘れることのできない作品だ。

「男子感覚全開」のイメージのある本宮作品だが、こちらではいち早く少女マンガのセンスを取り入れ、女嫌いでまだ背の低い銀次郎を、大柄な女子があれこれと世話を焼いてくれる。のちの『サラリーマン金太郎』でも、「矢島さんにも 深い心理の所でマザコンがある気がするなァ」といった内容のことを商社マンの尾崎にいわれていたが、『硬派銀次郎』は今でいうところの「ラブコメ」のシチュエーションを先取りしていた。

しかし筆者が子どものころに友だちのお兄さんの本棚から借りて読んで、今も忘れられずにいるのは、銀次郎が同級生について語ったあるセリフ。その同級生はヤクザの息子で、大勢の子分に送られて登校していた。彼が利口ならば、それを恥ずかしがるだろう。バカならばカサに着る。しかし彼はそのどちらでもなかった。つまり「男じゃ」と銀次郎はいう。

「バカでもダメだが、利口に立ち回るだけでもない。思ったとおりに生きるのが男」

この言葉は、子ども心にずしんと響き、それから何十年も経った今でも、ずっと心に残っている。本宮氏のキャラには「勢いのまま突っ走って突破する」というイメージもあるかもしれない。それもそうなのだが、実はギリギリの深いところで、ちゃんと状況を見ている。そうしたバランス感覚もまた、本宮作品の魅力だと思っています。

一度は読んでほしい知られざる名作

そして個人的にオススメしたい作品が『旅の途中』と『まだ、生きてる…』の2作だ。

『旅の途中』は講談社『モーニング』で1997年から連載されたマンガ。主人公は、超高校級の怪物ピッチャー・滝耕助。彼は東京の強豪校をやめて、突如、秋田県の桜館高校に編入する。ここは男子校なのだが、フェンスひとつを隔てたとなりが桜館女学館。耕助は「桜館の女はぜんぶ俺のものだ」と宣言する。

桜館の米は日本一。この土地には今でも尊敬されている殿様の家があり、耕助の家は、その家老筋。元来、日本の農村では性について大らかなものだったが、耕助も「なにを恥ずかしがることがあるのか」というスタンス。

ときに後輩にやりこめられながらも、彼はまた野球をはじめ、桜館の仲間といっしょに甲子園を目指す。この作品はユーモラスで、封建時代の城下町のひだまりのようなゆったりとした時間が流れていて、読んでいてめちゃくちゃ楽しいです。

本宮作品の主人公といえば『俺の空』の安田一平のように、名家の子息で、ムダな劣等感や妬み嫉みで濁ることのない、澄んだ眼を持つ人物が思い浮かぶ。

しかし『まだ、生きてる…』の主人公は、ずばり冴えないサラリーマンの岡田憲三。

38年働いて得た退職金を、妻が勝手に引き出して出ていった。残されたのは口座の残高172円と、離婚届。娘と息子も音信不通。財布の中身は1万6千円。憲三はなにひとついい思い出のない故郷に帰り、山に入って自殺を試みるが、失敗。

「まだ、生きてる…」。「生きる!」ではなく「まだ、生きてる…」。開き直った彼は山で自活をはじめ、自然の中で暮らすが、そうするうちに命のバランスを取り戻していく。そしてやがて、自分と同じように山で死のうとする女性と出会った。

タイマンもない。乱闘もない。どちらかというと小説のような読み口の作品だが、そこはやはりマンガ。最初のころのしょぼくれた、力のない眼をした主人公の「顔」。それがどんどん変貌していく「絵」にグッときます。最後の顔は涙なくして見られません。続編の『まだ、生きてる…2』とあわせて、未読の人はぜひ。

本宮氏は現在、「週刊ヤングジャンプ」で『新グッドジョブ』を連載中。これがなんとウェブトゥーン形式で、スマホ向けの縦スクロール作品なのだ。発表の形自体から「人はいつでも変われる、新しい人生に踏み出すことができる」というメッセージが伝わってくる。これからもどんどん、読む人の胸を熱くする作品を発表されることでしょう。

文/堀田純司

©本宮ひろ志/サード・ライン
©本宮ひろ志/集英社

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