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資料のタイトルは13文字以内が鉄則! ウィズ・コロナ時代の超プレゼン術

集英社オンライン / 2022年8月25日 11時1分

パソコンの画面越しでの商談やプレゼンは、独特の距離感が生まれてしまう。しかし、「オンラインであっても、今までと同じか、それ以上の成果を上げることは可能」と語るのは、プレゼンテーションクリエイターで書家の前田鎌利さんだ。ソフトバンク在籍時代に孫正義社長が登壇するプレゼン資料の作成を手掛け、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事を務める前田さんに、新しい時代にも通用するプレゼンテクニックの基本を聞いた。

ウィズ・コロナ時代に失われた「余白」

従業員の働き方改革やDXの推進、さらに世界規模のコロナ禍や国際情勢の不安定化によって私たちのビジネスを取り巻く環境は急速に変化している。ビジネス機会の創出を目的とする見本市や展示会はオンライン化が進み、対面の営業や商談にもZoomやMicrosoft Teamsなどのビデオ会議ツールが普及した。



もちろん、こうしたデジタル化の進展によって仕事の効率が向上したビジネスパーソンもいるだろう。しかし、その一方で今までと異なるコミュニケーションのスタイルに馴染めず、営業成績の伸び悩みやストレスを感じている人もいるのではないだろうか。

オンラインでは、対面と比べて相手の時間を確保するのが難しくなっただけでなく、コミュニケーションにおける「余白」が大きく失われたと前田鎌利さんは指摘する。

「コロナ禍以前であれば、会議室に入った際やプレゼンの本題に入る前の雑談などでアイスブレイクが可能でした。しかしオンラインへと移行した今では、窓から見える光景や相手の持ち物など、ちょっとした情報を話の掴みとする会話術もうまく利用できません」

プレゼンテーションクリエイター/書家の前田鎌利さん。ソフトバンク在籍時代には孫正義社長(現会長)のプレゼン資料作りを担当。2013年12月に独立し、現在は株式会社固の代表取締役、一般社団法人プレゼンテーション協会の代表理事、一般社団法人継未の代表理事として活躍する

社外でのプレゼンや人前でのスピーチでは、「冒頭で相手の心を動かせるかどうか」が重要とよく言われる。特に、時間の制約が厳しくコミュニケーションの余白も少ないオンラインのプレゼンでは、これまで以上に短時間で相手の感情にアプローチする技術が求められると前田さんは言う。

「社内でのプレゼンと異なり、データや論理性だけでは人の心は動かせません。『この人の話なら聞いてみたい!』という好意や信頼感を勝ち取るための工夫が必要です。基本的に社外の人は、あなたのことに興味はありません。そのため、プレゼン開始30秒以内に興味を持ってもらえなければ、どんなに手の込んだプレゼン資料を作っても、相手の心は動かせないでしょう」

またオンラインのプレゼンでは、与えられた時間のうち商品やサービスの説明は極力短く濃縮することも重要だという。

「資料を使ったプレゼンは3分を目標にまとめ、なるべく質疑応答に時間をかけることを心がけてください。これはアドリブで対応するという意味ではなく、想定されるどのような質問に対してもその場で的確に答えられる準備が必要ということです。これができると、プレゼン以上にあなた自身の信頼を獲得しやすくなるでしょう。信頼が得られれば、たとえプレゼンした商品が売れなくても、次の機会につなげることができます」

右脳と左脳の働きを意識する

では、3分のプレゼンで相手の心を動かしたい場合、どのようなポイントに注意する必要があるのだろうか。業種や商材は多種多様だが、ほとんどの場合に当てはまる4つのテクニックを駆使することで相手の興味・関心を引きやすくなるという。


❶「自分ごと」になる質問をする

プレゼンの導入では、相手に対して「はい」か「いいえ」で答えられる質問を問いかけることがおすすめと前田さん。これは「クローズドクエスチョン」と呼ばれる質問方法で、限定された選択肢から相手の考えを明確に把握できるだけでなく、聞き手が話をリードしやすくなる効果がある。

「例えば、昼ごはんを食べに誘うときに『何が食べたい?』というのはオープンクエスチョンです。相手に判断を委ねているように見えますが、真剣に考えていない相手からは明確な答えは得られにくい。一方、『焼肉とお寿司どちらにします?』という具体的な選択を提示すると、相手は選んだ時点でその話題が自分ごととして認識するようになるのです」

プレゼンの冒頭は、クローズドクエスチョンを使って相手の注意を引きつけよう(出典:前田鎌利著『完全版社外プレゼンの資料作成術』)

❷インパクトのある数字を見せる

相手の感情を動かすためには、文章よりもビジュアルなどの視覚で相手の右脳を刺激するような情報が効果的だ。しかし、数字などのデータがまったく不要なわけではない。そのため、手持ちの情報から意外性のある数字を強調することで相手の関心を引くことができる。

「『5000万円、これは何の数字だと思いますか?』といったインパクトのある数字を見せてから、本題のトークに入る方法です。意外性が強い数字ほど、自分がこれから話す内容に興味を持ってもらえます」

インパクトのある数字を見せることで、相手の興味を刺激する(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

❸自分を伝えるエピソードを伝える

初めて会った相手であれば、プレゼンをする自分のことはまったく知らないことが前提となる。その場合、自分自身が何者で、なぜ今このようなことをしているのかについてのエピソードを自己開示することで、相手の関心や共感を得られやすくなるという。

「人は生まれも育ちも違うため、誰もが自分だけのエピソードがあるはずです。例えば、今私は書家として活動していますが、これは小学校2年生の担任に字が汚いと言われてショックを受け、字の上手さの基準はなんなのかを考え始めたことがきっかけです。こうした個人の経験には嘘がなく実感を伴っているため、相手の共感を得られやすくなります」

自らのエピソードを話すことで初対面の相手の共感を得やすくなる(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

❹思い切った宣言で相手を刺激する

プレゼンの冒頭で、誰もが思いもしないようなテーマを「宣言」して問題提起をすることも効果的だ。その具体的な理由や説明は後から行うが、最初の宣言に驚きの表情が出るようであれば相手の感情を動かしたと言えるだろう。

「私の書道教室の入会を呼びかけるスライドの冒頭は『手紙は毛筆でしか書かない!』という宣言から始まります。これを見た人は呆気に取られた表情をしますが、続けて手紙を毛筆で書いている理由やエピソードを説明すると、納得の表情を浮かべて話に聞き入ってくれます」

思い切った「宣言」をすることで、相手の感情を動かす(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

今すぐ実践できるスライドづくりの3つのコツ

プレゼン冒頭で相手の興味・関心を引いたあとは、スライドを使ってサービスを紹介していく段階になるが、資料作成時にはさまざまなテクニックを用いることで、より相手の注目を集め、効果を上げやすくなる。スライドづくりに関して、特に初心者におすすめの3つのポイントについて説明してもらった。


❶スライド1枚あたりの文字数を減らす

人間の認知特性などを考慮すると、1枚のスライドに盛り込む文字数はなるべく少なく、10秒程度で理解できるものが望ましい。社外のプレゼンでスライドは「読ませるのではなく、見せるもの」というのが鉄則だと前田さんは言う。タイトルやキーメッセージは上限13文字を目安とし、補足の説明40文字を含めても53字を超えないようにしよう。

「キーメッセージは『加入者が増えています』のように、重要な要素以外はカットします。もちろん、ここには相手の心を動かすような強い言葉に練り上げていくことが重要です」

スライド1枚におけるトータルの文字数は53字以内に収めるようにしよう(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

❷要所にアニメーションを入れる

オンラインでのプレゼンでは通信の遅延が発生することがあるため、アニメーション効果を敬遠する傾向がある。だが、重要なポイントには目線を誘導するためにPower Pointの「フェード」やKeynoteの「ディゾルブ」効果を用いるのがおすすめだ。

「アニメーション効果は多用すると安っぽくなってしまいますが、人の目は動きのあるものを追いかける習性があり、相手の理解も速くなります。また、トークの内容とビジュアルを段階的に表示することで、これから説明する内容を先読みさせない効果もあります」

アニメーション効果を使うと、スライドを先読みさせない効果も得られる(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

❸フォントはゴシック体が基本

スライドの視認性を高めるには、ゴシック体のフォントを使うのが基本となる。特にキーメッセージのようにインパクトが求められる部分には、「HGP 創英角ゴシック UB」や「ヒラギノ角ゴ StdN」、OSを選ばない「メイリオ」の太字フォントが特に読みやすく適している。また、キーメッセージ以外は「MSPゴシック」や「ヒラギノ角ゴ ProN」「メイリオ」のようなベーシックなフォントを利用したい。

「デザインにこだわりがあると、ついスマートな明朝体や小さな文字を使いがちですが、社外プレゼンで重要なのは、誰にでも読みやすくインパクトを与えること。斜体や下線、影文字という装飾は視認性を下げるため避けましょう。ただし、明朝体についてはネガティブなメッセージを強調する場合に限ってピンポイントで使うと効果的です」

社外プレゼンでもっとも大切なのは、「誰にでも読みやすい」かつ「インパクトがある」こと。斜体や下線、影文字などはあまり利用しないようにしよう(出典:前田鎌利著『完全版 社外プレゼンの資料作成術』)

プレゼンで大切な心がけは、相手の気持ちに寄り添うことだと語る前田さん。その心がけを正しい方法で伝えることは、オンライン全盛の現代にあっても変わらない価値であることは間違いないだろう。

人の心を動かすスライドづくりには、他にもさまざまなテクニックがある。プレゼン資料づくりに悩んでいる人は、『完全版社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)など前田さんの著作を参考にしてみよう

文/栗原亮(Arkhē) 写真/黒田彰

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