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出世払いでプログラミングが学習できる! 「CODEGYM」ってどんなところ?

集英社オンライン / 2022年8月26日 14時1分

経済産業省の試算によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると見られている。そうした状況の中、教育サービス事業を手掛ける株式会社LABOTは日本で初となる「出世払い」方式のオンラインプログラミング学習コース「CODEGYM」を展開中。学歴・年齢・収入に関わらずチャレンジできる取り組みを開始したきっかけを、同社代表取締役の鶴田浩之さんに聞いた。

コロナ禍を越えて、学びの機会を提供

2020年1月に恵比寿ガーデンプレイス内に教室テナントの旗艦店を開校した「CODEGYM」だが、その門出は順風満帆なものとは言えなかった。

同年4月7日に新型コロナウイルス対策措置法に基づく緊急事態宣言が発令、それまで路面店としての教室テナント前には1日あたり1万人以上が往来していたものが、50人程度にまで減少したという。



だが、この事態の長期化を予期した代表の鶴田浩之さんの判断は速く、3月末にテナント契約を解除。スクール事業をすべてオンラインへと移行した。

「教育事業に後発で参入するうえで、好立地でオフライン拠点を持つことは信頼性を得るためにも重要でした。イベントをする際や広告効果においてもメリットがあるからです。しかし、このコロナ禍によって学びの場を奪われた若い人たちのためにも、オンラインに切り替える判断をしました」

現在CODEGYMでは、エンジニアとしての転職を目指す社会人向けの「CODEGYM エンジニア転職」とプログラミング学習の基礎を学ぶための「CODEGYMプログラミング教養」のほか、新卒・第二新卒学生のITエンジニア就職に特化した「CODEGYM Academy」が提供されている。

株式会社LABOTが運営するオンラインプログラミングスクール「CODEGYM」

「CODEGYM Academy」のオンライン授業風景

注目すべきは、CODEGYM エンジニア転職には通常の学費支払いとは別に、「ISA(Income Share Agreement:所得分配契約)」というモデルが選べる点だ。ISAでの支払いを希望した受講生は、CODEGYM エンジニア転職のプログラミング学習受講料はすべて後払いとなる。

標準的なプログラミングスクールでは数十万円程度の初期費用が必要となる場合が多いが、収入の伸び悩みに困っている人には大きな負担と言える。しかし、CODEGYM エンジニア転職ではISAという仕組みを活用することによって、費用的な負担で学ぶことができない人たちにも教育機会の提供が可能となる。

今後はISAにより就職や転職に成功した卒業生からの「出世払い」によって事業を継続可能にしていくというが、このISAとはどのような仕組みなのか、もう少し詳しく見ていこう。

世界で広まるISA制度を日本で初導入

ISAは、米国などを中心に奨学金や学生ローンに代わる新しいモデルとして注目を集めている契約方法。これは就職や転職を目指す教育プログラムにおいて、実現にかかるまでの期間は実費以外を請求せず、就職・転職成功後の給与所得の一定割合を支払うというものだ。スキルアップと経済的成功を実現したあとに支払うことから、ISAは「出世払い」と呼ばれることもある。

すでに米国ではプログラミング学習に限らず多くの分野でISA制度の導入が進み、平等な学習機会の創出によって学歴や家庭環境などで生じる経済格差を是正する取り組みとして注目を集めている。一方で、契約内容の説明の不徹底など運用面での課題を残し、法制度の整備やISAの業界団体の設立などが急がれているのが実状だ。

「ISAは米国発祥で、現在となっては目新しい契約モデルではありません。しかし、日本と米国では社会背景が大きく違うので、ISAをそのまま輸入しても定着することはないと考えていました。そこで、CODEGYM エンジニア転職では日本版ISAと呼べるような社会の実態に合わせたチューニングをしています」

日本初の「出世払い」を採用したオンラインのエンジニア養成スクール「CODEGYM エンジニア転職」

例えば、CODEGYM エンジニア転職のフルタイムコースでISAを用いた場合、短期集中型で転職を目指すフルタイムコースでは週に40時間、約5カ月のオンライン学習を初期コストなしで受講可能で、卒業後に就職した企業での額面での年収をベースに、月給の約10%相当を支払うのが基本。支払い期間は初任給が支払われてから30カ月(回)となる。

これを仮に新卒の平均給与(厚生労働省の令和2年調査)である約23万円で単純計算すると、毎月2万3000円、合計で約69万円を支払っていくイメージだ。実際の収入がこれを下回るようなケースでは負担が高く感じられるかもしれないが、CODEGYMでは年収ラインの下限を276万円と設定していて、これに達しない期間は支払いが猶予されて利息も発生しない。また、初年度から年収400万円を超えるようなケースでは、支払いの総額が99万円に達した時点でISAの支払いは終了する。

「ISAの目的はあくまでも自分が望むキャリアを実現するための環境を提供すること。そのため、意欲的な人にこそ挑戦していただきたいですし、短期間でしっかりとオンライン学習について来てくれれば数社の内定を確実に取れるくらいの力を身につけられるカリキュラムを提供しています。

そのために事前選考はしっかりと行いますし、特に学生向けにはプログラミング文法の習得だけでなく、コンピュータサイエンスの基礎やアルゴリズム、セキュリティや品質管理、プロジェクトを推進していくためのコミュニケーション能力や課題解決能力など実務に欠かせない能力を重点的に教えています。

無料で始められるので、『最初に支払ったお金を回収したい』というサンクコスト(埋没費用)を動機づけにすることができません。いつでも途中でやめることができるからこそ、意欲の高い人だけが残るというのもISAの優れた点です」

LABOTが提供する日本版「ISA」のイメージ

不登校を経験した鶴田代表の想い

コロナ禍で進学や学業を断念しなければならなかった学生、出産や育児でキャリアを中断してしまった女性、年収200万円台からの伸び悩みを感じている会社員…さまざまな事情を抱えつつも、IT専門人材へのステップアップを目指す意欲のある人にとって、ISAを導入する「CODEGYM エンジニア転職」は大きな可能性を感じるのではないだろうか。

また、CODEGYM エンジニア転職とは別に、コロナ禍で学習機会を奪われたIT業界志望の学生向けに起ち上げた無償のプログラミング学習プログラム「CODEGYM Academy」では、2021年度に年2回の生徒募集を行ったところ、全国から1000名以上の応募があったという盛況ぶりだ。

約半年にわたって毎週課されるグループワークや、無断欠席2回で退校という厳しい基準のカリキュラムであるにも関わらず、完走率は3割以上というのは驚きだ。なお、CODEGYM Academyでは協賛スポンサーからの支援によって実質的な無償提供を実現している。

2021年度には1000名以上の応募があったという「CODEGYM Academy」。入学前に特定のプログラミング言語を学んでいる必要はなく、初心者も多数通っている

CODEGYMでは今後もCODEGYM Academyの選考倍率の強化を図ると同時に、カリキュラムの濃縮化などによって卒業までの完走率を高めていく方針だ。こうした取り組みの結果として、文系出身者でも卒業後に大手IT企業にエンジニアとして就職するなどの事例は増えつつあるという。また、前述のエンジニア転職においても、一連のカリキュラムを達成した受講者のほとんどが目的の転職に成功しているという。

就職・転職成功者を採用した企業からの評価も高く、IT人材の育成に新たな可能性をもたらした同社の取り組みに賛同する協賛企業や地方自治体も増えつつある。だが、そのような成果を出し始めているとはいえ、並々ならぬ覚悟や信念がなければ大きな先行投資が求められるISAの教育事業に取り組むという判断には至らないのではないだろうか。LABOT設立の経緯やプログラミング教育に注目した理由についてこう語る。

「もともと起業したかったわけではありません。僕自身とプログラミングの関わりで言うと、生まれつき体が弱く、中高生時代に不登校の時期があり、自宅からWEBサービスやゲームを趣味で作り始めたのがきっかけです。

大学では友人らとWEBサービスを起ち上げ、20歳には法人を設立して最終的に事業は売却しました。その後いくつも事業を起ち上げ、メルカリでは姉妹アプリの企画・開発にも携わりました。もちろんやりがいも手応えもありましたが、27歳になったときに10年後、20年後の世界を大きく変えていくための事業として教育の分野にチャレンジすることを決めました」

学校教育に馴染めなかった時期に、アイディアを形にできるプログラミングによって自らの才能を大きく開花させた鶴田さん。その次なるチャレンジが現在多くの課題を抱えて停滞している教育の領域というのは、運命の不思議な巡り合わせだ。

小学生の頃に最初に抱いた「将来の夢」は教師だったという鶴田さんの想いは、教育を通じて人の可能性に投資し、未来を支えるエンジニアを育成するという形で動き始めている。

株式会社LABOTの代表取締役・鶴田浩之さん。慶應義塾大学在学中に20歳で創業し、大学生向けアプリ「すごい時間割」を開発、2014年に事業売却。その後、ゲームエイトを設立し月間1億PVに成長させる。渋谷・道玄坂での書店プロデュースや、IPO前のメルカリに参画しグループ会社執行役員に就任してCtoCサービスを企画、開発、PMとしてプロデュースするなど、その活躍は多岐にわたる。10年後・20年後を見据えた教育事業を手掛けるため、LABOTを設立

文/栗原亮(Arkhē)

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