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おっぱいアイス、アイスクリン、チューペット…懐かしの“駄菓子屋アイス”は今?

集英社オンライン / 2022年8月27日 15時1分

一時期の猛暑は去り、残暑の候となっても、冷えたビールは変わらず美味い。この世で一番美味いものと断言してもいい。しかし、ビールなど飲めない子どものころの夏は、冷えたアイスがこの世で一番美味しいものだと思っていた。というわけで今回は、懐かしのアイスとともに子どものときの涼を思い出してみたい。

ゆるやかだった夏、涼やかだったアイス

今夏、殺人的な猛暑が続いたが、子どもの頃の夏休みはここまで暑くなかった。間違いなく。あの頃はエアコンなんかなくても夜は涼しかったし、「買った5分後にアイスが溶けてしまった」という記憶もない。暑い日差しの下でアイスを最後まで味わえた夏は、思い出の中にだけになってしまったことが少し寂しい。



汗をかきながら大事に食べた夏のご馳走、アイスの思い出はいろいろあるが、その頃の代表的懐かしアイスの多くが、現存しない。とても残念なことだ。

たとえば、「宝石箱」。バニラアイスの中に色のついた小さな氷が宝石のように散りばめられ、ビジュアル的にも非常に涼しげだった。今でも通用する商品だと思うが、生産はとっくの昔に終えている。

そして「ダブルソーダ」。1つのパッケージの中に2本の棒が刺さったソーダ味の氷菓が入っていて、二人で分け合って食べることができる。友達やきょうだいと半分ずつお金を出し合って購入して一緒に食べたが、力の入れ具合で均等に割れないこともあり、かなり不平等になったことも。

その場合の、じゃんけん勝負は暗黙のルールだった。これは割と最近まで売られていたが、2017年に終売されたとのこと。

「ホームランバー」は今も生産が確認されたものの、目にしたことがない。硬派な真四角のバニラアイスが棒に刺さっていて一見、野球と関連が見えないが、食べ進めると露出する棒に”ホームラン”とか”◯塁打”などと書かれており、そうした「アタリ」の表記が商品名の由来のようだ。

今も手に入る懐かしアイス

さて、今の駄菓子屋には、どんなアイスが売っているのだろうか。そう思い、行きつけの近所の駄菓子屋に行ってみた。アイスを入れる冷蔵庫自体はあるのだが、品目は意外に少ない。以下が入手できたもの。懐かしいアイスもあったが、パッケージはほぼリニューアルされていた。

アイスクリン(180円・KUBOTA)

球状のアイスがコーンに載っている古き良きコーンアイス。見た目のバニラアイス感と違い、実態はシャーベットっぽい。ソフトクリームが観光地でしか食べられないご馳走だった時代、ソフトクリームを夢想しながら、駄菓子屋でこんなアイスを買って食べた。リニューアルにあたって、かなり高価になっているが、コーンの先までぎっしりとアイスが詰まっているところは好評価。

おっぱいアイス(140円・KUBOTA)

半練りのアイスを風船詰めにし、おっぱいを模した形で、乳首にあたる部分をハサミで切り、そこから中身を吸って食べる。小さい子でもこぼさず容易に食べることができる点に、母親のおっぱいのような優しさを感じる。食感は現行品の「クーリッシュ(ロッテ)」をもっと柔らかくした感じ。食べ進めると、みるみるおっぱいがしおれていくのが面白い。

あんずボー(25円・港常)

そのまま食べると「塩気のない梅干し」としか形容できない素朴なお菓子。しかし、凍らせることで日本らしい梅(っぽい)風味の冷菓に変わる。決して洒落たものではないが、私が生まれる前からほぼ変わっていないことを考えると、駄菓子の原型の一つと言っていいだろう。

チューペット(20円/本・メーカー不明)

これまた馴染み深い氷菓である。”チューペット”は最初に発売された際の商標だったが、現在は元祖がなくなってしまっており、代名詞的な呼称となっている。ダブルソーダのように中央のくびれを境にパキッと割って食べる、コミュニケーション機能のあるアイスだ。

子どもの頃から自分自身が親しんだチューペットだが、親になってからは娘のためにもストックしていた時期があった。気軽に涼を取れる、便利で有難いアイスだ。

あんずボーとチューペットは、どちらも最初から凍っているものではなく、凍らせて食べるという手間が必要だ。昔の駄菓子屋では、お客が未冷凍の商品を買って自分の名前を書き、店の冷凍庫に入れて凍らせるというルールもあったようだ。

大人になってやっとたどり着いた「シャービック」

懐かしアイスに思いを馳せながらの取材帰り。100円ショップで意外なものを見つけた。
「ハウス シャービック」だ。見つけた、と言ったが、ずっとそこにあったような気もする。今日まで全く目に入っていなかったのだ。

気づけばこれを買い物かごに入れていた。ついでに製氷皿も。実は私はこれまでシャービックを食べたことがない。駄菓子とは少し違う志向の冷菓であり、実家が駄菓子屋だったためか、そういうお菓子はあまり食べさせてもらえなかったのだ。

いつかあの、シャービックを食べてみたい。幼い夏、あんなに憧れていたのに、成長するごとにその思いは薄れ、いつしか忘れていた。不思議な巡り合わせだが、このコラムが思いを遂げる日を連れてきてくれた。

アイスで分け合う夏

作り方は実に簡単だ。規定量の水に本品をすべて溶かす。少しずつ入れるのが唯一の注意点である。その液体を製氷皿に流し込んで、2~3時間待てば完成だ。

製氷皿から取り出すと、部屋はエアコンが効いているにも関わらず、皿の上で急に溶け始め、あっという間に乳状の汁に浸かってしまった。パッケージにあるような写真を撮影するには、冷凍倉庫の中で、冷やした食器に盛らないと実現できないだろう。

溶け切る前に、と、急いで口に入れた。47歳にしてはじめて食べたシャービックは、とてもシャクシャクとしていて、シャーベットでもアイスでもない食感。そしてミルキー。一言で表現するなら”いちごミルク味”だ。昔はこの手の味付けが多かった。ミルクっぽい甘さが贅沢品だったからだろうか。

なお、フォークで刺すことのできない程度の硬度があり、口に運ぶのにはスプーンが適当なのだが、一粒が製氷皿サイズだと子どもには大きすぎる。パッケージ写真のようにハート型や星型の小さな製氷皿で作るのがベストなのだろう。あるいは平皿で作って型抜きするか。

そこでふと気づいた。私の母にはそんな手間をかけるゆとりがなかったのだ。主婦で駄菓子屋の手伝いや、四世代同居する家族の世話に忙殺されていた母。このシャービックの他に、「フルーチェ」や「ゼリエース」をねだったこともあったが、いずれも作ってもらった憶えがない。あの頃は寂しかったが、大人になった今、休む暇もなかった母の日々の苦労を思い、申し訳ない気持ちになった。

今回、チューペットやシャービックは、娘(20歳)と分けて食べた。食べながら、彼女が幼いときに食べたアイスの話や、やはり今回初体験だったシャービックの感想を共有し、ひととき、暑さを忘れた。かつて友達と分け合ったアイスを、自分の子どもと分け合う時間。私にとって大切なアイスの思い出が、また一つ増えたのだ。

文・イラスト・撮影/柴山ヒデアキ

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