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「あのとき私は間違いなくアイコでした」松井玲奈が惚れ込んだ恋愛小説が実写化

集英社オンライン / 2022年9月9日 14時1分

『よだかの片想い』は直木賞作家で恋愛小説の名手である、島本理生の作品。今回実写版映画版で、松井玲奈が顔の左側にあるアザがある理科系女子アイコを演じた。物語は、アイコの前映画監督の飛坂が突然現れるところから始まる。戸惑いながらも、恋に向かってまっすぐに突き進み、心の炎を燃やすアイコを、松井玲奈はどう演じるのか? 役者であると同時に、小説家でもある松井玲奈に心の裡を聞いてみた。

等身大の女の子

――9月16日に公開される映画『よだかの片想い』は、松井さんご自身が、実写化を強く望まれた…と伺いましたが。

夢の中に出てくるような恋物語じゃなく、アイコという等身大の女の子が、現実の恋愛をしているのにすごく惹かれて。時には暴走したり、時には妄想の世界に嵌ったり。誰もが、一度は、こういう恋…好きな人に対してまっすぐに突き進むという経験をしたことがあるんじゃないのかなぁと思いながら、一気に読み終えて。すごく映像的な作品だなぁと思ったのが始まりでした。



――そこから、話はとんとん拍子に進んだ?

いえ。それが…そうでもなくて(笑)。ずっと心に残ってはいたんですが、自分が…とまでは思っていなくて。スタッフの方から、自分が演じてみたい役ってある? と訊かれたときに、パッと頭に浮かんだのがこの『よだかの片想い』のアイコだったんです。そのとき、はじめて、“あー、私はアイコを演じたいとずっと思ってきたんだ”という気持ちに気づいて。それが…4年? 5年? それくらい前のことです。

――松井さんをそれほどまでに惹きつけたアイコの魅力とは?

言葉にするのは、難しいなぁ。そうですね、なんだろう?
まず、何に対しても、まっすぐなところ。友達に対しても、好きな人に対しても、周りにいる人たちに対しても、すごく臆病なんだけど、まっすぐで。その姿勢がすごく好きで、そこに惹かれたんだと思います。
それと、もうひとつ。初恋の、わっと、燃え上がる炎の感じが鮮やかで。人生に一度しかないその瞬間を見てみたい、演じてみたいと思ったのを覚えています。

――それって、自分にもそういう部分があるからですか!? それとも、自分にはないところだから余計に惹かれた?

どっちなんだろう!? 自分ではわからないです。でも、当時、読んだときは、自分にとっても、ものすごくセンセーショナルで。物語としては、決して派手ではないけど、それまで、世界の中心は自分だけだったアイコの前に、いきなり、好きな人が現れて。その瞬間、世界の色がそれまでとは違う色に見えてしまう…その中で、アイコのまっすぐさがとても綺麗だし、その、まっすぐさが羨ましいなぁと思いました。

――撮影期間中は、ずっとアイコになっていた?

なれていたというか、ちゃんと、アイコを理解できていたと思います。撮影に入る前からずっとアイコのことを考えていて。撮影期間中も、ずっとじゃないですけど、どこか頭の隅でアイコのことを考えていて。これまで、いろんなテレビドラマ、映画づくりに参加させていただいてきましたが、いつも以上に、台本と向き合っている時間も長かったですし、アイコでいた時間が長かったですから。

印象に残っているのは…全部です

――撮影している中で、松井さんご自身が強く印象に残っているシーンを教えていただけますか。

全部です(笑)。

――その中でも、特にここ! というのは?

アイコと、中島渉さん演じる映画監督、飛坂が、初めてぶつかるシーンがあって。飛坂さんが家を出て行った後、アイコが涙を流す流という場面なんですけど、でも、その涙は台本にはなくて、その場でやりとりをしていて、自然に涙が溢れてきたものだったんです。あの瞬間、私は松井玲奈じゃなくて、間違いなく、アイコだったと思います。あの涙は、アイコが流した涙でした。

――自分が松井玲奈なのか、アイコなのか、わからなくなる?

いえ、今回は、そういう混乱はなかったです。もっと、トリッキーな役、理解するのが難しい役のときは、そういう混乱が起こることもあるんですけど、アイコは普通の日常にいる女の子なので。ずっとアイコを走らせながら、同時に、自分として考えるという作業もできていました。

©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会

――ということは、撮影が終わった今、松井さんの中にアイコは、いない?

そのはずなんですけどね。
自分でも不思議なんですけど、先日、予告を見たときに、撮影期間中、アイコとしてみていたものを、フラッシュバックするように、全部、思い出してしまって。
舞台をやっているときは、最初から最後まで、ずっと入り込んで芝居をしているので、終わった後に、時々、それと似た感覚になることはあるんですけど、映像では、はじめてのことで。それだけ、全身全霊でアイコを演じていたということなので、そこは嬉しかったんですが、もう、出来ないんだ…という寂しさも感じてしまいました。

――そこまで役にこだわったということは、監督とぶつかる場面も多かった?

ふふふっ(笑)。
脚本の段階から、監督とは何度も話をさせていただいて。「どうして、このシーンがないんですか?」とか、思いを全てぶつけて。ひとつ、ひとつ、話し合いを重ねながら撮影していった…という感じですね。はじめてのことばかりだったので、すごくいい勉強をさせていただきました。

――具体的には?
私が思い描くアイコと、監督が思うアイコが違っていて。
例えばあるシーンで、私は、このときのアイコは悲しんでいると思ったのに、監督は、そうじゃない、怒っているんだと思うと。同じセリフなのに、捉え方が正反対なんです。それって、きっと、それぞれの恋愛観や、人と向き合ったときの価値観の違いから生まれてくるものなんだろうなと。

――そういうときは、どうするんですか?

両方やってみて、ですね。監督に言われた通りに演じたことで、思ってもみなかった感情がポンと飛び出すこともあったし、その逆に、「松井さんが言っていた方がすごく素敵でした」と、おっしゃっていただいたこともありましたし…。ここまでセッションしながら、いろんなやり方を試しながら、一本の作品を作り上げたのは、はじめてのことだったので、すごく勉強にもなったし、私にとっては楽しい時間でした。

演じることと書くこと

――普段から、本はたくさん読まれる方ですか?

出来れば、月に1、2冊は読みたいと思っているんですけど、自分のコンディションによっては、まるで読めない、脳が活字を受け付けなくなることがあって(苦笑)。読もうと思って、ずっとカバンの中に入れておいて、気がついたらボロボロになっていたということもあって。そんなときは、本に申し訳ない気持ちになります。

――本を買うときは、タイトルに惹かれて、ですか? それとも、作家さんですか?

ふらっと本屋さんに入って、タイトルとか表紙のデザインで、なんか面白そうと思って買うことが多いです。

――『よだかの片想い』も、そうやって購入された一冊ですか?

『よだかの片想い』とは、運命の出会いでした。

――それって、どういう?

渋谷のヴィレッジヴァンガードの、なぜか、天体のコーナーに、ポツンと一冊だけこの小説が置いてあったんです。それが、なんだかすごく不思議な感じがして。きっと、宮沢賢治の短編小説…容姿の醜さから仲間からも嫌われたよだかが、最後、星に転生するという『よだかの星』を連想した店員さんが、天体コーナーに置いたんだろうなと思うんですけど…私にとっては、それこそがまさに運命の出会いでした。

――それ以前にも、島本理生さんの小説を読んでいた?

いえ。『よだかの片想い』が、島本さんとのファースト・コンタクトです。一気に読み終えて、それからすぐに本屋さんに駆け込んで、ハードカバーから文庫まで島本さんの小説を全部買って、自分の本棚にバンと並べて、端から順に読んでいくという(笑)。
作家さんで大人買いをしたのは、このときが最初で最後です。

――ご自身も、小説家として2冊、『カモフラージュ』『累々』を出版されていますが。

書くという作業は面白いです。難しいけど、面白い。
ただ…書きはじめてから完成するまでの間、ずっとどこか、ふわふわしている感じがあって。今こうしてインタビューを受けている間も、役者として舞台に立ったり、撮影に臨んでいる間も、常に何かを探しているんですよね。あっ、これってあの場面に使えるなとか、これは面白いから今度使おうとか。
そういう時間も楽しいんですけど、でも…正直、疲れます(笑)。

――2冊から感じられるのは、人の持つ怖さ、優しさ、表の顔、裏の顔、好きと嫌い、欲望、狂気、夢、希望、危うさ、孤独、強さと脆さ…などというキーワードです。

好きというのとは、ビミョーに違うんですけど、人の裏の顔やダークな面というのには、割と興味があります。
私が大好きなディズニー作品にも、光と闇が存在していて。『リトルマーメイド』も、主人公の美しい人魚、アリエルじゃなくて、海の魔女アースラから見たらまた別の物語があるかもしれないじゃないですか。光と闇、どっちにも興味があるし、そうですね、私自身は、その真ん中じゃなくて、ちょっとだけ闇側に立っているんだと思います。

――以前、松井さんが怖いけど、美しいと言われる絵本作家、エドワード・ゴーリーの描く世界が好きとつぶやいた理由が、ちょっとだけ、わかったような気がします(笑)。

ゴーリーの作品は全部、好きです。ただ…………。
母がそういうのを全部、チェックしていて。ゴーリーのことを書いたら、自分で調べたらしく、「子どものころ、あなたにこういう絵本を読ませた覚えはありません」というお叱りの電話がかかってきて(苦笑)。どこで覚えたの?みたいな感じで。SNSにあげるときは、本当に大丈夫か?と、一度確認してからアップするようになりました(笑)。

©島本理生/集英社 ©2021映画「よだかの片想い」製作委員会


『よだかの片想い』
2022年9月16日(金)より、新宿・武蔵野館ほか全国公開
https://notheroinemovies.com/yodaka/

直木賞作家・島本理生の傑作恋愛小説を映画化。顔の左側にアザがある理系女子大生のアイコの遅い『初恋』を通して成長する女性の内面を瑞々しく描いた作品。主演のアイコを演じるのは、島本作品のファンでもある松井玲奈。共演は、中島渉。監督は、デビュー作品『Dressing up』(2012年)で、第14回TAMA NEW WAVEのグランプリや第25回日本映画プロフェッショナル賞新人監督賞を受賞した新鋭・安川有果。脚本は、城定秀夫。

撮影/大藪達也 取材・文/工藤晋

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