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「帝京魂」とは何なのか? 古豪復活でサッカー部OBが証言する“本当の意味”

集英社オンライン / 2022年8月25日 16時1分

長らく全国大会から遠ざかっていた帝京高校サッカー部が、今夏のインターハイで準優勝をはたし、「古豪復活」を印象づけた。帝京といえば、野球部OBであるとんねるずの石橋貴明がバラエティ番組などで発する「帝京魂!」もおなじみだが、はたしてどんな意味があるのか? 同高サッカー部OBで、元日本代表FWの森山泰行氏に興味深い話を聞いた。

インターハイ準優勝で「古豪復活」

この夏、インターハイのサッカー男子で帝京高校が準優勝した。過去3度優勝を飾ったおなじみのカナリア色のユニホームには、選手権優勝(6度)を合わせた全国制覇の回数を表す9個の星がついている。

しばらく遠ざかっていた全国大会の舞台だったが、昨年のインターハイで11年ぶりに出場をはたし、今回は決勝まで勝ち上がって、「古豪復活」を印象付けた。


1回戦で大分鶴崎に7−2で大勝すると、翌日の2回戦では昨年優勝の青森山田に2−1で逆転勝利。3回戦は丸岡(福井)から後半のアディショナルタイムに決勝点を奪い、3−2で8強入り。

準々決勝で岡山学芸館を4−2で下し、準決勝は昌平(埼玉)に1-−0で勝利。帝京最後の全国制覇となった2002年茨城インターハイ以来、20年ぶりの進出となった決勝戦では、前橋育英(群馬)に惜しくも0−1で敗れた。

大会をOBとして観戦し、Jリーグの名古屋グランパスなどで活躍した森山泰行さん(53)に、母校の戦いぶりを振り返ってもらった。

――11年ぶりの全国大会となった昨年は1回戦でPK負けでしたが、今年は快勝でした。

どんなチームも大会の初戦は難しいものですが、あれで大会にうまく入っていけた。久しぶりの全国大会での勝利ですから、あれでプレッシャーから解放された面はあったかもしれません。でも昨年、1回戦で負けた米子北は決勝まで行ったんですよ。だから帝京も力をつけてきたとは思っていました。

――そして、連覇を狙っていた青森山田には0−1で折り返して、後半に逆転しました。

最初から自分たちのサッカーができるという雰囲気があったんですけど、先に点を取られちゃいましたね。青森山田はパワーがあって、ロングスローという武器もありますが、帝京はずっとボールをつないで、何よりもモチベーションが高いのが見えていた。次の1点がポイントだなと思っていたんですが、同点に追いついた攻撃が素晴らしかった。

逆サイドを展開しながらクロスまでいって、ニアサイドの一人が相手を釣ったような状況で、ドリブラーの松本(琉雅)がヘディングシュートを決めた。青森山田と対等にできて、勝ち切ったことは自信になったでしょう。トーナメントを勝ち上がるには、うまいだけでなく勝負勘が必要ですが、こうした経験を積むことでチームは勝ち方を覚えていくんです。

古沼先生から聞いた「帝京魂」の本当の意味

――2試合を見て、決勝まで行く予感はしましたか。

青森山田戦での堂々としたプレーぶりから、もしかしたらベスト4くらいまでいくんじゃないかとは思いました。ただ、勝ち上がるかどうかということ以上に、インターハイは冬の選手権に向けて全国のレベルを知ることができるので、ものすごく価値のある経験が得られると思っていました。

今年のチームは守備にちょっと難があって、カウンターやセットプレーへの対応などに危ういところがあったんです。それでも青森山田に勝ち切って、準決勝の昌平戦ではクリーンシート(失点しないこと)ができた。大会を通してすごく選手が伸びてくれました。優勝は逃したけれど、成長率では大会ナンバーワンだったかもしれない。

森山泰行(もりやま・やすゆき) サッカー元日本代表FW。1969年、岐阜市生まれ。東京・帝京高、順天堂大を経て1992年に名古屋グランパスへ入団。1998年にはスロベニアの強豪ヒット・ゴリツァへ移籍。帰国後、広島、川崎、札幌などでもプレーし、J1でリーグ戦通算215試合出場66得点。2022年、なでしこリーグ1部の朝日インテック・ラブリッジ名古屋ストライカーコーチに就任。日本サッカー協会公認S級コーチ

――今大会、終盤での得点や逆転もありました。「帝京魂」ですか?

それ、帝京魂の意味を履き違えているかもですね(笑)。卒業してかなり経ってから、古沼先生(古沼貞雄元監督)がこんなふうに言ってたんです。

「みんな簡単に“帝京魂”って使うけど、もともとは、ほかの人のことを考える気遣いを言うんだ。たとえば、次に使う人のために整理整頓をしておくとか、合宿所で風呂に垢が浮いていたらそれをすくっておくとか。それが帝京魂なんだ」って。

でも、帝京魂とか伝統とか、そんなことは今の選手にはあまり関係ないと思うんです。優勝など過去の実績はリスペクトしなくちゃいけないけど、それを選手たちが重荷に感じるようではいけない。今の選手が主役で一番大事ですから、OBとしてそこを気遣ってあげないといけない。それこそ帝京魂ですよ。

試合勝利だけでなく「ダブルゴール」を

――久しぶりにユニホームの星の数を増やせるところまできた印象ですが。

「かつて強かった学校ほど、OBが昔のことを持ち出して激励したりもするんですが、間違っても『このところ星が増やせていないじゃないか!』みたいなことを今の選手に言ってはダメだと思います。

9個目の星をつけた2002年インターハイ優勝の時には、まだ生まれていない子ばかりですよ。競技力の向上とともに、人間的な成長も目指す『ダブルゴール』が大事です。高校サッカーは勝利至上主義に走りやすいが、試合を100回やって100回勝てるチームなんてない。

もちろん勝利は目指すけど、負けたとしても自分の中で成長を感じたり、みんなから誇ってもらったりするような、価値のあるチームに成長してほしい。

高校サッカー界や教育界の状況が昔とは変わってきていることもあって、数年前にOB会とは別に、帝京サッカー部の『サポーターズ倶楽部』という組織ができたんです。純粋に選手たちを応援したいと思って、僕も今年4月に入れてもらいました。

――後輩たちにはどんなチームをつくってほしいですか。

日比監督が就任してから、しっかりボールを動かしてつないでいくということをやってきた。今回のインターハイは決勝で負けたけど、素晴らしい戦いぶりで成長してくれたので、結果としてダブルゴールが成立したと思ってます。

最近はもう、帝京という名前だけで選手が入学してくれる時代ではなくなっていたが、プリンスリーグ関東に上がったこともあって、Jリーグの下部組織で育った選手が選んでくれるようになってきた。たぶん今回のインターハイでの活躍で、さらにいいサイクルで回っていくだろうなと期待をしています。子供たちがのびのびとサッカーに集中できる環境を作るのがOBの役目だと思うので、見守っていきたいですね。

取材・文/松本行弘 写真/AFLO

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