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「約束のネバーランド」公式ファンコミュニティから見える「NFT×IP」の可能性

集英社オンライン / 2022年8月23日 9時1分

今年に入り、大きな注目を集めている「NFT」。それを活用して、「約束のネバーランド」のファンコミュニティ「みんなのネバーランド」の運営を行っているのが株式会社Gaudiyだ。今回は前編に引き続き、代表の石川裕也氏に「みんなのネバーランド」の裏側や「NFT×IP(知的財産コンテンツ)」の可能性について聞いた。

コミュニティを「バーティカル」にする利点

ブロックチェーンを活用して、コミュニティをバーティカルに閉じるメリットについて、石川氏はこう説明する。

「居心地の良さが、オープンなSNSで形成されているコミュニティに比べてとても大きいんです」

SNSは、基本的に誰もが自由に参加して発信できる。これは社会に対してポジティブな影響を与えた一方で、課題も残した。その1つが他者と比較することによって、自己肯定感を落とす人が増えてしまったことだ。



「例えば2次創作の絵にしても、SNSで発信されているのはレベルの高いものがほとんどです。そのレベルに到達していないほとんどの人は、気を落としてしまうでしょう。私からするとSNSの世界は全世界の強者どもが集うメジャーリーグのような世界であり、そこで居心地の良さを感じられる人は、ほんの一握りではないでしょうか」(石川氏)

だからこそ、バーティカルなコミュニティの価値が高まってくる。例えば、「みんなのネバーランド」では、絵の巧拙にかかわらず讃える文化があるという。

「井の中の蛙って、ネガティブな意味に捉えられるかもしれません。でも、井の中の蛙でいられることで、多くの人が救われることもあるんだと感じますし、そういうのは必要だと思います」(石川氏)

また、「みんなのネバーランド」の中では、こんな書き込みもあったという。

「『自殺しようと考えていたけど、思いとどまることができました』とコメントした人がいたんです。作品とそれを愛する人々の想いが、1人の命を救ったと思うと、コミュニティを作ってよかったと感じずにはいられません」(石川氏)

IPの力が現実の経済活動に影響を与える

みんなのネバーランドのベースになっているGaudiy Fanlinkは、ここまで挙げてきた機能以外に、実用的な価値を持ったNFTを販売できる「コミュニティ内ストア」やオンラインライブ視聴者のみにサインを配布できる「NFTサイン会」など、NFTを活用した様々な体験を展開できるようになっている。しかし、石川氏は「自分がやりたいことの1%もできていない」と手厳しい。

「推し活をすることで、生活ができるような世界を築きたいんですね。例えば、ある作品のプロモーションを展開する際に、ファンが集うコミュニティに企業が対価を支払って後押ししてもらえるようになれば、ファンの方々は活動量などに応じて報酬を得られるようになるでしょう」(石川氏)

夢物語のように聞こえるかもしれない。しかし、NFTを活用して個人の経済状況を改善した事例は、すでに海外にあるという。

それが「Axie Infinity」というNFTゲームだ。「Axie Infinity」では、ゲームをプレイすることでアイテムを入手してマーケットプレイスで販売したり、クリアすることによって「Smooth Love Potion(SLP)」というゲーム内通貨(トークン)が入手できる。そして、このトークンは取引所で売買が可能で、換金ができるようになっているのだ。

この「Axie Infinity」で得られるSLPが暗号資産取引所に上場した際、時価総額で約8000億円をつけたという。これほどの価値があると、現実世界にも大きな影響があり、実際このSLPを持っていることで、これまで開設できなかった銀行口座を持てるようになったなど、貧困問題につながった事例が誕生しているのだ。

「正直、『Axie Infinity』のようなIPで約8000億円の価値がついたなら、世界的に有名なIPなら5兆円の価値がついても不思議ではありません。ブロックチェーン技術の利活用が進めば、IPによってより多くの人々の経済活動が後押しされる未来が訪れてもおかしくないでしょう」(石川氏)

「NFT×IP」で日本経済を牽引する

高い理想を掲げる石川氏の視線の先には、日本を超えて世界がある。前編でも触れた通り、日本のマンガやアニメ、ゲームはWeb3でキラーコンテンツになる可能性があり、現実世界の経済活動にインパクトを与える可能性も秘めている。暗号資産の分野では世界的に有名なプロダクトを開発する人物から、石川氏はこんなことを聞いた。

「日本のIPは、世界でもっとも『マスアダプション(大衆に浸透)』しやすいコンテンツだ。これをNFTで最大限活用されるのは、私からすると最も脅威だ」

しかし、その人物は間髪入れずこう言い放ったという。「日本では、それはできないだろう」と。

悲しいことに、この人物の発言は日本を取り巻くNFTの現状を物語っている。実は、日本国内で立ち上がったブロックチェーン関連のスタートアップが、次々と海外に流出しているのだ。理由はNFTを換金した際にかかる税率が、日本は世界と比べて高いことが挙げられる。与党もようやく重い腰を上げ、その対策に乗り出しているところだが、日進月歩で発展するWeb3の世界において周回遅れになっている可能性もある。

しかし、石川氏はそんな日本にいながら希望を見出している。それは、コンテンツの熱狂的なファンであり、その力を誰より信じているからだ。

「IPの力で、国民の生活を経済的にも豊かにするんだという覚悟が必要なのかなと思います。例えば、アメリカはわずか7社の世界的IT企業がGDPを大きく押し上げて、日本を引き離しています。この例と同じように、NFTでは世界的なIPが7つあれば国の経済を大きく伸ばすことができると信じていますし、実際に日本にはそれだけのIPがあります。この力を最大限引き出していきたいです」

Web3の時代が訪れた未来では、現代はその創世記だったと語り継がれるだろう。その時に、IPの力を信じた起業家がどう評価されるのか。今後を見守っていきたい。

撮影/遠藤素子

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