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自宅から世界一周も夢じゃない! 世界を3Dデータ化するワールドスキャンプロジェクト

集英社オンライン / 2022年8月25日 10時1分

株式会社ワールドスキャンプロジェクトは、世界各地の貴重な史跡を3Dデータ化し、研究や教育、エンターテイメントなどの用途で活用している。高精度なピラミッドの3Dデータの一般公開や、全身の3Dスキャンやメタバースを体験できる場所の開設など、世界を身近なものにしてくれる取り組みについて伺った。

高精度な3Dデータでピラミッドを探検

2022年はメタバース元年とも呼ばれ、仕事やエンターテイメントを問わず、仮想空間の利用が一般的になってきた。2Dや3D、展示空間を再現したものからファンタジー世界のようなものまで、さまざまなシチュエーションに応じた仮想空間が立ち上がり始めている。

そんな世界をイメージするために、次の動画をご覧いただきたい。


「綺麗なピラミッドの映像」に見えるこちらの動画。再生してみると、VRでの視聴に特化した、超高精度な3Dデータであることがわかる。一方向からしか見えない映像と比較して、さまざまな位置から自由な視点で眺められるのが特徴だ。

さらに、最近ではこうした3Dデータを見るだけでなく、メタバース空間上でより自由に体験できるようにもなりつつある。

後述するメタバース空間「ZEXAVERSE(ゼクサバース)」に入り込めば、アバターを操作しながら、ゲーム感覚でより自由にこの世界を探検できる。写真や動画で見たことのあるピラミッドも、等身大のアバターを基準に眺めてみれば、そのスケールやディテールに改めて驚かされるだろう。

このエリア一帯の3Dデータを作っているのが、株式会社ワールドスキャンプロジェクト。その名の通り、ロボットやドローン技術を活用し、世界中の土地や史跡を3Dスキャンしている企業だ。豊かな体験を生み出す元となる3Dスキャン技術は、どのように培われてきたのだろうか。

映画の世界を作りたい。CGアーティストが世界のスキャンを始めた理由

話を聞かせてくれたのは、ワールドスキャンプロジェクトCTOの市川泰雅(いちかわ・やすまさ)氏。ドローンを用いて世界各地の史跡をスキャンし、3Dデータとしてのアーカイブや研究開発への活用などに取り組んでおり、今も世界を巡って調査を続けている。

市川氏はもともと大学でCGやVFXを学び、フリーのアーティストとして活動していた。スキャン技術に興味を持ったのは、高精度な3Dデータを映画に使いたいという関心から。個人でドローンを使った3Dスキャンに取り組むなかで、ワールドスキャンプロジェクトを立ち上げた上瀧良平CEOと出会い、会社に参画。考古学者や海洋学者、各国の政府やNGO団体等と繋がり、世界各地でスキャンに取り組んでいった。

「ドローンは人が入れないところでも操作できるので、切り立った崖や海底などでも、安全に形状を取得できます。写真や動画よりも多くの情報を含んだ膨大な3Dデータを適切に解析することで、例えばピラミッドの建造工法など、未知の情報も明らかにできるかもしれません」

「3Dスキャンは非破壊で行えるのも特徴です。2019年に火災に見舞われたノートルダム大聖堂では、3Dデータが復元に生かされたという事例もあり、アーカイブとして後世に残すことにも大きな価値があります。実際、最近マチュピチュの遺跡を3Dスキャンしたのですが、その後に一部が崩落してしまったため、このデータは2度と取得できない貴重なものになりました」

ドローンの開発や教育事業も

ワールドスキャンプロジェクトは、調査を行うドローン自体の開発も独自に行っている。陸上だけでなく、水中3Dスキャンロボットの天叢雲剣(MURAKUMO)もそのひとつだ。映像だけではわからない海中の形状を明瞭に取得でき、2020年には90年以上場所が分からなかった沈没船「蕨」の発見と3Dモデル化にも成功した。

さらに、その技術を駆使して、コロナ禍で修学旅行や学校行事が中止になった子どもたちに向け、「3次元バーチャル修学旅行」も提供している。精巧な3Dデータを間近で見たり、専門家の解説を交えたりと、3Dならではの特徴を活かせば、その体験は現実以上に深みがあるものになり得る。

「授業でもただVRを体験するだけではなく、ドローンの操作と合わせて教えていますが、これはいろいろな機械に触れて自ら動かすことで、教育の現場でも好奇心を大切にしてほしいからなんです」(市川氏)

今でも各地の調査をするときには、大好きな映画『インディ・ジョーンズ』のBGMが頭の中で聞こえるという市川氏。映画の世界に憧れた好奇心が、CGやドローン、スキャンなどの技術と組み合わさり、現実と空想を軽やかに繋いでいるのだ。

リアルと3D世界をつなぐ「ZEXAVERSE TOKYO」

ワールドスキャンプロジェクトは、これまでにスキャンしたデータを生かしたメタバース空間「ZEXAVERSE」を開発している。

そんな世界を体験できる施設が、2022年7月16日、マロニエゲート銀座内にオープンした「ZEXAVRSE TOKYO」だ。近未来的な空間の入り口には、来場者の全身を3Dアバターに変換する「ZEXA GATE」というスキャン装置が鎮座。

こちらが「ZEXA GATE」。3Dアバター化するため6Kカメラが130台も設置されている

スキャニングは、こちらの装置の真ん中に入り、手を広げてしばし待機していると、バシッ!とストロボが焚かれる。全身があらゆる角度から撮影され、フォトグラメトリという技術によって、色情報と共に全身が3Dデータに変換されていく。

撮影後、しばらく待つと全身の3Dデータ化が完了。時計の文字盤が読めるほどの精度でスキャンされた全身に、骨格データを埋め込むことで、体の部位も自由に動かせるアバターが完成するのだ。

生み出されたアバターは「ZEXAVERSE」というメタバース空間に出現させることが可能で、現実世界では特別なツアーや調査目的でないと行けないエリアにも、ためらいなく入っていける。普通は遠くから眺めるしかないスフィンクスだって、目の前で写真を撮ったり、身体の上に登ったりすることも可能だ。

事前にスキャンしていた編集のアバターとスフィンクス

積み上がっている石を眺めると、ひとつひとつサイズや形、ひび割れなど細かく再現されており、驚くほどのリアル感がある。また、スキャンされたアバターは、計測した人のほぼ身長大サイズになっているため、積まれた石のサイズと身長を比較することも可能。

アバターのサイズは、ほぼ実物の身長大

想像よりものっぺりとしたピラミッドの屋上まで登り、記念撮影もできる

アバターと3Dモデルを活用することで、人間の目線やスケールが強調され、写真や動画よりも理解が深まるように感じられる。むしろ、生身では行けないエリアにも入れるので、ある意味現実よりも贅沢な体験なのかもしれない。バーチャル空間での世界体験はコロナ禍の代替品ではなく、メタバースならではの特徴を活かした、現実以上に価値のあるものになっていくことだろう。

世界各地のスキャンデータを含む新たなワールドを準備中だというから、ZEXAVERSEの発展が楽しみだ。3Dスキャンやメタバース空間を楽しめる「ZEXAVERSE TOKYO」の宇宙船のような内装には、SF映画の世界観に憧れていた市川氏のバックグラウンドも現れている。現実世界と3Dをつなぐ、まさに近未来のような体験を、ぜひ味わってみてほしい。

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